研究課題/領域番号 |
23K04501
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27030:触媒プロセスおよび資源化学プロセス関連
|
研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
田邉 豊和 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 准教授 (50509130)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 半導体型光触媒 / 水分解 / 可視光応答性酸化物 / ナノシート |
研究開始時の研究の概要 |
光触媒を用いた太陽光水分解による水素製造は,エネルギー問題を解決する太陽エネルギー変換技術の代表例である.近年,原子層レベルのナノシート光触媒が注目される中で,本研究では,Sn3O4ナノシートを基本構造とした新規可視光応答性ナノシートの創出を目的とした.一部のSnサイトを他の金属元素と置換することで,高効率での太陽光水分解が期待できる.さらに,酸化物の利点である組成や結晶構造の自由度を生かしたバンド構造制御を行うことで,ドーピングによるバンド制御に頼らない,新しい可視光応答性ナノシートに発展できると着想した.
|
研究実績の概要 |
光触媒を用いた太陽光水分解による水素製造は、エネルギー問題を解決する太陽エネルギー変換技術の代表例である。現在の光触媒はワイドギャップ半導体が殆どであり、太陽光の大部分を占める可視光を吸収することができない。その中で、Sn3O4は可視光を吸収できる数少ない光触媒であるが、その可視光吸収領域は限られている。そこで本年度では、Sn3O4にSbをドープすることでバンド制御を行い、可視光吸収領域の拡大を目的とした。 実験方法を以下に示す。Sbドープ Sn3O4は水熱合成法を用いて合成した。テフロン容器に純水20 mL、クエン酸三ナトリウムNa3C6H5O7を20 mmol入れ5 min撹拌し、塩化スズ(Ⅱ)二水和物SnCl2・2H2Oを8 mmol加えて5 min撹拌した。その後、塩化アンチモン(Ⅲ)SbCl3を所定量加えて5 min撹拌し、0.2 M水酸化ナトリウム溶液20 mLを加えて前駆体溶液とした。その後、テフロン容器をオートクレーブに入れ180 ℃の恒温槽で9 h加熱した。 得られた実験結果を以下に示す。XRD測定によりSbを3%ドーピングしても Sn3O4構造が維持されていることがわかった。SEM観察により、得られた試料は数百nm程度の花びら形状が見られた。UV-Vis拡散反射スペクトルからSbのドーピング量が多くなるに従い吸収できる可視光領域(λ>400 nm)の広域化が見られた。この結果はドーピングによりバンドギャップが狭くなっていることを示している。光電子収量分光測定から、ドーピングにより価電子帯上端が負側にシフトしていることが判明した。この結果は価電子帯のシフトによりバンドギャップが狭まっていることを示している。以上の結果から、Sbドーピングは Sn3O4のバンドギャップの狭窄化に寄与し、可視光吸収領域の拡大に有効であることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的であった元素置換による可視光吸収領域の拡大については、Sbを添加することで達成したといえる。今年度の成果から、Sn3O4にSbドーピングすることでバンド制御可能であり、可視光領域の吸収拡大を行えることが分かった。SbドープSn3O4は新規の太陽光水分解用の半導体型光触媒として有望であると判明した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方策は、可視光吸収領域の拡大に成功したSbドープSn3O4試料における太陽光水分解活性の評価を行う予定である。それにより、水分解用光触媒としての性能を調べる。また、XPSを用いて成分元素の価数や電子状態を調べ、バンド構造などの電子構造の評価も行う。さらに、Sb以外のBi,Pb,Ge等の元素置換の候補となる金属イオンをドープして可視光吸収領域の拡大と水分解活性の高性能化を目指す。
|