研究課題/領域番号 |
23K04632
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森下 和功 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (80282581)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 原子力材料 / 照射脆化 / 反応速度論解析 / 分子動力学シミュレーション / 照射相関 / 分子動力学解析 / モンテカルロ計算 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
原子炉で使われる材料の照射脆化予測の高度化に関する研究を行う。特に、予測のあいまいさの評価について深く議論し、実測と予測のずれ(あいまいさ)をどう解釈するか、そして、そのずれの評価と解釈(リスク定量化)をもとにどのような行動(判断)をすべきかの指針を明確にする必要がある。これまでの脆化予測は、脆化量の“平均的ふるまい”のみが対象とされてきたが、本研究では、あいまいさの程度についても評価(予測)の対象とする。あいまいさの要因は主に統計的なゆらぎに起因し、また、統計的ゆらぎ量は、脆化現象のマルチスケール性の議論から定量できることから、主に理論的評価をもとに本課題に取り組む。
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研究実績の概要 |
原子炉容器の寿命評価や核融合炉の材料設計を行う際、照射下材料の劣化挙動をモデル化し、寿命予測を行うための方法論を確立することは重要である。一方、寿命評価の定量化にあたりリスク概念を取り込むことは、安全指標の定量化に重要である。リスク定量化には材料挙動のゆらぎをしっかりと評価しておく必要がある。本研究では、材料の劣化予測を高度化するため、材料の照射脆化挙動の統計学を構築することを試みた。現時点で以下の結果を得ている。(1)照射下材料内の非平衡欠陥生成率の統計学を明らかにするために、分子動力学法を用いた欠陥生成シミュレーションを実施し、1条件あたり1000ケースの計算を行うことで、欠陥生成率の分布を求めることができた。(2)上記(1)については、カスケード損傷から直接欠陥集合体が形成することがあるため、そのようなカスケードクラスターの生成率についてもPKAエネルギーの関するで整理した。これらのデータは照射下材料内の非平衡欠陥生成に関する基礎となるため、しっかりと定式化することにした。これをカスケードデータベースとよび、今後の研究の土台とすることにした。(3)上記(1)のカスケードデータベース(欠陥生成率、クラスター生成率)を用い、さらに欠陥の拡散、集合化・乖離等の現象に関する反応速度論を構築し、速度式の積分を数値シミュレーションによって行うことで、照射脆化の要因となる欠陥集合体の生成率に関する分布を求めることに成功した。点欠陥形成、欠陥クラスター形成に関する変動係数を求め、PKAエネルギーの関数としてまとめた。(4)核融合炉材料開発で利用するHFIR、JOYO、KUR、単色中性子場等の照射場を想定し、それらの照射場における欠陥生成・蓄積数評価を評価した。(5)機械学習法を用いた脆化予測法について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
進捗については、当初計画以上に進展している。中性子照射場からPKAエネルギースペクトル評価、PKAエネルギーに応じた欠陥生成率評価に関する分子動力学シミュレーション、分子動力学シミュレーションから非平衡欠陥生成率・欠陥集合体生成率評価の整理(カスケードデータベース)、カスケードデータベースをもとに拡散・欠陥反応を取り込んだ反応速度論評価、反応速度論結果を機械学習の特徴量として使うことによって予測性を向上させた脆化予測モデルの開発など、この10年くらいでやってきたことがそれぞれ結びついて結果が出てきたように思う。照射脆化予測に関する理解が進んだので、これらの研究を分担して行う大学院生たちも自らの役割をしっかり把握できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは照射場の定量化から欠陥の蓄積、脆化予測に至るまで、おおまかな全体像をモデル化することができた。今後はこのモデルをより精緻化することに注力する。原子炉で問題になっているNiMnSiクラスター形成に関してもチャレンジしようと思う。
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