研究課題/領域番号 |
23K04570
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
北川 二郎 福岡工業大学, 工学部, 教授 (90346528)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 高エントロピー合金 / 超伝導 / フォノン / ビッカース硬さ |
研究開始時の研究の概要 |
高エントロピー合金超伝導は特異性質で注目されている。しかし高エントロピー状態の超伝導への影響は明らかではない。申請者は、BCS理論に不確定性原理を新しい要素として考慮する必要があるという仮説を論文発表した。また、硬さと超伝導転移温度の相関も調べ、簡易な硬さ測定のフォノン物性測定代替可能性を見出した。本研究では仮説の検証と、硬さのフォノン物性測定代替可能性を調べることを目的とする。本研究は乱れを含んだ超伝導体設計の新指針となる。また、不確定性原理を操る新奇超伝導デバイスや硬さも兼備した多機能超伝導体へ展開できる。さらに、フォノンと関わる機能性評価を行う多くの基礎物性研究者にとって波及効果がある。
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研究実績の概要 |
高エントロピー合金は世界的に注目されている。しかし高エントロピー状態の超伝導への影響は明らかではない。申請者は、BCS理論に不確定性原理を新しい要素として考慮する必要があるという仮説を論文発表した。また、硬さと超伝導転移温度の相関も調べ、簡易な硬さ測定のフォノン物性測定代替可能性を見出した。本研究では、仮説の検証と、硬さのフォノン物性測定代替可能性を調べることを目的とする。 今年度は5元系等モル新HEAを合成した。HfTaTiVZr, NbTaTiVZr, HfNbTaVZr, HfMoTiVZr, HfMoTaTiZr, MoTaTiVZrを合成した。HfMoTiVZr以外はbccが主相であった。X線回折測定では単相とみなせるものが多かったが、FE-SEM組成分析を行うとTa-rich相とZr-rich相にわずかに相分離しており、as-castではTaとZrは分離傾向にあることがわかった。また、本研究費で購入した誘導加熱炉を用いていくつか熱処理を行ったが、単相を得るには至らなかった。また、これまで単相の5元系bcc型HEA超伝導体はHfNbTaTiZr、HfNbReTiZr、HfNbTaTiV、HfMoNbTiZrしかなかった。硬さに関しては、HfNbReTiZr, HfNbTaTiVの情報がなく、合成しVickers硬さを測定した。単相4例に関して硬さとデバイ温度に正の相関を確認でき、硬さのデバイ温度測定代替可能性を確認した。 新しいbcc型HEA超伝導体Ti-Hf-Nb-Ta-Reを発見した。この系においてもデバイ温度とVickers硬さに正の相関があることがわかった。また、超伝導転移温度と硬さに負の相関がみられ、申請者の仮説を補強する結果となった。また、共晶HEA超伝導体NbScTiZrが高い臨界電流密度を示すことを発見した。これらの成果は学術論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、5元系等モル新HEAは、R5年度は10個を目標に合成を行うことになっていた。実際は6個であったが、TaとZrを同時に用いると単相が得られないという新しい知見が得られた。この知見に基づけばR6年度以降に合成するHEAを絞りこむことができる。このことは大きな前進である。また、これまで単相の5元系bcc型HEA超伝導体はHfNbTaTiZr、HfNbReTiZr、HfNbTaTiV、HfMoNbTiZrしかなかった。Vickers硬さに関しては、HfNbReTiZr, HfNbTaTiVの情報がなく、これらも合成しVickers硬さを測定でき、デバイ温度と正の相関があることを確かめることができた。以上のように研究計画に沿って部分的な目的を達成しつつある。また、Ti-Hf-Nb-Ta-ReとNbScTiZrの結果を学術論文にまとめることができた。特に前者では申請者の仮説を支持する結果を示した。したがって、進捗はおおむね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
[1]R5年度に引き続き、5元系等モルHEA超伝導体における超伝導転移温度のデバイ温度依存性および硬さとデバイ温度の相関を調べる。試料合成は卒研生を2人に増やし12個の試料合成を行う。また、前年度に合成したHfTaTiVZr, NbTaTiVZr, HfNbTaVZr, HfMoTiVZr, HfMoTaTiZr, MoTaTiVZrの超伝導転移温度と硬さ測定を行い、超伝導転移温度と硬さの相関を調べる。 [2] 構成元素数を減らし配置エントロピーが減少すると結晶の乱れが弱くなり、フォノンエネルギーの不確定性も減少する。この場合は、通常のBCS超伝導体のように超伝導転移温度とデバイ温度は正の相関をもつと期待される。そこで、フォノンエネルギーのばらつきを人為的に抑制した研究を行うことで、仮説のより強い検証を目指す。この研究項目にも卒研生を2人割り当て、Nbを含有した3元系等モル合金を12個合成し、超伝導転移温度とデバイ温度・硬さ依存性を調べ、5元系等モルHEAの場合と違いが出てくるのか研究する。 [3]共晶HEAは従来合金や5元系HEAとは異なった超伝導状態を示している可能性がある。前年度開発したNbScTiZrの超伝導パラメータを調べたり、物質開発を通して超伝導転移温度と平均価電子数の関係を従来合金や5元系HEAのものと比較したりする。
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