研究課題/領域番号 |
23K04440
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
|
研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
瀬戸 雅宏 金沢工業大学, 工学部, 教授 (90367459)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 射出成形 / 繊維強化樹脂 / 繊維配向 / 配向モデル / 配向制御 / 機械的特性 / 軽量化設計 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,近年ニーズの高まっている長繊維,高含有率の繊維強化射出成形品における繊維配向メカニズムの解明と予測モデルを構築する.現状の長繊維,高含有率繊維強化射出成形品では,繊維配向予測モデルに繊維相互作用の影響が十分考慮されておらず繊維配向予測精度の向上が課題である.本研究では,繊維配向挙動に与える繊維長が含有率の影響を明らかにするために,繊維長,含有率を変化させた条件で繊維配向挙動を直接観察し,これらの影響を考慮した繊維配向モデルの構築を目指す.また,構築された予測モデルによる繊維配向計算と構造解析を連成させ,機械的特性の異方性を考慮した製品の軽量化設計手法を確立する.
|
研究実績の概要 |
本研究代表者らは,前回採択された科研費(基盤C:20K04201)において,種々の成形条件における繊維強化射出成形品の繊維配向状態を詳細に観察してきた.その結果,繊維強化射出成形品の板厚方向における繊維配向形成メカニズムは,射出成形時の樹脂流動に伴うせん断応力が大きく影響していることを明らかにした.また,このせん断応力はキャビティ表面に形成される固化層と流動層の境界で最も高くなることから,繊維配向状態を制御するためには,樹脂流動ならびに固化層成長挙動をコントロールすることが不可欠であることを示した.またCAEの繊維配向予測精度は不十分であり,予測精度向上が高機能な繊維強化樹脂成形品の設計に不可欠であることがわかってきた.そのため,本研究課題では,射出成形中の繊維配向挙動を定量的に観察し,高精度な繊維配向モデルの構築を目指すこととした. 今期は射出成形中の繊維配向挙動をより詳細に観察できるように金型構造の改良およびその金型を用いた可視化観察を行った.従来の可視化金型は,金型側面から光を照射し,同方向から高速度カメラによりキャビティ内を観察する構造であったが,この金型では繊維1本1本を詳細に観察できず,その配向挙動の定量化はできなかった.そのため,金型構造を改良し,キャビティ幅方向に2か所のガラスブロックを配置してキャビティを透過した光を高速度カメラで観察する構造とした.この金型を用いた可視化観察により繊維の配向挙動をより精密に計測できるとともに画像処理により成形中の配向挙動を定量化できた.この結果と従来から予測モデルに用いられているJefferyモデルと比較した結果.繊維長や繊維含有量,せん断ひずみ速度の大きさによってJefferyモデルと実験結果との差が大きく,予測モデルの精度が低下することを示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,繊維強化樹脂射出成形品における繊維配向挙動の高精度な予測モデル構築である.そのためには,射出成形中の繊維配向状態を直接かつ詳細に観察できる可視化金型の開発および可視化観察方法の確立が不可欠である.またこれらを用いて,繊維配向挙動に与える種々の影響を考察し,繊維配向予測モデルの構築を目指す.そのため,2023年度は以下の研究を実施した. 今期は,射出成形中の強化繊維の配向挙動を1本単位で観察できる可視化金型の開発とその金型を用いた可視化観察手法の確立を行った.我々の研究グループでこれまで研究し使用してきた可視化金型は,キャビティ内に側面から光を照射しその反射像で成形品板厚方向の繊維配向挙動を観察してきた.この観察方法では,成形品側面部のごく近傍の繊維はよく観察できたが,キャビティ側面部の影響を受けやすいことから,配向モデルとの比較が困難であった.そのため,金型構造を改良し新たにキャビティ側面から照射した光の反射像を用いて観察する可視化金型を設計,製作した.この金型によって,射出成形中の詳細な可視化観察が可能となった.さらに,樹脂流動によって繊維が流れながら回転する挙動を可視化動画から抽出し定量的に評価できるソフトウェアについても開発をした.現状では,自動で繊維を追跡できないが,流動中の繊維端点を任意の時系列ごとに人間が抽出し,時系列間を線形的に補間して繊維の流動速度,回転速度を定量的に評価できる機能を有している.これらの金型およびソフトウェアを用いて,繊維含有量および繊維長が異なる条件で,強化繊維の配向挙動を観察,定量化した.その結果,繊維長や含有量が大きくなるにしたがって理論モデルとの乖離は大きくなることを示した. 上記の取り組みは,申請書にて記載した2023年度の研究計画に従って実施されており,現状では計画通りに実施されていると判断している.
|
今後の研究の推進方策 |
前項でも述べているが,本研究課題は,繊維強化樹脂射出成形品における繊維配向挙動の高精度な予測モデル構築を目的としている.現状広く使われている繊維配向予測モデルとしてJefferyモデルが使われているが,本モデルは河川の流れによって回転する楕円体を対象としたモデルである.そのため,繊維強化樹脂材料のような高粘度かつ高い繊維含有率や繊維長における予測では限界があることが考えられる.そのため,これらの影響を考慮した新たな繊維配向予測モデルが不可欠である.これらのことから,本研究課題では,以下に示す計画に基づいて推進する. 2023年度においては,射出成形中の繊維配向挙動を詳細かつ正確に観察できる可視化金型および観察動画から繊維配向挙動を定量的に計測できる画像処理技術,ソフトウェアの開発を行った.これらの技術を基に繊維含有量や繊維長,成形条件を任意に変更した条件で可視化観察および繊維配向を定量的に評価し,現状の予測モデルと比較した. 繊維配向予測モデルは,せん断流動(せん断ひずみ)によって配向角速度を求めるモデルとなっている.そのため,射出成形中の成形品板厚方向におけるひずみ速度を任意に変化させて可視化観察を行い,理論モデルとの比較を行う.具体的にはキャビティの厚さや形状によってせん断流動の大きさを変え,繊維の回転挙動を観察する.さらに繊維長と板厚が配向に与える影響(幾何学的な影響)についても明らかにする.また,ケートや段差の影響も観察し配向モデルと比較する. 最終年度では.これまで観察してきた繊維配向挙動に基づいて,従来の繊維配向予測モデルの改良とその検証を種々の条件で実施する.また構築された繊維配向解析モデルを用いて配向予測を行い,実際の射出成形品と比較検証を行うとともに構造解析との連携による軽量化設計手法の検討を行う.
|