研究課題/領域番号 |
23K04609
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
東海林 篤 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40392724)
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研究分担者 |
酒井 優 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10371709)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 磁性フォトニック結晶 / 透明磁性誘電体 / トポロジカルフォトニック結晶 / 誘電率非対角成分 / 磁気光学効果 / フォトニック結晶 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、二次元磁性フォトニック結晶における『大きな磁気異常光伝搬』の発現メカニズムの解析を行い、その結果を基により大きくシフトさせる結晶構造の設計と実証を行う。磁性体の誘電率非対角成分の『実部』は光誘起分極を回転させる効果を持っており、この回転がフォトニック結晶の共鳴効果によって増大することで、大きな異常光伝搬が発現する。本研究では、結晶内の光の伝搬を詳しく解析することで、光誘起分極の回転角増大と光エネルギーの流れの関係を探り、新たな光の伝搬制御法の基盤原理として提案していく計画である。
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研究実績の概要 |
磁性フォトニック結晶を用いた光伝搬の横シフトのメカニズム解明および実証に向けた研究を進めている。 2023年度は、時間領域差分法(FDTD)法とバンド計算、取り分けスーパーセル法を用いることにより、光の伝搬を大きくシフトさせ方向転換させることのできる誘電パラメータおよび構造パラメータが存在することを見いだした。光の伝搬を大きくシフトさせることは本研究課題における大きなテーマの一つであり、本研究課題の目標を一つ達成したといえる。 本年度はさらにこのシフトのメカニズムを明らかにすべく、見いだしたパラメータ近傍に於いて誘電パラメータや構造パラメータを様々に振り、光の伝搬にどのような影響が生じるのか探索した。その結果、構造パラメータの僅かな変化は光の伝搬に大きな影響を与えないものの、ある程度大きく値を変化させると突然光の伝搬の振る舞いが変異することが明らかとなった。このときの誘電パラメータ、構造パラメータを用いてバンド計算を行ったところ、目的のエネルギー位置に於いてバンドの交差が起こっていることがわかった。このことから、本磁性フォトニック結晶においてトポロジカルなバンド構造が形成されていることが示唆された。また、光の伝搬方向が磁場で変化することは、電子の進行方向を磁場で変化することと同様のメカニズムと考えられ、このことから、この磁性フォトニック結晶でおきていることはバンドのトポロジーに関することと考えられる。 現在、チャーンナンバーの計算を進めており、誘電パラメータや構造パラメータがトポロジカルな磁性フォトニック結晶にどのような影響を与えているのかを勧めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、磁性フォトニック結晶を用いることで、光の伝搬に大きなシフトを与えるパラメータが存在することを見いだしてきた。光伝搬の大きなシフトは本研究課題の大きなテーマの一つであり、2023年度までにおける研究から、本研究課題の目標を一つ達成したといえる。取り分け、用いている誘電パラメータは実在する材料の範疇となっていることから、今後このシフトを実際に実験によって実証できる可能性が期待される。 一方で、見いだしたシフトが誘電率テンソル非対角成分の実部による影響なのか、虚部による影響なのか、或いは実部と虚部の組み合わせに依るのものなのか、が未だ明らかにできていない。その理由としては、用いているFDTDのプログラム内に於いて、磁性体のパラメータを自由に設定することが困難であり、実部と虚部どちらかを0に固定した状態でシミュレーションを行うことができないからである。 そこでさらに、バンド計算を進め、このフォトニック結晶のチャーンナンバー(トポロジカルナンバー)を求めることで、この大きなシフトのメカニズムを明らかにし、誘電率テンソル非対角成分の実部によるものか、虚部によるものかを明らかにしていく計画である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、磁性フォトニック結晶を用いることで、光の伝搬に大きなシフトを与えるパラメータが存在することを見いだしてきた。しかし何故そのパラメータに於いて大きなシフトが生じるのかは未だ明らかにできていない。そこで、現在想定されるメカニズムとしてこのフォトニック結晶がトポロジカルな状態となっている可能性に基づき、目的のバンドに於けるチャーンナンバーを計算し、トポロジカル状態に起因している可能性を探っていく。さらに、誘電パラメータとして誘電率テンソル非対角成分の実部と虚部が関わっている可能性があり、それぞれがチャーンナンバーに及ぼす影響、FDTDシミュレーションを用いて実部と虚部が光の伝搬にどのような影響を与えるのかを探っていく計画である。 一方、見いだした誘電パラメータが実在する材料の範疇であることから、さらに構造パラメータを探索することで実際に試料の作製が可能なパラメータの探索を進めていく計画である。さらに、波長可変レーザーの安定化とハイパワー化を実現することで、実際の実験に向けた準備を進めていく計画である。
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