研究課題/領域番号 |
23K04460
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26060:金属生産および資源生産関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
栗田 典明 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20242901)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | プロトン伝導体 / 安定化ジルコニア / ストロンチウムジルコネート / カルシウムジルコネート / 2層 / 液洛 / インジウム / 固体電解質 / 酸化物イオン伝導体 / 水蒸気センサー / 酸化物 |
研究開始時の研究の概要 |
雰囲気中の水蒸気量を知るセンサーとしては主に水の表面吸着を利用した半導体型や水蒸気の露点を利用したものがあるが、高温での直接測定は出来ず、ガスサンプリングにより室温まで冷却した後の測定となり、レスポンスや水蒸気の凝集などその燃焼中の水蒸気量が正確に測定出来ないという問題点があった。本研究は一般には単独で用いる固体電解質に対して、電荷担体が異なる固体電解質を組み合わせたガルバニック型水蒸気センサー開発・実用化を目的とする。また、異なる電荷担体の固体電解質を接合した場合の電解質同士の界面現象を理解することは非常に興味深いことである。本研究はその界面の科学を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は電荷担体の異なる2種の固体電解質を貼り合わせて2層としたバイブリッド型の固体電解質起電力特性を解明しつつ、その液洛における界面現象の詳細を明らかにする研究である。具体的には酸化物イオン伝導体である安定化ジルコニア表面上に厚さ数十ミクロンの高温型プロトン伝導体であるストロンチウムジルコネート系の固体電解質膜を生成するものである。研究は既に申請時に行った予備的な研究に加えて、2層状態の形状の異なる試料を用いて実験を行った。その結果、予備的な試験で行った起電力特性とはことなる結果特性が得られてより詳細な検討が必要となることが明らかとなった。また、予備的試験では長時間の高温実験でも見られなかった亀裂、特に厚さ数十ミクロンのプロトン伝導体側に散見されて、界面の液洛の構造に対して同様により詳細な検討が必要であることが明らかとなった。 一方、より広く材料を検討するために同じ系統の高温型プロトン伝導体であるカルシウムジルコネート系の固体電解質を用いた場合の検討を行う予備的な試験として、インジウムをドープした安定化ジルコニアの酸化物イオン伝導特性の研究も行った。その結果、高温において酸化性の雰囲気内では酸化物イオン伝導性固体電解質として十分に機能していることがわかったが、還元性、特に水素雰囲気ではドーパントとして用いているインジウムがガスとして逸失し、固体電解質が不安定になることがわかった。インジウムはカルシウムジルコネートにプロトン伝導を生じさせる最も重要なドーパントであり、この点で安定化ジルコニアのドーパントとしてどのような範囲で利用可能なのかの詳細を検討する必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
安定化ジルコニア表面にストロンチウムジルコネート系の固体電解質を生成させる2層の固体電解質においては概ね計画通りの進展となっている。特にハイブリッドの固体電解質に生じる起電力においては界面の液洛の特性を考慮すると、当初より形状依存が予想された。令和5年度の試験においてはそれが証明された。しかしながら、特に薄膜側のストロンチウムジルコネート側に亀裂が生じているのは想定外の結果となった。このことから、試料形状においてはより慎重さが求められることが明らかになった。この点は今後の研究方針を決める上での重要な知見となった。 一方、より広くこのハイブリッドな固体電解質の特性について検討する目的で行ったインジウムをドープした安定化ジルコニアの酸化物イオン伝導体としての実験であったが、水素雰囲気にいて安定化ジルコニアが粉化し崩壊するという想定外のことが生じた。インジウムをドープしたカルシウムジルコネートは同系統の高温型プロトン伝導体では最も高温までプロトン伝導の輸率が高く、センサーなどへの応用を考えた場合は最も有用なハイブリッドな固体電解質に成ることが期待されていた。この点を生かすためにインジウムをドープした安定化ジルコニアの使用可能領域の詳細な検討が必要になり、その点で当初考えていたスケジュールに対してやや遅れ気味となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度から、当初の予定通り始めに異なる電荷担体を持つ固体電解質を貼り合わせた場合の界面現象の詳細を明らかにするために、電子顕微鏡等により界面の状態の観察や解析を行っていく。ただし、電荷担体としてプロトンと酸化物イオンはどちらも揮発性のイオンのため実験後のイオンの状態を観察することは難しい。そこで観察と同時にシミュレーションなどの活用により、界面までのイオンの移動や界面におけるイオンの挙動などについて検討を行っていく予定である。また、より多くの分野への利用を考慮してセンサーとしての最適化を目的に、形状の異なる試料や電極の取り付け方の工夫を行うことでより多くのデータを収集し、シミュレーションや観察を通して昨年度明らかになった亀裂の原因を探るなどをおこなっていゆく。 一方で、インジウムをドープした安定化ジルコニアは水素雰囲気においては試料として使えないことが明らかになった。このために、ハイブリッドの固体電解質の試料として使用が可能な条件、すなわち温度や雰囲気あるいはドーパントとしてのインジウムの濃度を明らかにする必要がある。令和6年度はこの点を中心に研究を進めていく予定である。さらにその結果から、ハイブリッドの固体電解質として利用が可能なのかの決定を行う予定である。
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