研究課題/領域番号 |
23K04441
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 苫小牧工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高澤 幸治 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (20331952)
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研究分担者 |
浅見 廣樹 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (00547961)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 炭化ケイ素 / サーメット / パルス通電焼結 / 鉄 |
研究開始時の研究の概要 |
工具分野等で消費量の多い超硬合金の代替材料として,炭化ケイ素(SiC)と鉄(Fe)からなる硬質焼結材料の創成を目指す.まずは,SiC粉末,Fe粉末および炭素(C)粉末の混合粉末の焼結体を種々の条件で作製し,それらの条件要因が焼結体組織に及ぼす傾向を把握する.次に,それをもとにSiC相とFe相との反応化合物の形成を抑制できる条件を探索する.これらの結果見い出した代表的な粉末・焼結条件の焼結体をあらためて複数作製し,硬さ,抗折力,破壊靭性値等を評価する.
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研究実績の概要 |
まず,SiC粉末(12μm),Fe粉末(0.8μm)およびC粉末(188μm以下)を用いたSiC-20vol%(Fe-1mass%C)焼結体は,液相が生じる温度以上に加熱しても相対密度は80%程度にとどまり,硬さや抗折力は著しく低い値となった.仮に,単一径の球状SiC粒子が最密充填し,その空隙がFe相で満たされている場合はSiC-26vol%Feとなるが,本合金はそれよりもFe量が少ない.同様にCo量が少ないWC-Co系超硬合金では,WCの分解・再晶出によって相対密度が向上するが,本合金系ではそのような効果は少ないと考えられた. 次に,同じ供試粉末を用いてFe量を増やした焼結体を作製したところ,SiC-30vol%(Fe-1mass%C)で硬さおよび抗折力が最大となり約910HVおよび約500MPaを示した.相対密度はSiC-40vol%(Fe-1mass%C)で最大となり約97%を示した. そこで,最大の相対密度が得られるSiC-40vol%(Fe-1mass%C)を基本として検討を進めた.粒径が1,3,12μmのSiC粉末を用いた場合,相対密度は97~98%,抗折力420~480MPaで,SiC粒径の影響は小さかった.ただし,Fe量が少ないとSiC粒径の影響が大きくなることが推測された.Feに対するC量を0,1,2mass%とした場合,C量の増加とともに相対密度および抗折力のわずかな減少がみられた.これは,焼結過程で液相が形成され焼結組織の粗大化や黒鉛型からの漏出などが起きたためと考えられた.さらに,Feに対するC量を2mass%とした粉末について,昇温速度を約0.5,約0.9,約2.4℃/sとして焼結したところ,0.5℃/sの抗折力が低い値を示した以外,明確な変化は認められなかった.すなわち,昇温速度を高めても悪い影響は出ないことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,SiC-Fe-C系混合粉末の焼結体を,粉末の配合比・混合条件および焼結温度・昇温速度を幅広く変えて作製し,これらの要因が焼結体組織に及ぼす基本的な傾向を把握する計画であった.この観点においては,おおむね順調に進展している. 粉末の混合については,遊星ボールミルを用いて,供試粉末の配合比,ボールミルの回転数や処理時間,湿式か乾式か,によって変わる粉末性状を,まずはX線回折を用いて評価し,混合粉末の試作に反映させる計画であった.しかし,研究開始後に湿式超音波懸濁装置が容易に利用できる環境となったため,粉末混合から焼結,焼結体の評価までの実験効率を高めるために,これにより混合粉末の作製を行った. 粉末の焼結については,パルス通電焼結機を用いて,昇温速度,到達温度およびその温度での保持時間,粉末封入型への加圧力,によって変わる焼結体組織を,まずはX線回折および硬さ試験を用いて評価し,焼結体の試作に反映させる計画であった.これらのうち,特に焼結体の組織・機械的性質に及ぼす影響が大きいと考えられる昇温速度および到達温度について検討できた.これらの結果をもとに,2024年度に追及すべき粉末の配合比および焼結温度・昇温速度を絞り込むことができた. ただし,走査型電子顕微鏡による評価が計画通りにできなかった.理由は,研究代表者が直接管理している走査型電子顕微鏡が長期間故障したままの状態になったためである.しかし,2023年度末に走査型電子顕微鏡を更新することができ,既に順調に稼働している.また,操作がより簡便になったことで,以前よりも効率良く実験できるため,2024年度の計画は順調に遂行できると考える.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の前半は,2023年度に見出した粉末の混合および焼結の条件をもとに,硬さおよび抗折力が最も高かったSiC-30vol%(Fe-1mass%C)を基本として,より機械的性質を高めることを念頭に検討を進める.また,2023年度内に遂行できなかった走査型電子顕微鏡による評価を行う. 2024年度の後半は,焼結過程において低温度域の時間を比較的長くすることでC粉末からのC原子のFe相中への拡散量を確保しつつ,SiおよびFe原子の拡散が容易になる高温度域の時間を最小限にし,機械的性質を向上できるか,試みる.得られた焼結体組織の評価方法は前年度と同様である.また,幾つかの代表的な粉末の混合・焼結条件については,焼結工程を完了させずに途中で加熱を中断した焼結体を作製し,各粉末粒子間の接触・成長や反応化合物の生成・成長の状況を評価する.これらの結果から,SiC粒とFe相との反応化合物の形成過程や,それを抑制する仕組みについて考察する.
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