研究課題/領域番号 |
23K04428
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
近藤 啓悦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (50391321)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 応力腐食割れ / 低炭素オーステナイト系ステンレス鋼 / 熱時効 / オーステナイト系ステンレス鋼 / 軽水炉炉内構造材 |
研究開始時の研究の概要 |
商用発電用原子炉の主要構造材である低炭素オーステナイト系ステンレス鋼において重要課題とされる応力腐食割れ損傷事象について、その発生促進因子及び詳細メカニズム解明を行う。研究代表者のこれまでの検証研究により、材料が炉内運転温度(約288度)で長時間熱時効を受けることにより応力腐食割れ発生感受性が高まる可能性を示唆してきた。このことから、長時間熱時効による微細組織(転位組織、空孔濃度)の変化が軽水炉内模擬環境下で腐食特性及び機械特性に及ぼす影響を、巨視的並びに微視的に評価することで割れ発生感受性促進機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
研究代表者が実施したこれまでの研究において、沸騰水型軽水炉内主要構造材であるSUS316Lオーステナイト系ステンレス鋼に対して加速腐食環境SCC試験(CBB試験)を実施した結果、鋼材への加工硬化処理に加えて炉内温度での長時間熱時効処理を施すことで応力腐食割れ(SCC)発生感受性が上昇することを明らかとしてきた。本事業では、感受性の低い加工硬化処理まま材と高い感受性を示す長時間熱時効材の材料解析を行い、基礎的腐食挙動や弾性・塑性変形挙動を比較することにより、SCC発生機構の解明を目指す。 令和5年度は、加速腐食環境ではなく実機炉内冷却水環境を模擬した環境での材料腐食試験を実施し、基礎的腐食特性に関するデータの取得を目指した。表面研削によって加工硬化層を導入したSUS316L鋼材及びその長時間熱時効材(288℃、14000時間)に対して、高温高圧水中(温度:288℃、溶存酸素濃度:8 ppm)腐食試験を実施し、材料表面に形成される酸化皮膜の特性を評価した。その結果、加工硬化まま材の表面に形成される酸化物粒子サイズは平均約200nmであり、一方で長時間熱時効材は約100nmとそのサイズが小さくなることが明らかとなった。この結果から、加工硬化まま材と比較して長時間熱処理材に形成される酸化物は溶解しやすいことが推測された、さらに、これら酸化皮膜についてTEM/EDXによる元素分析を行った結果、加工硬化まま材と比べて長時間熱時効材の酸化物粒子はNi含有量が高い傾向にあることが明らかとなり、このような酸化物構成元素の違いが先述した酸化物粒子の溶解度に影響を及ぼしたものと考察している。今後、同一の腐食環境で明確となった2つの材料の腐食特性変化の原因を究明し、さらに、長時間熱時効材における応力腐食割れ感受性促進に及ぼす影響についても検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究事業では、低炭素オーステナイト系ステンレス鋼の長時間熱時効処理が応力腐食割れ(SCC)発生感受性を増大させる、という実験室での加速腐食試験によって得られた結果を出発点として、熱時効前後の基礎的材料特性の変化を詳細に評価することにより、このSCC発生促進因子を特定することを目指す。また、本研究過程で得られた知見を基にして、実機環境におけるSCC発生機構の考察及び解明に資することも目的としている。令和5年度は、より実機炉内環境に近い環境で材料腐食試験を実施し、長時間熱時効処理による基礎的腐食特性変化の評価を中心に研究を進めてきた。その結果、実炉内模擬環境における長時間熱時効材の腐食特性(酸化物性状、構成成分)変化が詳細に明確化されたことから、SCC発生機構を考察する上で非常に有意義な知見が得られたと考えられる。以上のことから、当初の計画通り研究を遂行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に実施した腐食特性に関するデータ(実機模擬環境及び加速腐食環境)の拡充と解析を進め、長時間熱時効材がき裂を発生する過程について考察を深める。また、SCC発生に影響を及ぼす因子として、材料に負荷される応力下での材料変形挙動も大きく影響を及ぼすと考えられていることから、加工硬化まま材とその長時間熱時効材をSCC試験に供した後に、き裂断面(表面深さ方向)の微細組織観察(SEM/ECCI、EBSD等)を実施し、き裂周辺の局所塑性変形挙動を比較する。また、令和5年度に製作したSEM内曲げ変形拘束治具を用いて、それぞれの材料についてき裂発生箇所である結晶粒界の近傍領域における弾性変形解析にも着手する。
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