研究課題/領域番号 |
23K04593
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
植田 寛和 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (20705248)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | 水素分子 / 表面 |
研究開始時の研究の概要 |
水素分子はスピンと回転という内部自由度を持っており,固体表面との相互作用においてこれらの自由度が大きな役割を担う.従来,核スピン状態の変化は基板と水素分子の2体での相互作用で誘起されると解釈されてきた.しかし,近年分子間の多体相互作用の重要性が指摘されている.転換過程においてこのような多体効果はこれまで考慮されておらず詳細は未解明である.本研究では,吸着する水素の核スピン状態および吸着サイトを制御した条件下でオルト‐パラ転換を調べ,転換過程における多体効果の影響を明らかにする.
|
研究実績の概要 |
従来,固体表面での水素分子の核スピン状態の変化は基板と分子の2体での相互作用で誘起されると解釈されてきた.しかし,近年分子間の多体相互作用の重要性が指摘されている.本研究では,オルト・パラ比を制御した水素分子と表面構造の異なる基板を用いて,オルト‐パラ転換における隣接吸着水素分子の影響を理解することを目的とする. 今年度は水素の検出感度向上を目的として,実験装置の改造を進めた.具体的には主実験槽および水素検出器の再設計を行った.検出器は移動式とし,試料表面から脱離する水素の飛行距離を変えて飛行時間計測が可能となるように変更した.また,検出器の先端を孔の開いたコーン形状にし,その中に入ってきた分子のみイオン化検出することで外場の影響を抑えるように工夫をした.これにより,従来よりも精度よく脱離分子の並進エネルギーや脱離角度分布に関する情報が得られることが期待できる.また,入射水素分子の核スピン状態を知ることは本研究では重要であり,脱離分子以外にも試料表面に照射する水素分子ビームの回転状態も定量するため,試料位置において分子ビームを検出器内部でイオン化できるような検出器を設計した. また,これまで転換に伴う水素分子の回転エネルギーは金属表面の電子系のみへ散逸されると考えられてきたが,パラジウム表面でのオルト‐パラ転換確率の温度依存性の実験結果を解析し,電子系とフォノン系の両方へ回転エネルギーが移動することを明らかにした.この研究成果は,回転エネルギーの移動過程を明らかにしたものであり,The Journal of Physical Chemistry Lettersに掲載された(H. Ueta and K. Fukutani, The Journal of Physical Chemistry Letters, 14, 7591 (2023).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初計画どおりに、主に実験装置の改造のため,実験装置の組み立てや真空びきなど立ち上げ作業に時間を割いた.本改造によって表面吸着水素に関する情報がこれまでよりも得られることが期待できる.また,核スピン転換確率を決定する上でもこれらの改造は有益なものであることからおおむね順調に進展していると判断する.今後は、計画どおりに実験を進めていく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
改造した装置を用いて,当初計画していた実験を進める.また,核スピン転換において吸着させる水素分子の核スピン状態の影響を調べるため,既存のパラ水素生成装置のパラ水素ガス純度向上を目指した装置の改良を進める.
|