研究課題/領域番号 |
23K04528
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
入田 賢 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 講師 (20792188)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 光アイソレーター / 単層カーボンナノチューブ / 光ナノファイバー |
研究開始時の研究の概要 |
現在販売されている光アイソレーターは,ファラデー効果を利用し磁場や複数の光学素子を組合せる必要があり,光アイソレーターの小型化の限界に到達している.本研究は,光ナノファイバーの近接場光と単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の相互作用を利用することにより,室温で動作可能な小型の光アイソレーターを実現することを目的とする.光ナノファイバー表面の円偏光に対してSWCNTの円偏光二色性を作用させることで,光ファイバー内の光の伝搬方向に応じた透過率の変調を検討する.単一カイラリティのSWCNTを使うことで,シンプルな構造で,多種の波長に対応した光アイソレーターの実現が期待できる.
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研究実績の概要 |
本研究は,冷却原子を使用する代わりに,単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の円偏光二色性(CD)を活用し,室温で動作する小型の光アイソレーターの開発を目指している. 本年度は計画の初年度であり,研究に必要な設備や機器の導入,装置設計・製作環境の整備,そして安定効率的な測定環境の構築を行った.特に,研究室内で一貫した設計から製作までを行えるようになったことは,研究開発の速度を大幅に向上させた.これにより,予定している次年度以降の研究計画の推進がスムーズに進むことが期待される.また,測定中に光学系を組み直す必要がなくなったため,SWCNT光アイソレーターの透過率差の評価を安定かつ効率的に行うことが可能となり,より詳細なデータの取得が期待される. この研究で得られた成果の一つとして,光ナノファイバー表面での円偏光と単一カイラリティSWCNTの相互作用を評価した.マイクロピペットを用いたSWCNTの滴下法により,SWCNTを光ナノファイバーに付着させ,その条件を最適化した.これにより,光ナノファイバー表面の単一SWCNTと円偏光との相互作用を詳細に計測・評価することが可能となった.現在,これらの研究成果を論文にまとめている. また,産業技術総合研究所との共同研究では,単一のSWCNTエンチオマーを用いて光アイソレーターを作製し,透過率差20%を達成した.この研究成果に基づき,従来の光アイソレーターとは異なる新しい原理と工学概念に関する特許を出願した.さらなる検証と追加実験を進めており,その詳細は次回の研究成果報告で紹介する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,研究開発に必要な設備や機器を導入し,以下の環境を構築した. 実施内容1:装置設計・製作環境の整備 フライス盤や工具を導入し,光ナノファイバーの治具やケース,光学部品のマウントなどを製作できる環境を整えた.3Dプリンターと組み合わせることで,金属やプラスチックで必要な物品の製作が可能となった.これにより,研究室内で設計から製作まで一貫して行えるようになり,研究開発のスピードが大幅に向上した. 実施内容2:安定効率的な測定環境の構築 レーザービームを分岐するビームスプリッター(BS)やレーザーパワーメータを導入し,分光系を再設計・再構築した.これにより,光ナノファイバーに左右同時に光を入力でき,SWCNT光アイソレーターの研究開発において,光ナノファイバーの左右での光透過率を容易に計測できるようになった.従来のように計測中に光学系を組み直す必要がなくなり,安定して効率的にSWCNT光アイソレーターの透過率差の評価が行えるようになった. これまでに,以下の研究成果を得ている. 研究成果1:光ナノファイバー表面での円偏光と単一カイラリティSWCNTの相互作用の評価 SWCNT光アイソレーターの実現に向けて,円偏光と単一カイラリティSWCNTの相互作用をラマン分光で評価した.まず,SWCNT分散溶液をマイクロピペットで光ナノファイバーに滴下した際には,大量のSWCNTが付着するため,濃度の最適化を行なった.その後,分光系のステージを動かし,光ナノファイバー表面のSWCNTを光学顕微鏡とラマン分光で観察し,SWCNTの密度分布を明らかにした.これにより,光ナノファイバー表面の単一SWCNTと円偏光との相互作用を詳細に計測・評価することができた.これらの成果は,現在,論文としてまとめている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果を論文にまとめて発表すると共に,以下の研究計画を実施する. [1,2年目の計画] 光ナノファイバーへのSWCNT付着制御 光ナノファイバー表面の円偏光は,特定の強度分布を持つことが知られている[Opt. Commun. 242, 445 (2004)].ファイバーの半径aとし,動径方向x/a=1の位置で強度が最も高くなる.また,ファイバー表面(x=a)では方位角φによって強度分布が異なる.したがって,SWCNT(単層カーボンナノチューブ)の付着位置を制御する必要がある.付着方法として,以下の二つの手法を検討している. 方法A:マイクロピペットを用いたSWCNTの滴下法 この方法では,SWCNT分散溶液をマイクロピペットで光ナノファイバー上に滴下し,スキャンして付着させる.この手法は簡単であるが,SWCNTの位置や密度をどの程度制御できるかを調査する必要がある. 方法B:単一カイラリティの架橋SWCNTを光ナノファイバーに接触させる この方法では,化学気相堆積法を用いてAuメッシュ上にSWCNTを合成し,PL(フォトルミネッセンス)分光でカイラリティを特定する.倒立顕微鏡上に設置したマニピュレータを用いて,Auメッシュ上の単一カイラリティのSWCNTを操作し,光ナノファイバーに接触させる. [3年目の計画] SWCNT光アイソレーターの透過率差の最大化 SWCNTは1本で吸収できる光量に限界があるため,複数の同一カイラリティSWCNTを光ナノファイバー上に付着させる必要がある.SWCNT光アイソレーターの透過率差が最大になるように,SWCNTの付着密度を最適化する.
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