研究課題/領域番号 |
23K04484
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小野 巧 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20637243)
|
研究分担者 |
竹林 良浩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70357416)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | 密度 / 粘度 / 高温高圧 / 水素結合 / ハイスループット測定 / アルコール水溶液 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
各種化学プロセスの設計に必要となる混合溶媒の物性データを、広い温度・圧力領域と任意の溶媒組成で測定・推算可能な手法を開発する。はじめに、自動制御により温度・圧力・組成を変えつつ、試料の熱分解を引き起こすことなく密度と粘度を同時かつ迅速に測定可能なフロー式の物性測定システムを開発する。開発したシステムを利用し、強い非理想性を示す水+アルコール混合系をモデル系として、密度と粘度データを蓄積する。蓄積した物性データに対し、状態方程式を利用した相関・推算手法を検討するとともに、MDシミュレーションによる局所溶液構造の解析を行うことで、相関・推算に用いたパラメータと局所溶液構造の対応関係を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
反応や材料合成、分離などの各種化学プロセスの多様化に伴い溶媒に求められる機能は高度化しており、純溶媒から混合溶媒へ、さらに広い温度・圧力領域での溶媒の利用が検討されている。プロセスの設計には、溶媒の物性データが極めて重要であるが、混合溶媒まで考慮すると、設定した温度・圧力・組成での物性データをすぐに利用できる可能性は極めて低い。物性の入手方法として、状態方程式などの推算モデルの利用は有効であるものの、推算モデルに含まれるパラメータの決定には実測データが必要である。近年は機械学習の導入も進んでいるが、広い温度・圧力・組成領域での実測データを学習させないと、温度・圧力の外挿領域での予測精度が大きく低下するのに加え、非理想性の強い系では内挿領域での予測も困難である。物性の実測データの重要性から、申請者はこれまで最も基本的な密度・粘度に着目し、400 ℃ - 40 MPaまで使用可能なフロー式密度・粘度測定装置の開発に成功し、広い温度・圧力・組成領域における水+アルコール混合系の密度・粘度データを世界で初めて報告している。本装置はフロー式とすることで、試料の熱分解を抑制することができる。ただし、上限の400 °Cまで測定できるのは、メタノールのように比較的熱安定性の高い溶媒に限られていた。また、温度・圧力の制御や、試料の置換に時間を要するため、2~3条件/日の測定が限界であった。そこで本研究では、各種化学プロセスの設計に必要となる混合溶媒の物性データを、広い温度・圧力領域と任意の組成で測定・推算可能な手法を開発するため、自動制御により温度・圧力・組成を変えつつ、試料の熱分解を引き起こすことなく、密度と粘度を同時かつ迅速に測定可能な自動ハイスループット流体物性測定システムの開発に取り組んだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、400℃-40MPaまで自動かつ迅速に測定可能なフロータイプの密度・粘度測定装置の開発に取り組んだ。本装置は、申請者がこれまでに開発したフロー式密度・粘度測定装置をベースとして、装置を構成する高圧用ポンプや物性測定部を、制御用PCで一括制御することで自動化を可能とするものである。個別の機器の自動制御は見通しがついたものの、それぞれの機器を安定かつ連動させた制御に関しては、想定以上の時間を要している。また、装置の開発では、測定部の小型化・形状最適化にも取り組んでいる。測定部の小型化・形状最適化は、測定精度の向上に加え、高温条件で問題となる試料の熱分解の抑制や、温度の安定性向上による測定時間の短縮に寄与する。これまでに、測定部の小型化には成功しているものの、形状の最適化には想定以上の時間を要している。以上より、研究はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに行ってきたハイスループット測定が可能なフロータイプの密度・粘度測定装置の開発を継続して実施し、令和6年度中に本申請で対象としている1価、2価数アルコール水溶液のハイスループット密度・粘度測定によるデータの蓄積まで到達することを目標とする。装置の開発においては、開発を加速するため現在課題となっている、制御システムの開発をサポートする研究支援者を3か月間雇用する。また、開発した装置の稼働後は、自動測定による利点を活かし、 定常状態到達の自動検出による測定の高速化、 熱分解データの蓄積による最適流量(滞在時間)条件の自動学習を行い、1日20条件以上の自動測定を目指す。さらに、 制御部にベイズ最適化などの最適化手法を組み込み、測定条件をシーケンシャルに決定し、変化量の大きい条件での重要なデータを効率的かつ取りこぼしなく自動測定できるシステムへの拡張に取り組む。
|