研究課題/領域番号 |
23K04451
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
奥宮 正洋 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20177182)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | AlN / 発熱反応 / その場観察 / 膜厚制御 / 高密度厚粉体 / 表面硬化熱処理 / 窒化アルミニウム / 熱伝導材料 |
研究開始時の研究の概要 |
工業製品の小型化・薄型化に伴って回路の高集積化が進み,その放熱対策が急務となり,高い熱伝導率,低い熱膨張率,電気絶縁性を持つ窒化アルミニウム(AlN)が高熱伝導性複合材料用フィラーとして注目されている. 本研究ではアルミニウム(Al)の融点以下での処理が期待できるバレル窒化法に注目する.中でも,研削材粒度,焼結抑制方法に着目し,これらがAlN粉末の創成に与える影響を検討するとともに,窒化層厚さ制御によって樹脂をバインダーとして用いずにAlN粉末のみでの焼結による高熱伝導バルク材の作製を可能とする.これに伴って融点以下でのAlの窒化メカニズムの解明と,Alの窒化層厚さ制御技術の確立が期待される.
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研究実績の概要 |
Al粉末の表層のみを窒化(半窒化粉末)し,半窒化粉末を圧縮成形したのち再窒化させAlN粉末焼結材を作成する.そのためにはバレル窒化法におけるAlN層の創成・成長に影響を及ぼす因子の詳細な解明と,AlN層の膜厚制御法の確立が必要である.膜厚制御のためには粉末の窒化開始をその場観察する必要があるが,窒化反応が発熱反応であることを利用して,バレル炉内の粉末の温度を直接測定することによって窒化開始を検出することに成功した.バレル炉内の温度が上昇した時点で,バレル炉内への窒素の供給と加熱を停止し,バレル炉内を減圧することで,表面のみが窒化した粉末をえることを試みた.しかしながら粉末粒径が75ミクロン以下の場合は,ほぼ中心部まで窒化が進行していたので,アルミニウム粉末の粒径を150ミクロンに若干大きくして同様の実験を行ったところ,中心部が窒化されていない粉末を創成することに成功した. この粉末を用いて,バインダーなしで圧粉体をハンドプレスにより作製したところ,同じ加圧力では,中心部まで窒化したAlN粉末より,中心部は窒化が進行していないAlN粉末の方がより高い密度の圧粉体を得ることができた. 2024年度はさらに窒化層の生成厚さの制御を行い,より密度の高い圧粉体を得るために有効なAlN膜厚の検討を行うとともに,その膜厚に制御する方法を確立することをおこなう.また,プラズマ活性化焼結装置を用いて,バルク形状のAlN試料の作製も行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Al基材上にAlNが創成されるまでの潜伏期間にどのような現象が生じて,その後窒化が可能となるのかを明らかとする必要がある.そこで潜伏期間の表面粗さおよび重量の変化,Al基材へのMgの拡散(本研究では表面活性化のためにAl-Mg合金粉末もAl2O3研磨材と共にバレル内に投入している)を調査し,基材表面状態が窒化開始に及ぼす影響を明らかにすることが,2023年度の目的であったが,アルミニウム粉末の窒化反応が発熱反応であることを使用して,窒化反応開始をモニタリングする方法を確立し,窒素ガスの供給と加熱の停止による窒化反応制御を実現した. もう一つの2023年度の課題であった,膜厚制御方法を確立するための,AlN層の成長が,AlN層中の窒素の拡散,Alの拡散,または相互拡散のどれによって行われるのかについては,マーカーシフト理論を用いた調査を行い,窒化層表面にマーカーが残っていることより,AlN膜は窒素の拡散によって聖緒することも明らかにした.さらには,バレル槽内に,アルミニウム表面の酸化膜を還元するために添加しているAl-Mg合金のMgがある粉末中に拡散していることも明らかにした.そして,Mgの拡散が行われてから,窒化層が形成されることも明らかにできた.
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今後の研究の推進方策 |
バレルへの最適粉末充填量,最適回転速度・回転角度を明らかとする必要がある.そこで回転しているバレル槽内のAl2O3研磨材とAl粉末の動きを調査するために,可視化可能な装置(加熱は行わない)を作成し,その中にAl2O3研磨材・Al粉末を添加し,回転速度・回転角度がバレル槽内の粉体の動きに及ぼす影響をその場観察する.これによりバレル内でAl粉末が効率的にAl2O3粉末によって研磨される充填量,接触・流動状態を明らかにできる. Al粉末表面の活性化に最適なAl2O3研磨材の粒径と,Al粉末の窒化中にバレル内でAlN粉末が焼結されない最適なAl2O3ボールの粒径等を明らかとする必要がある.研磨紙では粒度が大きい方が研磨量は多く,今回用いるAl2O3研磨材においても粒径が大きいほど研磨効果は高いと考えられるが,大きすぎると研磨剤同士のみが接触するだけでAl粉末には接触せず,表面が研磨されない可能性がある.そこでバレルを回転運動させた際のAl2O3研磨材の粒径,Al粉末に対するAl2O3研磨材の添加割合がAl粉末の粒径の減少に及ぼす影響を調査し,最適なAl2O3研磨材の添加量・粒径を明らかにする.また,これまでの研究においてバレル槽でAl粉末を窒化することには成功しているが,一部の粉はバレル槽内で塊となった.そこで粉砕の効果が期待できるAl2O3ボール(粒径は数mmを想定)をAl2O3研磨材やAl粉末とともにバレル槽内に投入して焼結防止を可能とし,得られるAlN粉末の歩留りを向上させる.
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