研究課題/領域番号 |
23K04576
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
諸田 美砂子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (00880733)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | カルコゲナイド / 層状材料 / スピン軌道相互作用 / 逆スピンホール効果 / 相変化材料 / 強磁性共鳴 / トポロジカル絶縁体 / カルコゲナイド系 / 層状物質 / スピン流 / 薄膜表面・界面物理 |
研究開始時の研究の概要 |
トポロジカル絶縁体は強いスピン軌道相互作用に起因した高効率なスピン流生成が見込まれる。さらに、TIの表裏面に存在するディラックコーンが形成されたトポロジカル表面状態(Topological-Surface-State (TSS))の波動関数が、トポロジカル絶縁体の膜厚を変えることで混成度合の変調が可能である。そこで、トポロジカル絶縁体のこれらの性質を利用して、トポロジカル絶縁体(TI)と通常絶縁体(NI)を組み合わせた超格子[(TI)l/(NI)m]nのTI、NIの膜厚l, mと層数nの組み合わせを調整し、界面及び表裏面のTSSを制御することで、高効率なスピン流の生成法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度はスピン流生成効率を定量的に得るために電子スピン共鳴装置を用いて、スピン流と電流の変換現象である逆スピンホール効果を測定するための計測環境を構築し、目標であったカルコゲナイド系材料のSb2Te3薄膜の結晶状態と膜厚のスピン流生成効率との関係を明らかにした。具体的にはスパッタの成膜条件をSba2Te3の結晶相が層状の結晶とアモルファスになるように作り分けて、これに強磁性体CoFeBを膜厚5nmで積層させて試料を作製して逆スピンホール効果を測定した。Sb2Te3はそれぞれの結晶相で4nm~50nmまで膜厚を変化させた試料を用意した。その結果、逆スピンホール効果結晶相の違いにより膜厚依存性が異なることが明らかになった。アモルファス試料では遷移金属と同様に膜厚に対する依存性はほとんどないが、層状の結晶試料では膜厚20nmで最大となり膜厚の増加とともに逆スピンホール効果が減少した。これは層状Sb2Te3の特殊な表面状態に依存するものであると考えているが、まだそのメカニズム解明には至っていない。今後、この表面状態とスピン生成効率の相関関係を調べるために、表面状態の制御した試料の作製を試み、逆スピンホール効果を調べる。 また、本研究ではカルコゲナイド系材料の表面電子状態を担保するため、強磁性体との接合界面の材料混成や磁気近接効果が課題である。そこで、本年度はCoFeBとSb2Te3の接合界面の熱安定性を調べ、室温での材料混成はないこと、200℃では界面付近の材料混成が起こることを明らかにした。また、強磁性体をパーマロイに変えたところ、室温でもSb2Te3へのNiの拡散が起こることを明らかにした。現在、材料混成や磁気近接効果の影響を防止するため界面構造の最適化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
逆スピンホール効果の測定環境を構築し、界面構造の分析方法を確立した。この計測方法を用いて、スピン電流ー電流変換効率と結晶相の相関を得ることにも成功している。 また、カルコゲナイド系層状物質と磁性体界面の課題も明らかになってきており、測定試料の精度が向上している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は第一原理計算を用いて、カルコゲナイド系多層積層界面の材料設計を行い、その成膜条件の検討を行うことで、カルコゲナイド系多層積層における界面制御技術の確立を目指す。
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