研究課題/領域番号 |
23K04564
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
斉藤 大志 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (70611317)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 金ナノ粒子 / 一本鎖デオキシリボ核酸 / 一重鎖DNA / 光-熱効果 / 局所粘度 |
研究開始時の研究の概要 |
不均一系で起こる化学反応は、熱揺らぎや物質の流れ(濃度勾配)といった局所的な環境の偏りが駆動力となっている。不均一系を支配するいくつかの環境変数の中でも、局所領域における粘度(局所粘度)は重要である。しかし、これまでナノ~マイクロサイズの局所粘度を計測する手法は限られていた。例えば、細胞サイズと同スケールでの局所粘度を定量的に計測できるプローブが開発できれば、基礎科学のみならず工業、医学など広い分野への波及効果をもたらす。本研究では、金属ナノ粒子と蛍光分子を組み合わせた局所粘度用のプローブを設計・合成し、ナノ~マイクロサイズ領域における局所粘度計測を試みる。
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研究実績の概要 |
水溶性の一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)は、pHやイオン強度の変化に対して安定であることが知られている。このssDNAを被覆分子として用いることで、水溶性かつ高い分散安定性を示すナノ粒子が合成できると考えた。また、ssDNAに官能基を導入する事で多様なナノ粒子への展開も可能である。これを実証するために、今年度はssDNA被覆Auナノ粒子(ssDNA-AuNP)の合成について取り組んだ。 既報を参考に、Turkevich法により合成したクエン酸被覆Auナノ粒子(平均粒径12 nm)、3'末端がジチオール修飾されたssDNA(DT-ssDNA、塩基:TTT TTT TTT TTT)、還元剤であるTris(2-carboxyethyl)phosphine(TCEP)をリン酸緩衝液中で混合し、塩化ナトリウム濃度を調整することでssDNA-AuNPを合成した。また、塩化マグネシウム添加による精製方法についても検討し、透過型電子顕微鏡(TEM)および可視-紫外分光高度計(UV-Vis)による同定を試みた。種々の検討を行った結果、ドデシル硫酸ナトリウムを混合後、添加するDT-ssDNAのモル比を最適化することで(AuNP : ssDNA = 1 : 500)、ssDNA-AuNPを再現性良く合成することに成功した。また、精製後の試料のTEM像より、ssDNAで表面修飾したことによる凝集や粒径の変化は見られなかった。加えて、試料のUV-Visスペクトルでは、クエン酸被覆AuNPに比べてssDNA-AuNPでは長波長側へピークシフトが見られた。一般に、AuNPの共鳴周波数は、粒子のキャリア濃度や媒体の誘電率によって変化することが知られており、このピークシフトは、被覆分子がssDNAに置き換わったためであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ssDNA被覆Auナノ粒子(ssDNA-AuNP)の合成手順を最適化することで再現性良くssDNA-AuNPを合成し、TEMおよびUV-Visを用いてAuNPがssDNA被覆されていることを確かめられた。また、精製法についても検討できた。このため、研究は概ね順調に進捗しているといえる。一方、ssDNAを介した金ナノ粒子表面への分子修飾については十分な検討ができなかった。この点については次年度以降、引き続き検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、「蛍光色素分子で表面修飾したAuナノ粒子の作製」を目的に、以下の2課題について重点的に取り組む。 【ssDNA-AuNPへの蛍光分子修飾】合成したssDNA-AuNPを蛍光分子(5-FAM)でssDNAを介して表面修飾する。方法としては、ssDNA-AuNP とssDNA*-5FAM(ssDNA*:ssDNAと相補的なssDNA)とを混合することでssDNAとssDNA*間で二重鎖構造を形成し、ssDNAを介した表面修飾が可能である。また、AuNPのサイズやssDNAの塩基数を変えるなどの検討も行う。 【5-FAMの発光挙動】AuNP表面の5-FAMは、AuNPからssDNAの塩基数に応じた距離d離れることになる。この際、dの大きさに応じて5-FAMの蛍光挙動が変化すると予想している。例えば、dが小さい場合(d<6 nm)、蛍光共鳴エネルギー移動によってその蛍光強度は低下する。一方、dが理論から予測される値(d~10 nm)では、金属増強効果によって蛍光強度は増加する。まずは、AuNP表面近傍に位置するFMA-5の発光挙動についての理解を深めるため、蛍光分光や発光量子収率の測定を行う。
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