研究課題/領域番号 |
23K04556
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
川村 隆三 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50534591)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | キネシン / 微小管 / 協同性 / 運動集積 / 多分子系 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、キネシン・微小管のモータータンパク質について、どのような構造にすれば多分子の駆動力を効果的に集積できるのか解明する。運動の統合を単純化したモデル系から明らかにし、これを階層構造化することで高度な運動機能の実現を目的とする。微小管をランダムにネットワーク構造化するだけでも、基板上に配置したキネシンで駆動すると集積的な揺らぎ運動が生じることがわかっているが、運動速度や出力が増大する協同現象については未解明であった。力を合わせる機序を解明し、ナノメートルの歩幅で動くモータータンパク質の駆動力を協同的に統合することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、モータータンパク質のキネシンとそのレールとして働く微小管で、運動する多分子系を人工的に構築して協同的な駆動現象について解明することである。先行研究では、微小管を化学架橋してできる微小管ゲル(ネットワーク構造)を、基板上に配置した多数のキネシンで駆動すると集積的な運動を発現することを見出していた。本研究では、ナノメートルの歩幅で動くキネシンの駆動が統合される現象を単純化したモデル系で再現し、効率的な駆動力の統合や協同的な運動発現の条件を明らかにし、多分子系の運動機能を高める機序の理解を目指す。将来の生物学的な理解や工学的な応用に資する知見を獲得しようとするものである。 2023年度は、トレーサーとなる微粒子の動体追跡について3次元追跡を可能にする技術を開発し、国際学会および専門誌(JJAP)に発表した。キネシンの駆動力で揺らぐ微小管ゲルにマイクロ微粒子をトレーサーとして複数同時に位置計測ができるだけでなく、細胞分裂や泳ぐ微生物などさまざまな生物の3次元的な運動を追跡できることを明らかにしている。キネシンと微小管の配置を様々にデザインした系で、多分子運動の動態追跡が今後可能になる為、重要な技術基盤の構築に成功したと言える。これに加えて、キネシンを多量体化するため、ジヒドロ葉酸レクターゼ(DHFR)との融合タンパク質を発現する遺伝子の組換体作製に取り組んだ。また、微粒子動態追跡の時間分解能を向上するため、四分割フォトダイオードを導入した計測系の設計と装置調達を進めた。当初の予定では、キネシンの基板上パターン配置による多分子駆動の評価を行う予定であったが、3次元追跡技術(上記)の開発が順調に進んだためこちらに注力したため、次年度に繰り越して実施する計画に変更した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、キネシン‐微小管の多分子系を、単純なモデルとして再構成して協同的な運動の発生機序を探るものである。微粒子に微小管を放射状に結合した星型集合体を形成して動態を評価したり、微小管ネットワークの揺らぎを微粒子の揺動として評価したりするなど、微粒子の追跡が動態解析に重要となる。2023年度は、この微粒子追跡を3次元かつ複数の対象を並列的に位置計測する技術を開発して研究の基盤を獲得した。国際学会や国際誌で発表するなど、当初の予定以上の成果を得ることができた。これに加えて、微粒子の高速追跡を可能にする四分割フォトダイオードを採用した測定系の設計や、多量体形成を目指したキネシンの融合タンパク質調製に向けた遺伝子組換えなど、基盤技術の構築も順調に進めることができている。他方で、「単純なモデルを再構成する」という研究の主題部分は、工程順を変更して次年度以降の課題としている部分もあるため、全体を総合的に見て自己評価を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、単純なモデル系としての多分子系構築と運動の評価について、前年度から繰り越した状況を踏まえて優先して取り組み、当初の計画達成に向けて研究を推進する。既に技術を確立しているキネシンの基板上パターン配置や、放射状の微小管集合体形成の技術を駆使することでこれを実現する。2023年度に実現した3次元追跡法は、協同的な運動を探索する上で有益な手法となると期待されるため積極的に採用することで相乗的な成果獲得を目指す。また、四分割フォトダイオードを用いた高速追跡法は、既存の低速領域での計測結果や、ガラスマイクロニードルを用いた巨視的な力学計測と比較して有意な情報収集が期待できる。このため進行中の装置製作を継続して計測系を完成させる。 キネシンの多量体形成に向けた組換え体についても融合タンパク質の発現・精製の条件検討に取り組む。研究計画実施のベクトルは複数あるが、2024年度より研究室人員も増えた為、無理なく遂行できるものと考えている。
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