研究課題/領域番号 |
23K04603
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀俊 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00387854)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 多接合太陽電池 / X線回折 / 逆格子マッピング / III-V族化合物半導体 / 希薄N化合物 / 原子層エピタキシー / 多接合型太陽電池 |
研究開始時の研究の概要 |
格子不整合系太陽電池において、同一ウェハ上に作製したにもかかわらず特性にばらつきが存在する。特性が悪いセルでは、面内で転位の異方性が異なる「結晶粒」と、その境界となる「粒界」が存在することがわかっている。本研究では、(a)「粒界」が発生する層の同定、(b)「粒界」発生の起源の同定、(c)電気特性に影響を与えている領域(「結晶粒」「粒界」)の同定、の3点を目的とする。 本研究により、格子不整合系太陽電池作製時の歩留まりが向上し、普及のためのコスト低減に大きく寄与する。また、他のIII-V族化合物半導体において格子整合に囚われない新しいデバイス開発にもつながるブレイクスルーとなる事が期待される。
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研究実績の概要 |
格子不整合系太陽電池において、同一ウェハ上に作製したにもかかわらず特性にばらつきが存在する。特性が悪いセルでは、面内で転位の異方性が異なる「結晶粒」と、その境界となる「粒界」が存在していることがわかっている[研究業績1]。本研究では、(a)「粒界」が発生する層の同定、(b)「粒界」発生の起源の同定、(c)電気特性に影響を与えている領域(「結晶粒」「粒界」)の同定、の3点を目的とする。 本研究では、九州シンクロトロン光研究センターのBL07に設置されたX線回折計を用いて測定を行った。同一のGaAs基板上に作製された特性の異なる3つの1 cm2角のInGaAs太陽電池に関して、面内の7x7の49箇所で004逆格子点近傍の三次元逆格子マッピング測定を行い、転位滑り面の面内分布評価を行った。太陽電池層の貫通転位低減のため、基板とInGaAs層の間にはInGaP傾斜組成バッファ層とオーバーシューティング層が挿入されている。 3つの太陽電池試料を測定したところ、これまでの宮崎大学での測定と同様に、特性が悪い試料では面内で滑り面の傾きが異なっている様子が観察された。試料内の左右で傾斜方向が異なる領域が分かれており、中央部付近には傾斜方向が混ざった領域が存在する。中央部は傾斜方向が大きい点が特徴であった。この傾斜方向の違いがバッファ層のどの領域から発生するかを明らかにするため、基板に近い点、基板とInGaAs層の中間、InGaAs層に近い点の3箇所で、バッファ層の起因の回折ピーク位置の面内分布をまとめた。この解析結果から、InGaAs層の傾斜の違いがバッファ層のごく初期から始まっている場合と、中期ごろから始まっている場合があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、格子不整合系太陽電池において、 (a)「粒界」が発生する層の同定、(b)「粒界」発生の起源の同定、(c)電気特性に影響を与えている領域(「結晶粒」「粒界」)の同定、の3点を目的としている。 当初の計画では、初年度は(a)を実現するための特性の異なる太陽電池において転位分布異方性の面内分布を測定する実験をメインで行うこととしていた。また異方性を観察した場合、その異方性が発現する層を特定する実験の初期段階として、太陽電池層と基板の間に挿入された各バッファ層からのX線回折測定を目指していた。 本年はまず宮崎大学に設置されたX線回折装置で予備実験を行った。その後、輝度の強いX線が利用可能な九州シンクロトロン光研究センターBL07のX線回折計を用いて上記の測定実験を行った。1cm角の太陽電池試料内の転位分布異方性を評価するため、X線を絞って面内の異なる箇所に照射して測定を行う。そのため回折強度も小さくなるが、シンクロトロン光を利用することで、薄いバッファー層からの回折信号が明瞭に得られた。測定結果の解析から、測定した太陽電池試料に関して異方性が発現する層の同定を行うことができた。 以上のように、本年度は概ね計画通りに研究を進めることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度:2023年度から引き続いて九州シンクロトロン光研究センターを利用し、格子不整合系太陽電池試料の転位の面内分布異方性と、異方性が発現する層の同定を行い、これらを統計的に評価するための測定試料数の確保を行う。得られた結果から異方性が発現する理由を考察する。上記で得られた知見をもとに、宮崎大学の分子線エピタキシー装置を利用して意図的に転位の異方性が発現しやすいような条件を仮定し、格子不整合エピタキシャル成長と評価を行う。また、2024年度後半から、フォトルミネッセンス法を用いて太陽電池面内の電気特性評価を行い、転位の異方性が異なる「結晶粒」とその「粒界」のどこが電気特性劣化の起源となっているかの解明を試みる。 2025年度:2023年度から引き続き、異方性の意図的な発現を目指した結晶成長と、太陽電池試料の電気的測定を継続する。さらに、異方性が発現した層の断面透過電子顕微鏡観察を行い、異方性発現のメカニズムの解明を試みる。
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