研究課題/領域番号 |
23K04598
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
權 晋寛 東京大学, ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構, 特任准教授 (60851920)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ヘテロエピタキシャル成長 / 分子線エピタキシー法 / シリコン基板 / III-V族半導体 / 量子ドットレーザ / 通信波長帯レーザ / 直接成長法 / 欠陥抑制メカニズム / Si(001)ジャスト基板 / 直接成長 / 欠陥抑制 |
研究開始時の研究の概要 |
Si(001)基板上でIII-V族半導体の直接成長は注目されている。申請者はGaAs層を形成することで1.3μm帯量子ドットレーザを実現した。しかし、広く使用されている1.55μm帯レーザを形成するには、InGaAs、InAlGaAsなどの3元以上のヒ素系半導体のSi(001)基板上直接成長が必要であり、その欠陥抑制メカニズムは未解明である。本研究では、InGaAs層をSi(001)基板上に成長させ、3元以上ヒ素系半導体の直接成長の欠陥抑制メカニズムを解明し、レーザデバイスでその有効性を実証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、Si(001) ジャスト基板上の直接成長において、3元以上のヒ素系半導体の直接成長における欠陥抑制メカニズムを解明することを目指す。その中でも今年度は直接成長前の基板および装置の事前準備を行い、種結晶層・逆位相領域埋め込み層・転位低減層の形成条件検討を行った。また、3・4元ヒ素系材料の結晶成長基礎条件出しを行うことで、膜質の有効性検証の指針を得ることができた。 まず、シリコン基板において、自然酸化膜除去する手法を開発し分子線エピタキシー装置内でシリコン純正表面が得られることを確認した。また、その際に必要な高温熱処理法のための装置改良を行い、高温熱処理法の最適条件を導き出した。 また、種結晶層・逆位相領域埋め込み層・転位低減層の形成条件検討を行った。その結果、種結晶層として、III属元素としては基本的なインジウム・ガリウム材料以外に、その表面拡散を抑制するためのアルミニウムの利用が有効であることがわかった。さらに、高いインジウム組成が必要となる3・4元ヒ素系材料の結晶成長において、V属元素として、四量体ヒ素ではなく、二量体ヒ素の利用が有効であることがわかった。 その上、3・4元ヒ素系材料の結晶成長基礎条件出しを InP 基板上で行い、ホモエピタキシー並みの平坦性を有するヒ素系材料層が得られ、膜質の有効性検証の指針を得ることができた。 特に、成長中の基板に対してその反りを観測することで、成長中の歪変化・結晶緩和などを観測できる手法を開発し、その有効性を確認したので、今後の研究においても有効な手法として利用できることがわかった。 これらの成果により、今後の研究において、シリコン基板上の3元以上のヒ素系半導体の直接成長おいての高品質成膜の指針が得られ、欠陥抑制メカニズムの解明に向けた一歩を踏み出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、III-V族半導体材料をシリコン基板上に直接成長させるための基礎条件を検討し、基板処理や結晶成長条件といった重要な技術を確立しました。下記の進捗状況から、今年度の研究はおおむね順調に進展している。 まず、シリコン基板の表面処理方法が確立された。シリコン表面に自然に形成される酸化膜はアモルファス状であり、その後の結晶成長に欠陥をもたらす。また、エッチング処理のみでは不純物の混入や表面平坦性の低下といった問題も有する。今研究では、エッチング処理と高温熱処理を組み合わせ、シリコンの純性表面を得る方法が確立された。これにより、III-V族半導体の直接成長に適した処理基板を今後の研究で利用できるようになった。 種結晶層、逆相領域埋め込み層、転位低減層の形成条件を調査した結果、種結晶層において、インジウムやガリウム以外に表面拡散を抑えるアルミニウムの利用が有効であることが判明した。また、3・4元のヒ素系材料の結晶成長では、四量体ヒ素よりも二量体ヒ素の方が効果的であることがわかった。 InPとGaAs基板上の3・4元ヒ素系半導体で高品質の膜質を得るための条件を調査した結果、ホモエピタキシャル成長に匹敵する平坦性を持つヒ素系材料層が得られ、膜質評価の指針が確立された。 また、成長中の基板の反りを観測することで、成長中の歪みや結晶緩和を確認する方法を開発し、その有効性を確認した。今後の研究でもこの方法が有効に活用される見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、シリコン基板上の3元以上のヒ素系半導体の直接成長において、高品質成膜の指針が得られたことを踏まえ、欠陥抑制メカニズムの解明に向けた研究を進める。 まず、シリコン基板上の3元以上のヒ素系半導体の直接成長において、種結晶層の形成段階での成長条件による膜質変化を原子間力顕微鏡や表面状態の反射高エネルギー電子回折観測(RHEED)を用いて評価する。特に、成長中のその場観察を用いて基板の反りを観察することで、シリコン純性表面上III-V属半導体の直接成長における歪変化・結晶緩和など、結晶成長および欠陥発生メカニズムを解明する。シリコン基板上での3・4元ヒ素系材料は、通常のIII-V族半導体の2次元成長では異なる、3次元成長および混合成長をするため、すべての成長膜が格子定数差による歪に反映されないと考えられ、構造および欠陥発生によるひずみ緩和メカニズムの解明に向けた研究を進める。 また、その上に形成される逆位相領域埋め込みそうについても、通常のRHEED法で確認する単結晶化以外でも、単結晶化による歪み変化やそれを利用した単結晶成長条件の導出に向け、条件探索を行う。さらに、転位低減層の形成条件についても、表面の平坦性・クロスハッチなどの表面構造の制御などをもちいて、転位低減層の形成条件をさらに検討する。 最後に、これらの研究成果をもとに、Si(001) ジャスト基板上での3元以上のヒ素系半導体の直接成長における欠陥抑制メカニズムを解明し、レーザデバイスを作製し、その有効性を実証する。
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