研究課題/領域番号 |
23K04504
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
竹森 洋 岐阜大学, 工学部, 教授 (90273672)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | エクソソーム / 細胞外小胞 / 微生物 / 天然物 / 抗炎症 / 薬物送達 / 細胞外分泌小胞 / 遺伝子治療 / ワクチン |
研究開始時の研究の概要 |
新たな薬物送達システムとして、エクソソームを含む細胞外小胞(EV: Extra cellular vesicle)を開発する。特に、微生物EVに着目し、大量生産と免疫干渉の側面から素材の開拓を実施する。EV特異的に共有結合型する蛍光化合物を指標に、EVの細胞内・生体内の動態を可視化し、素材としての有効性を検証する。モデルケースとして、ステロイド担体とEV-ステロイドを比較し、組織・臓器特異的有効性の差を検証する。
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研究実績の概要 |
療・ワクチン分野における薬物送達(輸送)システムとして、ウイルス・人工脂質(リポソーム)が利用されている。しかし、これらはアレルギー(アナフラキシー)等の過剰な免疫反応を惹起するため継続的投与は困難である。最近、エクソソームを含む細胞外小胞(EVs: Extra cellular vesicles)が薬物輸送担体として注目されている。癌及び幹細胞から放出されるエクソソームは、免疫抑制機構(イムノチェックポイント)を活性化し癌増殖の一因となるが、免疫反応回避の観点では重要な素材と成り得る。しかし、培養細胞から放出されるエクソソーム量は僅かであるため、実用化には多くの課題が残る。一方、微生物EVは大量生産可能である反面、表面抗原が免疫活性化に作用するため、現在のウイルスベクター同様に過剰な免疫反応を誘導する。2023年度は、藻類のEVsに着目し、精製法と生物活性を評価した。 藻類は植物同様に、EVsは培養液よりも菌体破砕物に多かった。また、120℃で処理するとより多くのEVsが回収でき、抗炎症活性などの生物活性も高かった。これらの活性は、異なる3種の藻類で観察できた。複数の藻類で同じ現象が観察されたことから、熱処理で脂質膜が散乱するものの、温度が下がると生理活性化物質を伴って脂質膜が再構成されると予想する。生理活性化物質の候補としてカルテノイド類が検出できた。特に、フコキサンチンの含有量が高かった。また、抗炎症活性はEVs精製前の抽出液よりも、精製後のEVs画分の方が高いことから、生理活性化物質は優先的にEVsへ濃縮されたと予想される。また、メラニン合成抑制活性も同様にEVsへ濃縮されていた。一方、RNAの含有は検出されなかった。今後は、他の活性も評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究は順調に進み、特許も出願できた。特に、EVsが熱処理に耐性を示した点は、今後の応用で重要となる。具体的には滅菌操作である。加えて、他の微生物のEVsの生理活性も取り込むことができ、将来のEVsの薬物送達素材の開発に人為的修飾が容易であることが示唆された点は評価に値する。 HPLC-ゲル濾過法を利用することで、岐阜大学蛍光試薬の活性誘導体によるEVs検出感度はpgまで達成している。 本システムを活用し、藻類由来EVの増産・精製法を検討する共に、遺伝子レベルでの特定を行うことを目的に、1)藻のDNA配列を次世代シーケンサーで解析し特定し、2)藻の種類ごとに、最適な増殖条件を決定した。3)EV大量製造のための条件は熱処理で達成し、4)内部含有物質の同定でき、マーカーとして活性相関を求めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
目的の免疫抑制型EVsがほぼできたため、以後は、EVsへ化合物を取り込む方法を開拓する。岐阜大学蛍光試薬LysoKKにEVs親和性があることを利用し、LysoKK誘導体を薬物とEVsとのリンカー兼トレーサーとして利用する。高濃縮EVsの濃度(粒子数換算)は、1x1015 =10nmolオーダーである。そのEVsで反応するLysoKKは最大で数十μmolであり、効果を発揮する抗炎症剤としては、5-アミノサリチル酸やプレドニゾロン(ステロイド)が候補となる。LysoKKのEV親和性に影響しない構造にCOOHを導入済みであり、薬剤もCOOH修飾し無水結合させる。薬剤の放出を容易にするため、あえて不安定な無水結合から開始し、先でより強固な結合も検討する。 また、EVsの体内動態も評価する。 EV-5―アミノサリチル酸/プレドニゾロンは短期投薬モデルであり、実際は経口による長期投与での検証が必要となる。LysoKK-薬剤間をアミド結合とし、EV-薬剤を安定化させ、長期投与での生体への影響(抗EVs抗体の上昇など)を加味し生体認容性を検証する。 最終的に、炎症性腸疾患などの、上皮系疾患への有用性を検証する。
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