研究課題/領域番号 |
23K04624
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
富樫 格 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 主幹研究員 (60415239)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 時間分解計測 / X線自由電子レーザー / 周波数分解光ゲート法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、周波数分解光ゲート法(FROG)を応用し、X線自由電子レーザー(XFEL)パルス波形と相互作用する物質の時間変化をシングルショットで同時計測する手法を開発する。FROGは、遅延時間と周波数を変数とする2次元トレースから入力光パルスと光ゲート関数の振幅と位相を求める方法で、XFELパルス波形と、試料の時間応答関数を独立に算出できる。試料の時間応答関数は、レーザー照射による試料の光学定数変化を意味し、試料を構成する原子・電子のダイナミクスを反映したものとなる。プローブ光の空間プロファイルに光学遅延情報を書き込む空間エンコーディングを取り入れることでシングルショット計測が可能となる。
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研究実績の概要 |
本研究では、周波数分解光ゲート法(FROG)を応用し、X線自由電子レーザー(XFEL)パルス波形と相互作用する物質の時間変化をシングルショットで同時計測する手法を開発する。更に、この手法を利用し、高強度レーザー照射下におけるダイナミクスをフェムト秒~アト秒領域で計測することを目的とする。 FROGは、遅延時間と周波数を変数とする2次元トレースから入力光パルスと光ゲート関数の振幅と位相を求める方法で、XFELパルス波形と、試料の時間応答関数を独立に算出できる。この時間応答関数は、レーザー照射による光学定数変化、つまり、原子・電子のダイナミクスを反映したものとなる。XFELは、その発生原理から、スペクトル、及び、時間波形がショットご とにゆらぎを持ち、ポンプレーザーのタイミングジッターもあるため、フェムト秒~アト秒の超高速時間分解計測を実現するには、シングルシ ョット計測が必須でるため、プローブ光の空間プロファイルに光学遅延情報を書き込む”空間エンコーディング”を取り入れる。 2023~2024年度前半に、現状の40fsパルス幅ポンプレーザーを用い、空間エンコーディングによるシングルショット時間分解計測の実証試験を行う。2024~2025年度に、X線シグルショットスペクトルメータの開発・調整を行う。これを用いて、試料を透過したXFELパルスから、FROG解析に必要なスペクトログラフを取得する。 また、数fsのポンプレーザーパルスを発生させるパルス圧縮器を構築し、更なる時間分解向上を目指す。2025年度後半~2026年度に、これまで開発したコンポーネントを整備し、シングルショットFROG計測実験を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、現状の40fsパルス幅ポンプレーザーを用い、空間エンコーディングによるシングルショット時間分解計測の実証試験を行った。 計測試料として、銅薄膜を用いた。高強度レーザーパルス照射により生成されるプラズマの影響で、K吸収端 (8.9keV)における透過率が過渡的に増加し、プローブ光のX線透過強度変化を期待した。空間エンコーディングを利用した計測配置により、このX線強度変化を、空間プロファイルとして2次元検出器で計測する。XFELは、チャンネルカットモノクロメータで銅K吸収端付近に単色化し、プローブ光として用いた。シングルショットスペク トルメータを用いるため、焦点距離270mmの楕円ミラーで縦方向に集光し(横方向は非集光)、試料から焦点距離と同程度下流の検出器で、XFEL透過ビームプロファイルを取得した。 試料励起用ポンプレーザーは、XFEL同期フェムト秒光学レーザー(同期レーザー:波長800 nm、パルス幅40 fs、出力12 mJ)を使用した。空間エンコーディングを用いるため、試料は、XFELビームに対して45°程度に傾ける。ポンプレーザーは、試料におけるプラズマを生成するため、縦1 mm, 横0.1 mmに集光し、試料に対し正対、XFELビームに対しては45°の角度で照射した。 結果、実験セットアップは問題ないが、数ショットにおいて時間変化に起因する縦縞が見えたものの、優位な透過率変化を捉えることができなかった。レーザーによるプラズマ生成のため、2um厚銅薄膜を使用したが、透過率の変化が1/5程度であるため、X線強度ゆらぎに埋もれている可能性がある。また、試料にレーザー照射痕ができておらず、プラズマ生成に必要なレーザー強度に達していなかった可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度に引き続き、シングルショット時間分解計測の実証試験を継続する。銅薄膜は、プラズマ生成に高強度レーザーが必要であり、変化量が小さいため、Bi、Si、グラファイトなどの半導体、半金属薄膜試料を試みる。Bi薄膜は、XFEL時間分解計測標準資料として他の施設でも用いられており、これらの試料は、比較的弱いレーザー強度でもコヒーレントフォノンによる格子振動が研究されているため、有意な時間変化が期待できる。 また、X線シングルショットスペクトルメーター、及び、同期レーザー用パルス圧縮器の構築を行う。両者とも設計は完了しており、今年度に組み立て、調整を行い、計測実験を実施する予定である。X線シングルショットスペクトルメーターは、計測試料の変更に伴い、X線回折計との組み合わせを必要とするため、構成を変更した。 今年度の課題がクリアできれば、来年度以降は計画どおりに遂行できる予定である。
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