研究課題/領域番号 |
23K04589
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
大越 康晴 東京電機大学, 理工学部, 教授 (10408643)
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研究分担者 |
村松 和明 東京電機大学, 理工学部, 教授 (90408641)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | DLC / スフェロイド形成 / 細胞凝集性 / sp2クラスタサイズ / 酸素官能基 / DLC: Diamond-like Carbon / バイオインターフェイス / 消衰係数 |
研究開始時の研究の概要 |
DLC(Diamond-like Carbon)膜のバイオインターフェース機能は,膜の骨格となるsp2/sp3構造および水素終端構造に伴う表面状態が,細胞の機能(接着性や凝集機能)に強く影響すると言えるが,その機序は未だに確立されていない.本研究では,DLCの消衰系係数に着目し,この物性値に含まれる膜構造と表面状態を解析する.そして,“膜構造(sp2クラスタサイズと水素終端構造)× 表面状態(酸素官能基形成)”の物性と細胞のスフェロイド形成との相関を明確にする.これらの結果から,DLCの膜構造に伴う表面状態によって細胞のスフェロイド形成がどのような制御を受けるのか,その物性効果を解明する.
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研究実績の概要 |
令和5年度は,①「DLCの膜構造と表面状態の測定と“膜構造×表面状態”のモデル化」②「DLCの膜構造に伴う表面機能と細胞挙動の関係と物性効果の解明」について検討した.①については,DLCの骨格構造について,ラマンスペクトルによるsp2クラスタサイズ評価,X線吸収端微細構造(NEXAFS)によるsp2/sp3構造分析,ラザフォード後方散乱分析/弾性反跳検出分析(RBS/ERDA)およびフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による水素終端構造分析を行った.また,表面状態については,X線光電子分光分析法(XPS)による酸素官能基の形成状態の分析,原子間力顕微鏡(AFM)による表面粗さ測定を行った.これらの膜構造分析および表面分析の結果を基に,分光エリプソメトリ法を用いて測定した消衰係数に含まれる“膜構造(sp2クラスタサイズと水素終端構造)と 表面状態(酸素官能基形成)”の相関性について検討した. その結果,各種DLCにおいて,消衰係数が小さいDLCはsp2クラスタイズが小さく,これらの間には直接的な関係があることを確認した。その一方で,DLC膜中の水素含有量については,水素含有量の増加によって,DLC表面に形成された酸素官能基が減少し,sp2クラスタサイズよりもDLC表面の酸素官能基の形成の方が,直接的な相関性が強いことを確認した. このような表面状態において,②の細胞挙動について検討した.細胞が接着および増殖する過程でより安定した場所を求めて移動する特性に着目し,未成膜領域に囲まれたDLCの成膜領域を複数作製し,成膜領域における細胞のスフェロイド形成を観察した.その結果,水素含有タイプのDLC表面では,水素含有量の少ないDLCと比べ,細胞凝集性を促進する傾向に加え,これらの傾向は,DLCの成膜領域と未成膜領域の面積に応じて変化することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① DLCの膜構造と表面状態の測定と、“膜構造×表面状態”のモデル化 令和5年度は,基本構造の異なるDLCの骨格構造に関する基礎データの取得を目的として,分光エリプソメトリによるDLCの分類,ラマンスペクトルによるsp2クラスタサイズ評価,X線吸収端微細構造(NEXAFS)によるsp2/sp3構造分析,ラザフォード後方散乱分析/弾性反跳検出分析(RBS/ERDA)およびフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による水素終端構造分析を実施した.また,これと並行して,表面状態については,X線光電子分光分析法(XPS)による酸素官能基の形成状態の分析,原子間力顕微鏡(AFM)による表面粗さ測定を実施した.これらの測定は,いずれも学内外にて稼働している装置を用いて行っており,当初の計画通り,令和6年度以降の評価に向けた基礎的なデータを取得している. ② DLCの膜構造に伴う表面機能と細胞挙動の関係と物性効果の解明 令和5年度は,NIH-3T3細胞を用いて,DLC表面におけるスフェロイド形成のための細胞集合体形成の評価系を構築した.DLC成膜領域のパターン形成を用いて,成膜領域と非成膜領域の面積の違いが細胞集合体形成に及ぼす影響を観察し,令和6年度以降の評価に向けた基礎的なデータを取得している.これらのデータを基に,今後は,間葉系幹細胞に関するスフェロイド形成について評価を行なう準備を整えている. ①と②を基に,令和6年度以降に向けて,DLCのバイオインターフェース機能を示す“膜構造×表面状態”モデルの妥当性を検証するための基礎データを取得している.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度以降は,継続して①「DLCの“膜構造×表面状態”を示すモデル化」と②「DLCの“膜構造×表面状態”における細胞の挙動観察」に取り組みながら,これらで取得したデータを基に,③「DLCのバイオインターフェース機能を示す“膜構造×表面状態”モデルの妥当性の証明」の検討を進める. 令和5年に引き続き,当初の計画通り,DLCの膜構造(sp2/sp3構造,水素含有量,光学定数),スフェロイドの培養技術を含む細胞実験評価系について,学内外での実験を円滑に実施可能な環境にある.
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