研究課題/領域番号 |
23K04508
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
今中 洋行 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 助教 (10379711)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 分子認識素子 / 足場 / 分子間相互作用 / 蛋白質 / CutA1 / 超好熱菌 / 生体分子間相互作用 / 足場タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではバイオ分子間相互作用の制御・検出における標的分子捕捉技術に関し,その基盤要素の一つである分子認識素子を緻密に設計し,従来型分子の機能を超越する,相互作用検出の高感度化・高精度化に資する素子を作出する.構造が極めて安定な超好熱菌由来ホモ三量体タンパク質CutA1を,リガンドバイオ分子(ペプチドあるいはタンパク質)を提示するための足場として利用し,分子認識素子の配向制御,機能維持ならびに多価化/複合化を同時に担保しうる新たな分子設計・調製技術の基盤を確立する.
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研究実績の概要 |
リガンドバイオ分子の機能を精密に制御しうる足場タンパク質CutA1を用いた分子認識素子開発における分子設計多様性の拡張とその機能検証を進めた.令和5年度は,まずCutA1の多価化を図るべく,網羅的な分子間相互作用エネルギーの解析を通じ,リガンド分子挿入の可能性がある部位の候補を複数リストアップした.それぞれの候補サイトにリガンドペプチドを挿入した各種変異体を設計し,発現タンパク質の安定性を含む特性評価を行った.CutA1配列中の2か所にリガンドペプチドを同時挿入した場合では,挿入サイトの組合せ,挿入長さにより,可溶化率や熱安定性に顕著な差が生じることがわかった.そこで,複数箇所へのペプチドの同時挿入が可能であったサイトの組合せを基に,3か所へのリガンドペプチド同時挿入についても検討を加え,これを可能とするサイトの組合せを新規に見出した.その検証モデルとして,静電的相互作用の再現を試み,酸性ペプチド挿入CutA1と塩基性ペプチドとの部位特異的な相互作用の検出に成功した.アラニンスキャニングによる相互作用形成における重要な残基を同定するとともに,アナライトペプチドの長さが相互作用検出に及ぼす影響について調査し,CutA1変異体によって低分子から中分子にわたる多様なサイズの分子の捕捉が可能であることを明らかにした.また,同数の酸性アミノ酸を単一箇所に挿入あるいは複数箇所に分散して挿入し,相互作用の検出を試みた結果,複数箇所に同時挿入し,多点で相互作用を形成するモデルが効果的であることが実証でき,CutA1の多価化が分子間相互作用形成に有用であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超好熱菌由来で極めて高い構造安定性を有するタンパク質であるCutA1を足場とした有用な分子認識素子の創出を試みた.コア構造が安定なCutA1の表面露出領域へ複数のリガンドペプチドを同時に挿入可能なサイトの組合せについて詳細に検討を加え,安定な発現を可能とする組合せを見出すとともに,静電的相互作用モデルの検証も行い,幅広いサイズの分子の捕捉が可能で汎用性の高い多価化CutA1創出の基盤となる重要な知見を得ることができた.多価化の効果を評価できるモデルについては,これまでに明らかにされているタンパク質-ペプチド間あるいはペプチド-ペプチド間相互作用を適用することができないため,新規に設定し,それを実証できた. これら当初予定していた研究について,特に遅れはなく,順調に進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
多様なサイズの分子の捕捉を可能とするCutA1を足場とした機能性分子認識素子の創出を引き続き進めるとともに,ナノバイオ界面におけるリガンド分子配置の精密制御技術の開発も進める.まず,機能性分子認識素子の創出に関しては,CutA1の多価化技術とCutA1の一本鎖化技術を組み合わせ,一本鎖型CutA1(scCutA1)の細胞表層提示系の構築を行う.可溶化状態でホモ三量体を形成するCutA1の分子サイズはそれほど大きくないが,一本鎖化すると若干分子量が大きくなるため,進化分子工学の適用に向けた安定な細胞表提示系ランダムライブラリの構築にはアンカータンパク質の選抜が必要とある.オートトランスポーターや外膜局在蛋白質をアンカーとする表層提示系の適用の有無について詳細な検討を加える.また,ランダムライブラリ構築に向け,静電的相互作用モデルを利用し,リガンドペプチドを構成するアミノ酸の数やランダム化部位が分子間相互作用の形成に及ぼす影響について,十分な知見を得る. 一方,機能的なナノバイオ界面の構築に関しては,基材表面親和性ペプチドを介したタンパク質固定化特性について,共存タンパク質が固定化分子の密度に及ぼす影響を詳細に検討するともに,Coiled-coil構造やSpyCatcher-SpyTag複合体形成を利用した高次構造体の自在な配向固定化技術確立の検証を進める.その際,ナノバイオ界面におけるリガンド分子の空間的配置・密度の精密制御が,分子間相互作用検出におけるアナライト分子のサイズとどのような相関があるのか,多価化CutA1やエステラーゼなどの酵素を用いて調査する. 上記のように,特定の標的分子を捕捉する多価化CutA1の創出とその利用に向け,詳細な機能評価・技術開発を通じ,多価化分子認識素子の配向制御,機能維持を同時に担保しうる分子設計・調製技術の基盤の確立を進める.
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