研究課題/領域番号 |
23K04422
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
上杉 徳照 大阪公立大学, 大学院情報学研究科, 准教授 (10405342)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 形状記憶合金 / 第一原理計算 / 機械学習 / エンタルピー差 / 格子変形ひずみ / 体積変化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は「形状記憶特性を示す合金と示さない合金の違いは何か?」という問いに答えることにある。形状記憶特性を発現するために必要な母相とマルテンサイト相とのエンタルピー差、格子変形ひずみ、体積変化という熱力学的・結晶学的条件を明らかにし、それぞれがどのような因子で決定されるかを明らかにする。第一原理計算により1,226 種類の合金について母相とマルテンサイト相とのエンタルピー差、エントロピー差、格子変形ひずみ、体積変化のデータベースを作成し、得られたデータベースに対して機械学習によって形状記憶特性を発現する合金の条件を明らかにする。
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研究実績の概要 |
形状記憶特性を発現するために必要な母相とマルテンサイト相のエンタルピー差、格子変形ひずみ、および体積変化の条件を明らかにすることを目的としている。2024年度から2025年度にかけて、第一原理計算を用いて母相とマルテンサイト相のエンタルピー差、格子変形ひずみ、体積変化のデータベースを作成する計画である。形状記憶合金の多くが母相にB2、D03、およびbcc固溶体というbcc構造を基にしているため、計算対象の合金の母相の結晶構造はB2、D03、bcc固溶体とした。平衡状態図と結晶構造データベースに収録されているB2の454種類、D03の54種類、bcc固溶体の1,226種類を計算対象とした。bcc固溶体については、288種の二元系A-B合金について、bcc相を有する組成範囲で濃度刻み幅を6.25at%としてスーパーセルによる計算モデルを構築した。母相がB2、D03、bcc固溶体と対になるマルテンサイト相についても、B19の454種類、2H構造の54種類、直方晶固溶体の1,226種類について同様に第一原理計算を行った。母相とマルテンサイト相のエンタルピー差は全エネルギー差から算出し、格子変形ひずみと体積変化については母相とマルテンサイト相の格子定数より算出した。AgCd、AuCd、CuZn、TiAu、TiNi、Ti-Nbなど、既に報告されている形状記憶合金については、エンタルピー差、格子変形ひずみ、体積変化の第一原理計算によるデータと比較して矛盾がないことが明らかになった。今後はエンタルピー差、格子変形ひずみ、体積変化を被説明変数とする機械学習モデルを構築し、形状記憶特性に影響を与える重要な因子を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2024年度から2025年度にかけて、第一原理計算を用いて母相とマルテンサイト相のエンタルピー差、格子変形ひずみ、体積変化のデータベースを作成する計画であったが、おおむね順調に進展している。形状記憶合金の多くが母相にB2、D03、およびbcc固溶体というbcc構造を基にしているため、計算対象の合金の母相の結晶構造はB2、D03、bcc固溶体とした。平衡状態図と結晶構造データベースに収録されているB2の454種類、D03の54種類、bcc固溶体の1,226種類を計算対象とした。bcc固溶体については、288種の二元系A-B合金について、bcc相を有する組成範囲で濃度刻み幅を6.25at%として、2024年度には新たにスーパーセルによる計算モデルを構築した。母相がB2、D03、bcc固溶体と対になるマルテンサイト相についても、B19の454種類、2H構造の54種類、直方晶固溶体の1,226種類について同様に第一原理計算に着手した。母相とマルテンサイト相のエンタルピー差は全エネルギー差から算出し、格子変形ひずみと体積変化については母相とマルテンサイト相の格子定数より算出した。計画していたデータベースの60%以上が構築できており、順調に進展している。また、AgCd、AuCd、CuZn、TiAu、TiNi、Ti-Nbなど、既に報告されている形状記憶合金については、エンタルピー差、格子変形ひずみ、体積変化の第一原理計算によるデータと比較して矛盾がないことが明らかになっており、計算結果に問題は無く順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2025年度までに、以下の研究推進方策を実施する予定である。まず、進行中の第一原理計算によるデータベースを完成させることを目指す。このデータベースには、平衡状態図と結晶構造データベースに収録されているB2型の454種類、D03型の54種類、bcc固溶体の1,226種類が計算対象とされており、これに対応するマルテンサイト相であるB19型の454種類、2H構造の54種類、直方晶固溶体の1,226種類についての第一原理計算を完了させる。次に、既に報告されている形状記憶合金のエンタルピー差、格子変形ひずみ、体積変化と、新たに得られた1,734種類のデータを比較分析し、形状記憶特性を発現するために必要な条件を明確化する。さらに、エンタルピー差、格子変形ひずみ、体積変化がどのような物理的要因によって決定されるかを詳細に解析するため、2025年度にはXenonPyなどの物性値データベースを活用し、1,734種類の合金についてs、p、d軌道の電子濃度、弾性率、原子半径などの特徴量を生成する。最終的に、これらの特徴量を説明変数として用い、エンタルピー差、格子変形ひずみ、体積変化を被説明変数とする機械学習モデルを構築し、形状記憶特性に影響を与える重要な変数を明らかにする。このアプローチにより、形状記憶合金の設計と最適化に向けた新たな理論的枠組みを提供することを目指す。
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