研究課題/領域番号 |
23K04612
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中西 俊博 京都大学, 工学研究科, 講師 (30362461)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | メタマテリアル / バビネの原理 / テラヘルツ / 反射型メタ表面 |
研究開始時の研究の概要 |
電磁波の基本的な特性から導かれるバビネの原理を人工的な金属平面構造である反射型メタ表面に拡張し,偏光と波面を同時制御する高効率メタ表面を実現することを本研究の主要目的とする.本研究では,まず測定系の構築を行い,その測定系を用いて一様メタ表面及び勾配メタ表面の動作検証を行う.拡張したバビネの原理が正しければ,一様メタ表面は半波長板として機能し,勾配メタ表面は半波長板の機能を保ちながら反射角の制御も可能になる.実施に当たっては,電磁界解析及びメタ表面の設計から開始し,素子の作成及びテラヘルツ領域での検証実験を行う.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,元々透過型メタ表面設計の際に活用されてきたバビネの原理を反射型メタ表面に拡張し,偏光と波面を同時制御する高効率メタ表面を実現することである.テラヘルツ領域での検証のため,金属平面構造を誘電体内に埋込んだ反射型メタ表面を実際に設計・作成し,テラヘルツ分光により動作検証を行う.金属構造として自己補対構造とよばれる特殊な対称性をもつ構造を採用することで,透過型メタ表面では実現できない高効率な半波長板機能(偏光制御)を実現できる.さらに,構造を場所ごとに変えることで反射位相の空間的制御も行うことも可能であり,反射方向を自在に制御(波面制御)することができることも実証する. 今年度は,まず測定に必要となる反射型のテラヘルツ波時間領域分光系の構築を行った. サンプルホルダは回転ステージに設置されており,入射角と反射角の和が90度になるような任意の入射角での測定を行うことができる.そして,実験検証の前に反射型メタ表面に関して電磁界シミュレーションで動作検証及び構造の最適化を行った.電磁界計算には主にCST Studio Suiteを用いた. 設計によって得られた構造を,合成石英基板を用いて作成した. 合成石英基板の貼り合わせには光硬化接着剤を用い, 金属構造の作成にはアルミニウムのウェットエッチングを利用した. 作成したサンプルの反射係数を時間領域分光系で評価したところ, TE波とTM波の反射係数の位相差がほぼπであることが確認された.これは,提案した反射型メタ表面へのバビネの原理を裏付けるものである. また, 45度偏光を入射した際の135度偏光への変換効率を評価したところ, 80%以上の効率を実現できることが分かった. 光学接着剤を用いた簡易な反射型メタ表面でも設計によりこのような高効率の波長板機能を実現できることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では, 今年度に一様反射型メタ表面の設計及び最適化を行い, 測定に必要となる反射型のテラヘルツ波時間領域分光系の構築を行う予定であったが, 既に両者は完了し, 実際のサンプルの作成及び実験検証に成功している. ただし, 反射型テラヘルツ波時間領域分光系はファイバ結合型の光伝導アンテナではなくではなく, 自由空間光結合型の光伝導アンテナを用いて構築している. また, 勾配型の反射型メタ表面の作成及び基礎特性の評価も行なっている. 以上より, 研究は当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
勾配型の反射型メタ表面の特性評価を完了し, 反射型メタ表面による偏光及び波面の同時制御の検証を完了する. そして, 研究成果を論文にまとめ発表する予定である. また, 更なる発展形として動的に特性を変化可能な物質を反射型メタ表面に組み込んだ動的メタ表面の研究にも着手する予定である. その実験検証に伴い必要となる動的に特性を変化可能な物質の候補として二酸化バナジウムに着目し, これまで研究を行なってきたサファイア基板以外の基板上に生成した二酸化バナジウムのテラヘルツ波特性の評価を行なう予定である. そして, その特性に基づき可変メタ表面の設計を行なう予定である.
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