研究課題/領域番号 |
23K04470
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
レンゴロ ウレット 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10304403)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 肥料 / 無機物 / 微粒子 / 植物 / 輸送 / 吸収 / 発芽 / 光干渉断層計 / 作物 / 物質移動 / 溶解 |
研究開始時の研究の概要 |
環境と食料生産とを両立させるには、肥料のような無機物の供給を抑制することが求められている。しかし、肥料の投入の高度化に関する研究はほとんど行われておらず、投入量の最適化に関する研究は非常に遅れている。 本応募研究では、多成分系肥料の微粒子を設計・合成を行い、その微粒子を植物固体へ導入する技術を開発する。 各成分における固体粒子からイオンへ溶解特性を計測する手法を考案し、モデル植物内における物質輸送を評価できるシステムの開発を行う。 溶解特性と計測システムの開発と植物育成実験に基づく評価により、植物の成長を促進しつつ、吸収されない肥料成分を最小化する食料生産体系の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
環境負荷を低減しつつ食料生産性を向上させるには、無機肥料の投入量最適化が求められる。しかし、その研究は遅れており、本研究では(多成分系肥料)微粒子の設計・合成と、植物体内への導入・輸送評価システムの開発を行う。各成分の溶解特性解明と植物育成実験による吸収・成長促進効果の評価を通じて、無駄な投入を抑制した食料生産体系の構築を目指す。今年度では、発芽における微粒子の役割と植物・バイオマス内における物質移動解析手法の検討を行った。
(研究1)コロイドの不溶性(シリカ)ナノ粒子をトマト種子発芽に添加すると、発芽が対照区より促進された。粒子は種皮変化を引き起こし、土壌細菌活性化を介して発芽を助けた可能性がある。発芽過程で粒子が確認され、粒子と水分子・細菌の相互作用が発芽進行に寄与したと考えられる。
(研究2)光干渉断層計測法(OCT)でバイオマス(多孔質基材)内の液体動態を可視化した。減衰係数解析により2つの転移点が検出された。点Aは浸透から蒸発優位への、点Bは自由液体の急速蒸発から閉じ込め液体の緩やかな蒸発への遷移を示す。本手法はバイオマス内の液体輸送追跡に有効である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、無機肥料の投入量最適化を目指し、多成分系肥料の微粒子設計・合成と、植物体内への導入・輸送評価システムの開発を行っている。肥料成分の溶解特性解明と、植物育成実験による成長促進効果評価を通じて、不要な投入を削減した食料生産体系の構築を目指している。 現在までに、発芽過程における微粒子の役割と、バイオマス内の物質移動解析手法について検討を進めた。シリカ粒子をトマト種子の発芽水に添加したところ、対照区より発芽が促進されることがわかった。粒子は種皮の変化を引き起こし、土壌細菌の活性化を介して発芽を助ける可能性が示唆された。発芽の各段階で粒子が確認され、粒子と水分子・細菌との相互作用により発芽が進行したと考えられる。 また、光干渉断層計測法を用いて、バイオマス(多孔質基材)内の液体の動態を可視化する手法を確立した。減衰係数の統計解析から2つの転移点が検出され、浸透から蒸発優位への遷移、自由液体の急速蒸発から閉じ込め液体の緩やかな蒸発への遷移を示すことがわかった。本手法はバイオマス内の液体輸送を追跡する有効な方法となりうる。 以上の結果から、微粒子と植物・バイオマス内の物質移動の双方に関する基礎的知見が得られた。今後は微粒子の最適設計条件の探索と、植物体内での輸送経路の解明に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
無機肥料の過剰投入による環境負荷を抑えつつ、食料生産性を向上させるためには、施肥の最適化が不可欠である。本研究では、多成分系微粒子肥料の設計・合成手法の確立を目指す。各成分の溶解特性を精密に制御できれば、過剰な溶解による環境負荷の増大を抑制できると期待される。 開発した多成分系微粒子は、植物体内への効率的な導入技術と合わせて適用する。植物体内での成分輸送経路とダイナミクスを解明するために、発芽から生育過程を通じて経時的に微粒子の動態を追跡する評価システムを構築する。粒子の形状や表面性質などをパラメータとして、微粒子設計と育成実験を反復し、植物の成長を最大化する最適な微粒子の条件を見出す。 また、モデル植物における物質輸送の計測では、光干渉断層計測法が有効であることが明らかになった。バイオマス内部の液体移動解析に本手法を応用展開することで、微粒子による輸送経路のさらなる解明が可能になると考えられる。 以上の取り組みを通じて、植物の成長促進と無駄な肥料投入の削減を両立する、新たな施肥システムの確立を目指す。
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