研究課題/領域番号 |
23K04616
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
小林 弘和 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (60622446)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ファイバーセンシング / マルチコアファイバ / 幾何学的位相 / 偏光干渉 / 多光束干渉 / ファイバセンシング / 光相関領域反射計測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではクラッド内に複数のコアを有するマルチコアファイバにおいて、異なるコアにおける相対的な偏光状態の変化を干渉測定することにより、従来のシングルモードファイ バーを用いたファイバセンシングで観測が難しかったファイバの曲げ・ねじれの向きと大きさの両方を測定することを目的とする。偏光状態が測定用ファイバに沿った複屈折変動の情報を持っており、側圧などの外乱に敏感であることに加えて、三つの偏光状態の相対的な位置関係で規定される幾何学的位相が急峻に変化することを利用して、高感度な光ファイバーセンシングを目指す。さらに光相関領域反射計測 (OCDR) を利用した分布計測についても検証する。
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研究実績の概要 |
本研究ではクラッド内に複数のコアを有するマルチコアファイバにおいて、異なるコアにおける相対的な偏光状態の変化を光波の干渉測定における位相変化として観測することにより、従来のシングルモードファイバーを用いたファイバセンシングでは観測が難しかったファイバの曲げ・ねじれの向きと大きさという二次元的な物理量を測定することを目的とする。特に三つのコアの光波を干渉させると測定結果には三種類の干渉信号が含まれており、それぞれの干渉信号から三種類の相対的な偏光状態変化による位相を求めることができる。これを合算することで得られる幾何学的位相は偏光変動に対して非線形に変化するため、測定感度の向上が見込める。 本年度は3コアの相対的な偏光変化によって生じる幾何学的位相を観測するために、通信波長帯1550nmのレーザ光を光カプラで3分割してマルチコアファイバの異なるコアに入力し、出力側で再び光カプラで合波して光検出器で強度変化を測定する実験系を構築し、原理検証実験を実施した。各コアに入射する光波の周波数を位相変調器でわずかにシフトさせることで、三つの干渉信号がそれぞれ異なる周波数のうなりとなることを利用して、出力側の光カプラの干渉信号からディジタルフィルタで干渉信号の位相を抽出し、合算することで理論値とよく一致する幾何学的位相を測定することに成功した。また、マルチコアファイバに対して指を接触させたときには幾何学的位相が変化せず、捻りを加えたときに変化することが確認された。さらに捻り角に比例して幾何学的位相が変化することも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
購入済みであった7コアのマルチコアファイバから中心のコアを含む三つのコアを選択して、それぞれのコアに入射する光波を異なる周波数(0kHz,50kHz,150kHz)のノコギリ波で位相変調することで周波数シフトさせた。これらをマルチコアファイバの出力側で合波した後に増幅器付きのフォトダイオードで干渉信号を測定した。干渉信号に対してうなりの周波数である50kHz,100kHz,150kHzを抽出するディジタルフィルタを施してそれぞれの周波数成分の位相を求めて合算することで幾何学的位相を計算し、偏光変動に対してほぼ理論式通りの非線形な変化を示すことが確認された。またマルチコアファイバに入射する偏光状態を調整することで非線形の度合いを調整することも可能であった。しかし、干渉信号は明瞭度が低く、雑音も多かったため得られた幾何学的位相にも雑音が多く今後の改善が必要である。 本手法はファイバの捩れを他の環境変化と独立に測定できることを特徴としているため、その検証も行なった。マルチコアファイバ周辺の圧力変化や温度変化は各コアに同じ位相変化や偏光変化をもたらすため幾何学的位相は変化せず、捩れはコア間に相対的な偏光変動を誘起するため幾何学的位相が変化する。実験ではマルチコアファイバを手で触れた時には幾何学的位相が変化せず、ファイバを捻った時に変化する様子を観測することに成功した。また、捻り角の大きさに比例して幾何学的位相が変化し、右回りの捩れと左回りの捩れに対して幾何学的位相が逆方向に変化することも確認できた。したがって幾何学的位相を利用した捻り計測の原理検証に成功したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず光波の位相雑音によって生じる干渉信号の雑音除去のために、レーザ光源を縦モード単一発振光源に変更し、3コアの経路長の均一化を図り、受信側でディジタルフィルタによる雑音抑制を実施する。またマルチコアファイバをねじるための機械的な機構の捻り角度の精度が粗いため、より精度の高い評価を実施するための機構を準備する必要がある。またファイバの曲げが幾何学的位相に及ぼす影響は理論的にはないはずであるが実験的な確認が必要である。さらに干渉信号の相対位相ではなく相対振幅を評価することによりファイバの曲げの大きさと方向を計測できる可能性があるため、原理検証実験を実施する。 また、光源の周波数を正弦波状に変調し、光ファイバ内のレイリー散乱やブリルアン散乱と入射光との干渉によって生じるうなりの周波数が一定となる位置(相関ピーク位置)の情報のみを取得する手法である光相関領域反射計測(OCDR)を利用して、捻りや曲げの空間分布を測定可能かどうかの理論的検討を並行して進める。実験で得られた幾何学的位相の雑音の大きさや捻りに対する測定感度から、空間分布を計測するために必要な光源の光パワーやOCDRの周波数変調の大きさや速度を導出して、実現可能性を検討する。
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