研究課題/領域番号 |
23K04489
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
柿部 剛史 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (00633728)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | イオン液体 / セルロース / バイオマス / 置換基修飾 / 反応プロセス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,「高濃度にセルロースを溶解」し,「高効率かつ温和な条件下でセルロースを誘導体化」する場としてイオン液体を構造設計し,セルロースの誘導体合成から,その単離精製までを1ポットで行うための合成システムの確立と,簡便で低エネルギーなバイオマス資源の高機能材料変換プロセスの構築を行う.
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研究実績の概要 |
Tetra-n-butylphosphonium hydroxide([TBP][OH])40%水溶液を溶媒として無水グルコースユニット1 molに対して9 mol当量の臭化アリル(AllylBr)を添加してアリルセルロースを合成した.室温で反応が進行することを1H-,および13C-NMRにより確認した.セルロース水酸基のアリル化は水素結合性の低下とアルキル鎖の導入により疎水性となるため,アリルセルロースは析出した. 簡便なプロセスによるアリル基置換度(DS)の制御を目指し,AllylBr添加速度を0.5~18 mol/min.vs AGUmolとして総反応時間1時間で反応を行なった.その結果,滴下速度の対数に比例してDSは低下し,18 mol/min.vs AGUmolで滴下した系ではDSは1.55であったのに対して,0.5 mol/min.vs AGUmol滴下した系ではDSは2.2を示した.また,滴下速度に伴って析出するアリルセルロースの粒子径は大きくなった. 速い滴下速度では単位時間当たりにアリル化反応によるAllylBrの消費よりも多量のAllylBrが添加される.AllylBrと[TBP][OH]水溶液の相溶性は低いため,速い滴下速度ではAllyBrと[TBP][OH]溶液は相分離し,液-液界面で局所的にアリル化されたセルロースが未反応のセルロースを取り込みつつ疎水性相互作用により凝集することで低DS,かつ粒子径の大きな二次粒子として析出したと考えられる.一方で,遅い滴下速度では[TBP][OH]水溶液に相溶できる程度のAllylBrだけが系内にあるため,均一かつ高DSでアリル化されたセルロースが析出したと考えられる.得られた結果は同じ反応温度と反応時間,すなわち同じエネルギーコストでアリルセルロースのDSを制御することが可能なプロセスを構築できたことを示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,セルロースに修飾したアリル基を基にして種々のセルロース誘導体を得るための低エネルギーコストな合成プロセス構築を目指している.種々のセルロース誘導体を定義すると,①「種々の官能基を導入したセルロース誘導体」に加えて,②「種々の置換度のセルロース誘導体」が挙げられる.現在までの検討により,①ではアリルセルロースの合成,②ではDS=1.5~2.2のアリルセルロースを合成するプロセスを同等のエネルギーコストで達成することができており,今年度以降のアリルセルロースを基にした種々の誘導体合成につながる結果を得ることができている.
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた知見から,DS=1.5~2.2のアリルセルロースを合成するプロセスを構築することができた.また,滴下速度の制御により得られたDS=1.5~2.2のアリルセルロースの各種有機溶媒との相溶性は異なる値をとることが確認できた.これらのアリルセルロースを原料としたセルロース誘導体化(エポキシ化,アミノ化など)を進める.まずはこれまでの反応で得られたアリルセルロースを単離し,これを出発原料とした反応プロセスの構築を目指す.アリルセルロースのDSによる溶解性の違いは溶媒の選択に重要である.各種有機溶媒を反応溶媒とした誘導体合成を試行し,効率的な反応プロセスの構築につなげる.
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