研究課題/領域番号 |
23K04426
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
當代 光陽 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 准教授 (10610800)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ハイエントロピー合金 / 生体材料 / 力学特性 / 相変態 / 力学試験 / 双晶変形 / 組織 |
研究開始時の研究の概要 |
応募者らは2017年に世界で初めてBcc型ハイエントロピー合金に純チタンと同等の生体適合性と数倍の強度を両立させることに成功し、生体材料用ハイエントロピー合金(Bio HEA)の概念を提唱した。本研究では、Bcc型Bio HEAにおける変形モードをすべり変形から双晶変形(応力誘起変態も含む)へとスイッチングさせることで、室温延性の改善を主な目的としたBio HEAの合金設計の学理を構築する。
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研究実績の概要 |
近年ハイエントロピー合金(HEA)・ミディアムエントロピー合金(MEA)と呼ばれる多成分固溶体が従来合金とは異なる力学特性や物性を示すことから大きな注目を集めている。通常このような組成では化合物となるのが一般的であるが、特定の成分の組み合わせでは、これまで見出されてこなかった固溶体が形成され、従来の溶媒と溶質による合金の概念とは次元の異なる物質群(HEA・MEA)が形成され、その物性も従来合金とは大きく異なることが近年明らかになり、世界的に大きな注目を集めている。特に著しい高強度を示すことから高温構造材料としての応用が期待されているが、HEA研究はまだ黎明期であり、HEAの基本的物性や力学特性の解明のみならず、Fcc型以外のHEAについてはその存在している組成域ですら明確になっていない。申請者らは、HEAが有する高強度・高延性・高耐食性より、生体材料としても高い潜在能力を有していると着想し、申請者の研究グループ独自のパラメータ法を用いることで、高い強度と生体適合性を具備したチタン系Bcc型TiNbTaZrMo HEAの開発に世界で初めて成功し、生体材料としての可能性を秘めたHEAをBio HEAと定義し、世界に先駆けてこの概念を提唱した。しかしながら、Bcc型 HEAは著しく高い強度を示すが、その低延性がしばしば議論になり、その変形メカニズム解明と延性改善策が次に解決すべき重要な課題となっている。本研究では、チタン系Bcc型MEAおよびHEAにおいて応力誘起変態や双晶変形を発現させることで、大きく延性を含む力学特性の改善が見込まれる。本研究では高温でbcc相、低温でhcp相を示すTiZrHf三元系MEAをベース組成として、これに種々の第四元素を添加することでbcc-hcp変態点やbcc相の相安定性を制御し、応力誘起変態や双晶変形の発現を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はTiZrHfMEAを基本組成としたTiZrHfMx合金を作製し、それぞれの相構成および組織観察から様々な組成を有するTiZrHfMxMEAを作製した。以下に具体的進捗状況を示す。本研究目的遂行のため、熱力学計算により本研究に適切とみられるVEC値を変化させたチタン系ミディアムエントロピー合金(TiZrHfMx合金)を真空アーク溶解法により作製した。得られた母合金を放電加工機にて各種測定用サンプルを切り出し鏡面研磨した。XRD測定、光学顕微鏡およびTEMによる組織観察を実施した。その結果、MとしてAlを添加した場合は低温相であるhcp相が安定化し、hcp型MEAとなった。これらの合金は板状および針状のhcp相が旧bcc粒界がから伸長する組織が観察された。その一方、MとしてNbを添加した場合は、Nb量増大に伴って、hcp相単相からbcc相単相へと変化することが確認できた。MとしてMoを添加した場合は、添加量が少なくとも、今回作製した全ての合金がbcc相単相を示した。以上より、TiZrHf三元系MEAをベースとしたTiZrHfMxMEAの作製に成功し、さらに添加元素によって、hcp-bcc変態点の制御が可能であることが示唆された。この結果を踏まえ、次年度以降は、種々の相構成を有するMEAの力学特性を解明する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた結果を基に、NbをTaで置き換えた合金系さらにはNbとAl、あるいはTaとAlといったbcc相を安定化する元素とhcp相を安定化するAlを同時添加し、より緻密な組織制御を試みる。さらに本年度作製した合金組成も含めて、TEM、STEM-EDX観察を中心に、よりミクロなレベルでの組織観察を実施し、相安定性や化合物形成の有無、微細組織をVEC値依存性として整理する。加えて、圧縮試験、引張試験および共振法によるヤング率測定を実施し、室温での力学特性(降伏応力・加工硬化係数・引張伸び・応力誘起変態・ヤング率など)を解明する予定である。
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