研究課題/領域番号 |
23K04548
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
寺澤 知潮 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (90772210)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | グラフェン / 水素イオン / 同位体効果 |
研究開始時の研究の概要 |
グラフェンは炭素原子の六員環からなる単原子厚さの物質である。水素イオンがグラフェンを透過すること、その際に重水素イオンが軽水素イオンよりも透過しにくい同位体効果があることが知られている。本研究ではそのメカニズムを解明するため、グラフェンに水素イオンを照射する装置の効率を高め、水素イオン透過をより精密に評価する。本研究により水素イオンがグラフェンのどのような構造をどのようなメカニズムで透過するかが解明されれば、より高効率で水素イオン同位体を分離する膜の開発等に繋がることが期待される。
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研究実績の概要 |
グラフェンは炭素原子の六員環からなる単原子厚さの物質である。水素イオンがグラフェンを透過すること、その際に重水素イオンが軽水素イオンよりもグラフェンを透過しにくい同位体効果があることが知られている。そのため、グラフェンは軽水素と重水素を分離する同位体分離膜としての応用が期待される。 しかし、水素イオンがグラフェンを透過するメカニズムは完全には解明されていない。特に、グラフェンの水素イオン透過の際のエネルギー障壁の高さと、グラフェン中のどのような構造を水素イオンが透過するかという透過箇所は未解明である。 そこで、本研究では真空中でグラフェンに水素イオンを照射し透過するイオンを直接検出するという手法を提案する。特に水素イオン照射装置の高輝度化と透過する水素イオンの検出効率の向上を達成し、透過障壁の高さやその構造依存性を解明する。 本年度はイオン化室と検出器室で独立の排気系を構築、市販のイオン銃を改造してイオン化室を作製、半球形アナライザを廃止しウィーンフィルタのみで質量とエネルギー分離、という装置改造を実施した。 これらの装置改造により水素イオン照射量として、これまではマイクロチャネルプレートによる増幅が無ければ検出できなかった水素イオンの照射量が増幅なしでも0.1nAまで増大したことを確認した。 さらに、予備実験においてはグラフェンを透過した水素イオンを検出した可能性があり、これは本年度実施した装置改造が本研究計画の目標の達成のために有効であったことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画ではグラフェンの水素イオン透過の同位体効果の機構解明のため、真空中でグラフェンに水素イオンを照射し透過するイオンを直接検出するという手法を提案している。2023年度においては装置改造を実施し水素イオンの照射量と検出効率の向上を目指していた。具体的にはイオン化室と検出器室を独立の排気系で排気することによる検出効率の向上、市販のイオン銃のイオン化室の流用によるイオン生成効率の増大、半球形アナライザの廃止による質量・エネルギーフィルタの高効率化を目指していた。これら全ての装置改造は予定通り実施された。装置改造は水素イオンの検出効率を1-2桁増大させることを目的としていたが、実際に得られた水素イオン照射量およびマイクロチャネルプレートでの検出量は2桁程度向上した。さらに、予備的にグラフェンに水素イオンを照射した実験においても、透過した水素イオンが検出できた可能性がある。 以上のように、実施予定だった装置改造が計画通り終了し、期待されていた水素イオン照射量が向上され、予備実験においてグラフェンの水素イオン透過能の議論に十分な照射量を達成したと見込まれることから、本年度の研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度において、水素イオンの照射量の向上が確認された。さらに予備実験においてはグラフェンを透過した水素イオンを検出した可能性があった。 そこで2024年度以降は、グラフェンを透過した水素イオンを検出したと疑いなく言えるよう論証を行う。具体的には、グラフェンを貼り付けたTEMグリッドと、グラフェンなしのTEMグリッドにおける、水素イオンの透過能の運動エネルギー依存性を議論し、グラフェンが有る場合に存在するエネルギー障壁をグラフェン由来と結論づけることを目標とする。この目標が達成されれば、グラフェンの水素イオン透過の際のエネルギー障壁の高さを明らかにしたと言うことができ、本研究計画の目標の一つは達成されたと言える。 さらに、現状のグラフェン試料は自然に発生した欠陥や粒界を持つのみであり、その粒径は100nm前後と見込まれている。本試料に対して100eV程度のArイオンを照射することでグラフェンに意図的に欠陥を生成し、その後の水素イオン透過障壁を議論する。これによりグラフェン中のどのような構造を水素イオンが透過するかという透過箇所を解明することが期待され、本研究計画の2つ目の目標を達成することが期待される。 グラフェンの水素イオン透過のエネルギー障壁および透過箇所が解明されれば、その同位体効果の議論を拡げると期待される。この成果はグラフェンを用いた水素同位体分離技術の開発につながり、医薬品や核融合燃料の製造に重要な重水素、三重水素を発展させるという形での社会への貢献が期待できる。
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