研究課題/領域番号 |
23K04520
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
篠原 健一 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (10292244)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ポリマー / 分子モーター / ナノ計測 / 力発生 / 熱ゆらぎ / レーザートラップ / ポルフィリン / イオン性ポリマー / 1分子 / イメージング / 力学計測 |
研究開始時の研究の概要 |
高分子鎖の直接観測は、高分子の構造と機能に関する理解を深化させる。本研究では、高分子鎖の相互作用を直接観測し、ポリマー分子モーター創製を目指してポリマー分子間コミュニケーションを理解する。すなわち、高速AFMによるムービー撮影によって高分子間相互作用ダイナミクスを直接観測し解析する。合わせて実験系の全原子分子動力学(All-atom MD)法によるin silico観察を行い原子レベルで理解を深める。さらにレーザートラップ法で高分子鎖間に働く力を直接計測する。具体的には、キラルらせんポリマー、アニオン性ポリマーやカチオン性ポリマーなどの構造と物性を有する高分子鎖の間に働く相互作用を解明する。
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研究実績の概要 |
既に我々は、ファンデルワールス力に基づいたポリマー分子モーターについて報告した。一方、アニオン性ポリマー鎖とカチオン性ポリマー鎖の静電相互作用ダイナミクスの高速AFMイメージングを最近報告した。今回、光ピンセット(レーザートラップ)法によるイオン性ポリマー鎖の力発生を直接計測することに成功した。アニオン性ポリマーとしてPAMPS [poly(2-acrylamido-2-methyl-1-propanesulfonic acid)] (Mw: 2 x 10^6) を用いた。カチオン性ポリマーとしてPAA・HCl [Poly(allylamine hydrochloride)] (Mw: 5 x 10^4) を用いた。先ず、ガラス基板表面にPAMPS 水溶液をキャストし静置する。一方、PAA・HCl水溶液とビーズ(直径1μmカルボキシル化ポリスチレンビーズ)を混合した後、15 mM KCl水溶液で希釈して希薄溶液を調製する。この溶液を上記のガラス基板にキャストし、最後に15 mM KCl水溶液でリンスして観測試料とした。 実験の結果、力発生が計測された。高分子は、レーザートラップのバネに対して仕事をしたことになり、高分子の仕事はバネの仕事の式を使って、以下のとおり算出された。結果は、熱ゆらぎエネルギーの48.5倍であり、ATPの加水分解エネルギー (~20 kBT)の2.4倍の仕事がなされた。静電相互作用に よるエネルギーと考察される。さらに10 nm程度のステップ状の力発生(中間状態)が確認された。既報告の高速AFMイメージングにおいてもPAMPS鎖に沿ったプロセッシブなPAA短鎖分子運動における10 nm程度のステップが多数観測されていることから分子歩行による分子モーターの力発生であると考察された。人工筋肉としての力学特性を計測することに成功した。 またキラルポルフィリン超分子ポリマーの拡散係数を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とおり、アニオン性ポリマー鎖とカチオン性ポリマー鎖同士の静電相互作用に基づく力発生を光ピンセット法によって直接ナノ計測することに成功した。 またキラルポルフィリン超分子ポリマー長鎖と相互作用する短鎖のブラウン運動の拡散係数を観測した。分子モーターとしての基本特性を評価した。 現在、多様な力学発生のメカニズムの観測へ向けた実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
分子間相互作用には、ファンデルワールス(vdW)相互作用、静電相互作用、水素結合による相互作用、水中における疎水性相互作用などがある。本研究では、これらの相互作用がポリマーの分子内(鎖中)および分子間(鎖間)でどう働き、どのような構造とダイナミクスが観測されるかを明らかにする。例えば、らせん構造を有していれば、分子鎖表面に周期的な凹凸構造ができるので、鎖表面においてvdW相互作用で分子鎖同士の噛合いが可能である。ここを足場として次の状態へ遷移するという運動を制御できれば、分子モーターの基本的原理となる。全原子MDによるin silico観察と連携させてこの機構を解明する。また、イオン性ポリマーにおいては、アニオン性ポリマー鎖とカチオン性ポリマー鎖の相互作用動態を高速AFMイメージングおよびレーザートラップ法による力学計測で動態解析することで、静電相互作用のダイナミクスを解明する。そして、これらの実験で得られた知見をポリマーによる分子モーターの機能設計に応用する。
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