研究課題/領域番号 |
23K04507
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀口 一樹 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (80791897)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 細胞製造 / 浮遊懸濁培養 / CFD / 粒子トラッキング / 凝集体形成 / iPS細胞 / 培養シミュレータ / 流体力学 / 剪断応力 |
研究開始時の研究の概要 |
動物細胞を浮遊状態にして培養する浮遊懸濁培養は、再生医療や医薬品製造、食肉の生産など幅広い応用が期待されているが、動物細胞は液流れによる力学的作用に影響を受けやすく、さらに細胞培養のコストが高いため実験回数も限られるため、その培養条件の最適化は困難であった。そこで、コンピューターシミュレーションによる流体解析と細胞のトラッキング解析および生物学的評価を組み合わせることで、培養の結果を予測・最適化するシミュレータの構築を行う。
|
研究実績の概要 |
6ウェルプレート(培養体積4mL)および三角フラスコ(培養体積100mL)を対象として、蛍光粒子を培養液中に懸濁し、旋回振盪シェーカーで旋回振盪しながら高速度カメラでその挙動を撮影し、粒子トラッキングを行う系を構築した。取得された動画から、粒子の加速度の経時変化を取得し、その時間平均を算出した。さらに、6ウェルプレート、三角フラスコでiPS細胞を4日間浮遊培養をおこない、トリパンブルー排除試験法による生細胞数をおこなったところ、114-125 mm/s^2近傍の時間平均加速度にある旋回条件で最大の細胞増殖が得られた。また、培地交換ごとに培養液をサンプリングし、死細胞から漏出される乳酸脱水素酵素定量による死細胞数計測では、時間平均加速度の増加に従って死細胞の増加が見られた。以上の成果から、粒子トラッキング手法を用いた加速度計測による培養条件検討が容器に依存せずに実施可能であることを示唆した。また、粒子トラッキング手法を用いた浮遊懸濁培養の攪拌条件決定手法については、成果を論文化することができた。 また、浮遊培養中の細胞挙動を計算科学的に推定する手法についても検討をおこなった。オープンソース流体計算ソルバーであるOpenFOAMを用いて、旋回振盪培養中の粒子挙動シミュレーションを実施し、細胞粒子が受ける剪断応力を算出した。その一方で、凝集体形成能のあるHEK293T細胞をシミュレーションと同一の攪拌条件で振盪浮遊懸濁培養を2日間行い、形成される凝集体の粒径・個数の計測をおこない、シミュレーションで得られた剪断応力との相関性の評価をおこなった。結果、非線形な傾向が見られ、低い剪断応力では凝集体の合一が活発に、高い剪断応力では各凝集体の増殖が活発に行われていることが示唆されており、剪断応力を指標に凝集体形成結果を推測できる可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、粒子トラッキングを用いた浮遊懸濁培養条件検討手法の拡張性およびスケールアップへの適用可能性を検討するために、4ミリリットルからから100ミリリットルへのスケールアップにおいて、粒子トラッキングによる条件検討を実施し、スケールアップへの応用可能性を示すことができた。これにより、細胞培養を伴わない運転条件パラメータ取得方法として、粒子トラッキングを用いる方法を確立することができ、計算流体力学的アプローチとの比較の準備が整いつつあるといえる。 また、OpenFOAMを用いたシミュレータの構築では、HEK293Tの2日間の旋回浮遊懸濁培養における培養結果との比較によって、剪断応力によって非線形的に得られた細胞数・凝集体粒径・個数が変化していることを示唆されており、剪断応力が計算科学的アプローチによって取得できるパラメータ候補としての可能性を示した。 これらの成果から、最終的な目標となる細胞浮遊懸濁培養シミュレータの構築にあたって、基礎となるモデル培養・観測系の構築および流体シミュレータの構築は順調に進行していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
粒子トラッキングに関する手法については、スケールアップでの検証についての論文化をおこなうとともに、培地粘性など異なる条件での拡張性を評価し、同手法の汎用性について引き続き検証を進めていく。また、その拡張性評価の一環として、浮遊懸濁培養以外での培養操作における評価への応用なども進めていきたい。 流体シミュレーションを用いた培養設計については、凝集体形成後の増殖についても剪断応力との相関性を評価し、細胞自身が受ける剪断応力に対して浮遊懸濁培養の結果を理論的な解明を目指すとともに、培養容器のスケールアップを行った上で同様の検証を行い、前年度で得られた剪断応力に対する凝集体形成の影響が同様に評価できるかを検証する。
|