研究課題/領域番号 |
23K04571
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
家形 諭 福岡工業大学, 工学部, 助教 (00585929)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | スピントロニクス / 静磁波 / 反強磁性 |
研究開始時の研究の概要 |
今後も変わることなく爆発的に増大する通信トラヒックを支え、さらに5GおよびBeyond 5G時代の「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」移動通信を実現するためにはより高い周波数を利用することが絶対に必要な条件である。この「高周波化」にあたって喫緊で解決するべき課題は現在用いられているフィルタが直面する壁、2.5 GHzを超えることである。本研究では現在実用化されているフィルタが用いている弾性波を静磁波に置き換えることにより2.5 GHzの壁を突破し、eyond 5G時代の超高速」「超低遅延」「多数同時接続」移動通信を支えるフィルタ素子を実現する。
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研究実績の概要 |
本研究ではSAWフィルタに代わる2.5 GHz超で動作する次世代通信を支える静磁波共振子を実現することを目的としている。静磁波共振子は静磁波の媒体および反射器で構成され、これまでNiFeを静磁波媒体またIrMn静磁波反射器として利用することを想定し、NiFe/IrMn多層膜をマグネトロンスパッタ法でSi基板上に磁界中成膜し、下記に示す磁気特性の評価などを行ってきた。NiFe/IrMn積層構造ではIrMnによる磁気結合により、NiFeの磁化曲線に交換バイアスが確認され、IrMn膜厚によってその大きさが変化することが確認できた。得られた交換バイアスの大きさは静磁波を反射するためには不十分であるため、今回は下地層にTaを用いることで膜の平坦性を改善し、交換バイアスの向上を目的として実験を行った。酸化膜付きSi基板上にNiFe(20 nm)/IrMn(20 nm)およびTa(20 nm)/NiFe(20 nm)/IrMn(20 nm)をマグネトロンスパッタによりそれぞれ3つ成膜し、VSMを用いてNiFeの磁化曲線を測定し、交換バイアスの大きさを比較した。交換バイアスは「Ta下地層あり」および「Ta下地層なし」でそれぞれ19 Oeおよび17 Oeであった。AFMを用いて「Ta下地層あり」および「Ta下地層なし」の表面ラフネスを比較した結果、大きな差異は認められなかった。交換バイアスを向上させる試みとして磁界中真空アニールを検討し、その製作にとりかかった。アニール炉は最大350°、最大磁界は2 kOe を想定している。現時点でアニール炉はほぼ完成しており、残る作業は温度調整機構のプログラミングのみとなっている。微細加工の準備としてプラズマミリング装置の製作にもとりかかった。プラズマミリング装置もおおよそ完成しており、RFバイアス磁界用電源の製作を残すのみとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では静磁波を用いた高周波共振子を実現することを目的としている。静磁波共振子を実現するためには静磁波反射器が必要である。静磁波反射器を実現するためIrMn交換バイアスを利用することを提案している。静磁波反射器は交換バイアスが大きければ大きいほど性能がよいため、現状交換バイアスを向上させる施策に取り組んでいる。区分としておおむね順調に進んでいるとしたのは当初予定していた材料特性評価を完了できたことを評価している。一方で評価した交換バイアスの大きさが想定していたよりも小さく、試料作製にも成膜装置の故障トラブルによる少しの遅延が発生したことから「当初の研究計画よりも進んでいる」とは評価しなかった。その他、アニール炉およびプラズマミリング装置の製作は当初よりも早いペースで進んでおり、次年度には確実に利用できる見込みとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
最終的な目標である静磁波共振子を実現するための次の目標は交換バイアスによる「静磁波の反射」を実証することである。静磁波の波長はサブミクロン程度であるため、従来の試料成膜に加えてサブミクロンサイズの微細加工が必要となる。微細加工にはパターンを形成する装置、試料をミリングする装置が必要である。パターンを形成する装置は外部機関の装置を利用させていただく算段がついており、過去に利用実績もある。ミリング装置は前述のとおり、おおよそ完成しており、高周波電源の製作を残すのみとなっている。「静磁波の反射」を実証する手法として強磁性共鳴スペクトルを測定することにより実現する。強磁性共鳴スペクトルの測定には電子スピン共鳴装置が必要であるが、所属機関にてすでに所有している。以上より今後の研究の推進方策として、試料の成膜、試料のアニール処理、微細加工および「静磁波の反射」の評価を行い、得られた結果を解析し、「静磁波の反射」を実証する。
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