研究課題/領域番号 |
23K04592
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
大竹 晃浩 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 電子・光機能材料研究センター, 主幹研究員 (30267398)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 遷移金属ダイカルコゲナイド / 分子線エピタキシー |
研究開始時の研究の概要 |
新たな機能性半導体材料として注目を集めているMoS2やWSe2などの遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)のヘテロ積層構造を分子線エピタキシー(MBE)法を用いて作製する方法を開発する。本研究では、(i) アルカリ金属添加および(ii) 酸化物原料を用いたMBE成長技術を確立し、成長核の発生過程を高精度で制御することにより、従来法では得られないウエハスケールで方位の揃った低欠陥TMDCヘテロ積層構造の実現を目指す。
|
研究実績の概要 |
分子線エピタキシー(MBE)法に基づく遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)ヘテロ積層構造の作製技術の開発を目的として、(i) アルカリ金属添加および(ii) 酸化物原料を用いたMBE成長技術を確立する。TMDC成長核の発生過程を高精度で制御することにより、従来法では得られないウエハスケールで方位の揃った低欠陥TMDCヘテロ積層構造の実現を目指す。 TMDC膜のCVD成長において、Na元素を添加することによって二次元島が大型化することが知られている。本研究では、膜厚の制御性に優れたMBE法を用い、TMDC成長においてアルカリ金属を添加することによってTMDC膜の大型化を目指す。本年度は、アルカリ金属蒸着用セルおよびアルカリ金属ディスペンサー(Na、K用)を新規導入し、既存TMDC用MBE装置に設置した。添加するアルカリ金属元素としてNaを選択し、GaAs(111)B基板表面へのNaの蒸着実験を行い、X線光電子分光(XPS)によってNa原子の堆積を確認した。これと並行して、酸化物(MoO3)原料を用いたTMDC単層膜のMBE成長技術の開発にも着手した。本年度はGaAs(111)B基板上で、MoO3分子とSe分子の同時供給によるMoSe2単層膜の成長を試みた。しかしながら、MoO3の還元反応に伴うGaAs基板の酸化等により、高品質なMoSe2膜の形成には至らなかった。 TMDCのMBE成長の基板として用いられるSe終端GaAs(001)-(2x1)表面の原子配列を実験(電子回折、走査トンネル顕微鏡、XPS)および第一原理計算を用いて評価した。(2x1)表面の原子配列を決定し、Se終端による表面の安定化機構を明らかにした。また、Se終端によって大気中でAs酸化物が形成されにくくなることを確認し、表面原子配列との関連性を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TMDC薄膜のMBE成長において、アルカリ金属の供給を精度よく制御するために、アルカリ金属蒸着用セルとアルカリ金属ディスペンサーを既存MBE装置に設置した。Naを添加元素としてGaAs(111)B基板上への蒸着実験を行った。反射高速電子回折(RHEED)およびX線光電子分光法(XPS)によって、Na元素の吸着を確認し、次年度以降のTMDC薄膜への添加実験に道筋をつけた。酸化物原料を用いたTMDCのMBE成長に関しては、MoO3原料を用いたMoSe2成長を試みた。GaAs基板上への成長実験から、MoO3の還元反応の促進や基板の酸化抑止等次年度以降に解決すべき課題が抽出された。
|
今後の研究の推進方策 |
アルカリ添加TMDC成長を本格的に開始する。GaAs基板上にNa原子が付着することは明らかになっているので、これまでに実績のあるGaAs(111)B基板上およびMoSe2膜を対象として、Na吸着GaAs表面上での成長を試みる。並行してMoおよびSe分子線供給中のNa添加も試み、成長促進効果の有無を確認するとともに、供給量や供給のタイミング、成長温度等の最適条件を探り、効果的なアルカリ金属の供給法の確立を目指す。 酸化物原料を用いたTMDC成長に関しては、GaAs基板を用いた場合にGa酸化物の形成が確認されたことから、サファイアやZnOなど耐酸化性に優れた基板材料を用いた成長を試みる。
|