研究課題/領域番号 |
23K04599
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
山中 淳二 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20293441)
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研究分担者 |
有元 圭介 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30345699)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 透過電子顕微鏡 / ナノビーム電子回折 / SiGe / Ni-Al-Ti合金 / STEMモアレ |
研究開始時の研究の概要 |
構造敏感性をもつ半導体薄膜の歪分布を高空間分解能で広範囲に可視化するという学問的意義と、これを汎用装置で実現するというエンジニアリング的意義を持つ研究である。これらの目的を達成するために、A:走査透過電子顕微鏡(STEM)のモアレを活用する手法と、B:ナノビーム電子回折(NBD)の新しいデータ読み取り方法を導入した手法で、研究を進める。本研究では対象材料をSiGe/Si(110)に的を絞るが、汎用透過電子顕微鏡を利用して固体材料の微小領域の格子定数などを評価する本研究で用いる手法が完成すれば、他の半導体薄膜は勿論のこと、析出強化型合金などの他の結晶系材料にも応用可能となる。
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研究実績の概要 |
本研究は、高移動度歪Siの仮想基板として期待されるSiGe/Siを対象として、マルチスケールに歪の可視化を実現可能な新手法を開発することを目的として、開始した。ハイエンドTEMではなく汎用TEMを活用して新手法である点に意義がある。具体的には、STEMモアレと、これまでとは異なるナノビーム電子回折(NBD)の活用方法を中心として新手法開発を目指す。半導体薄膜を主題材としつつ、将来的な合金分野への応用も視野に入れて研究を開始した。2023年度には、以下の成果をあげた。 (1) Si上にMBE成長させたSiGeを対象に、NBDによる面間隔精密測定を実施した。これまでNBDでは困難とされてきた約0.02 nmの面間隔差を再現性よく評価することに成功した。特に、従前からのNBD法と異なり入射電子の収束角が結果に影響を及ばさないことを明らかにした。この成果は、国際会議Microscopy and Microanalysis 2023で発表し、電子顕微鏡分野の国際的学術雑誌Microscopy and Microanalysisの国際会議論文としても公表した。 (2) NBD回折円盤を用いたNi-Al-Ti合金中の析出物と母相の面間隔評価にとりくんだ最初の成果を、2023年9月の日本金属学会で発表した。ここでは、約0.002 nmの面間隔差評価に挑戦し、完全ではないが概ね正しい評価ができることを示した。 (3)本研究の主要手法と比較する意味で、従来法・高分解能TEM像の高速フーリエ変換の限界に関しても実験的検討を実施し、国際会議IMC20で発表した。 (4) NBDデータ取得方法を改良した成果、本手法を適用すべき別試料の探索(方位の異なるSiGe/Si)について、2024年に開催される電子顕微鏡分野の国内学会発表と国際会議発表も受理され、登壇完了を条件に国際会議論文の掲載も決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に実施予定であったNBDの実験条件の最適化は順調にすすんでおり、この結果、0.02 nmの面間隔差評価は再現性高く実現可能となり、0.002 nmの面間隔差評価にも道筋をつけることができた。また、当初は本研究完成後の応用分野と捉えていた合金への応用について、前倒しで実施して成果を上げた点は、当初の計画以上に進展している。他手法との比較についても、高分解能像の高速フーリエ変換との比較について成果をあげるなど、計画以上に進展した。 一方で、STEMモアレを用いた評価手法については、当初の2023年度計画であった定性的可視化という目標に達していない。これは、使用予定であった透過電子顕微鏡の電子銃状態が万全ではなくSTEMモアレを撮影できる状態まで整わなかったことが原因である。 以上のように、装置コンディションの問題で当初の計画と比較して遅れている要素もあるが、現状の装置コンディションで実施可能な部分については2024年度以降の計画を前倒しで実施し、総合的に判断するとおおむね順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度について: NBDの実験条件の最適化、NBDによる(空間的に断続的ではあるが)定量的な評価については、引き続き当初計画よりも前倒しで研究を進める(NBDに関する2025年度実施予定であった部分を含めて進める)。また、SiGe/Siのみならず当初予定にはなかったNi-Al-Ti合金も、2023年度に引き続き実験対象として研究を進める。STEMモアレについては、透過電子顕微鏡の電子銃の整備をすすめ、STEMモアレ撮影も可能な装置コンディションとした後、当初は2023年度実施予定であった定性的可視化の部分を2024年度に実施する。万一、十分な装置コンディションに戻らなかった場合には、他機関の装置の有償利用も検討する。 2025年度について: 当初予定通り、STEMモアレとNBDのクロスチェックにより、歪分布可視化を完成させることを目標とする。2024年度終了時点の装置状態によっては、STEMモアレに関する手法開発部分よりもNBDによる手法開発部分を重点的にすすめることも考慮する。対象材料としては、当初予定のSIGe/Siのみならず、Ni-Al-Ti合金も対象とし、より広い分野への応用が可能であることを示すことも目標とする。
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