研究課題/領域番号 |
23K04465
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26060:金属生産および資源生産関連
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平井 信充 鈴鹿工業高等専門学校, 生物応用化学科, 教授 (50294020)
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研究分担者 |
岩田 太 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (30262794)
兼松 秀行 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 特命教授 (10185952)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | バイオフィルム / ぬめり / 走査型イオン伝導顕微鏡 / 共焦点レーザー顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 微生物 / 鉄鋼材料 / 鉄鋼スラグ / 走査型プローブ顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
バイオフィルムの生成防止や生成加速に及ぼす基板材料の影響を明らかにするためには、バイオフィルム成長の超初期過程の水中その場観察が極めて重要である。その際の水中その場観察手法はいくつかあるものの一長一短である。そこで、本研究では、申請者らが世界で初めてバイオフィルムの観察に成功した「走査型イオン伝導顕微鏡」に加えて、「共焦点レーザー顕微鏡」と「原子間力顕微鏡」も用いて、3つの顕微鏡で同一箇所を水中その場で解析する技術の確立を目的とする。その結果、鉄鋼材料の微生物腐食防止や鉄鋼スラグ上へのバイオフィルム形成加速に関する知見を得ること最終目標としている。
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研究実績の概要 |
バイオフィルムは、金属腐食、感染症、虫歯・歯周病などの様々な問題の原因となるため、その生成防止や除去に関する知見は重要である。一般的に、バイオフィルムの生成防止は抗菌性の付与のみで制御可能と考えられるが、先行研究において、抗菌性を示すAg上への緑膿菌バイオフィルムの生成量が、抗菌性を示さないSn上に比べ多いという実験結果が得られている。これは、バイオフィルム生成能は抗菌性のみでは説明がつかず、基板性状等抗菌性以外の影響が存在することを示している。この理由の解明には、材料表面へのバイオフィルムの付着過程や初期過程についての知見が必要であり、バイオフィルム生成初期過程のナノスケール水中その場観察はこれらの知見を得る上での一助となる。一般的にバイオフィルムのナノスケール水中その場観察に用いられる共焦点レーザー顕微鏡CLSMは、適切な染色を行うことにより菌などの配置を可視化しバイオフィルムの構造の詳細を明らかにできる顕微鏡である。しかし、基板や観察条件によっては基板の位置が不明瞭であり、また水平方向と比較して高さ方向の分解能が低いなどの問題点がある。一方、イオン電流を検知し三次元形状を得る走査型イオン伝導顕微鏡SICMは従来細胞観察に用いられてきたが、筆者らはこの顕微鏡をバイオフィルムに適用し世界で初めてそのPBS中観察に成功した。しかし、SICMは観察しているものが何であるかについての情報が得られないという問題点がある。そこで本研究では、ガラス上に生成した海洋菌バイオフィルムについて、その同一箇所をSICMとCLSMの両方でPBS中ナノスケールその場観察した。その結果、おおよそよく似た形状のバイオフィルムが観察されたが、詳細な比較を行うと観察された形状には差が見られた。これらの差より、それぞれ単体の顕微鏡観察では得られなかったバイオフィルムの詳細構造に関する知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、ガラス上に生成した海洋菌バイオフィルムについて、その同一箇所をSICMとCLSM、AFMという3つの顕微鏡ででPBS中ナノスケールその場観察することにより、それぞれ1種類の顕微鏡では得られないバイオフィルム構造に関する知見を得ることである。今年度はSICMとCLSMの2つの顕微鏡にてバイオフィルムの同一箇所観察を行った。バイオフィルムの生成には海洋性ビブリオ菌(Aliivibrio fischeri JCM18803, RIKEN)を使用した。前培養した菌液をリン酸緩衝溶液(PBS)により32倍希釈した溶液内でガラスを2日間22℃保持することによりガラス表面にバイオフィルムを生成させた。これをグルタルアルデヒド含有PBSで固定後、クリスタルバイオレット溶液およびDAPIで染色し各種顕微鏡により観察した。ガラス上に生成したバイオフィルムについてCLSMとSICMにより同一箇所をPBS中その場観察した結果、おおよそよく似た形状のバイオフィルム観察に成功した。しかし詳細な比較を行うと観察された形状には差が見られた。これらの差より、それぞれ単体の顕微鏡観察では得られなかったバイオフィルムの詳細構造に関する知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
SICMとCLSMの2つの顕微鏡で観察を行った像の差より、それぞれ単体の顕微鏡観察では得られなかったバイオフィルムの詳細構造に関する知見が得られた。また原子間力顕微鏡AFMによるバイオフィルム形態観察にも既に成功している。しかしながら、AFMと、他の2つの顕微鏡を用いてのでの同一箇所観察には成功していないため、その実現を今後の1つの目標とする。 またその他の目標として、バイオフィルムのCLSM観察においては、色々な染色を組み合わせることができるため、染色の選択と組合せを工夫することにより、バイオフィルム構造に関するより多くの知見を得ることができればと考えている。
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