研究課題/領域番号 |
23K04633
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
新井 剛 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60415867)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 重力駆動流クロマトグラフィー / イミノ二酢酸キレート樹脂 / 汚染水 / 核種分離 / 複合型イミノ二酢酸キレート樹脂 / 福島第一原子力発電所 / 燃料デブリ / 核種除去 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、燃料デブリ取り出しの際に生じる汚染水からの核種の吸着除去に適用可能なSIDAR充填カラムを用いた重力駆動流クロマトグラフィーシステムの開発を行う。本研究では、塩濃縮等が懸念される燃料デブリ取り出し汚染水におけるSIDARの模擬放射性核種の吸着・溶離挙動を明らかにする。また、重力駆動流クロマトグラフィー装置を自製し、SIDAR充填カラムによる模擬核種の吸着・溶離挙動を検討するとともに、重力駆動流クロマトグラフィーシステムの最適な操作条件を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では実機への適用性も見据えた放射性核種の吸着除去法として重力駆動流クロマトグラフィーシステムの開発を実施している。本年度は、本システムに用いるための複合型イミノ二酢酸キレート樹脂(SIDAR)の合成法の改善と基礎的な吸着試験、新たなキレート吸着材の可能性の検討、重力駆動流クロマトグラフィー装置の作製準備、及び試作した重力駆動流クロマトグラフィー装置のプロトタイプによる既存の吸着材を用いた吸着・溶離試験を実施した。SIDARの合成法の改善では、多孔性SiO2担体へ被覆するスチレン・ジビニルベンゼン共重合体の最適化並びに架橋度の検討を行い、架橋度15%のスチレン・ジビニルベンゼン共重合体を20%被覆することで良好な吸着特性が得られることを確認した。また、イミノ二酢酸以外にも複数の市販のキレート吸着材を用いて模擬核種の基礎的な吸着試験を実施し、それぞれの特徴を把握した。チオール系、1級アミン系、ビスピコリルアミン系について検討を行った。チオール系キレート吸着材、1級アミン系キレート吸着材は、Pd(II)に対して高い選択性を示すことが明らかとなった。ビスピコリルアミン系キレート吸着材は、Pd(II)、Zr(IV)、Mo(VI)に対して高い選択性を有することが明らかとなった。また、重力駆動流クロマトグラフィー装置のプロトタイプを試作した。このプロトタイプの重力駆動流クロマトグラフィー装置は、市販のガラスカラムを改造し、上部から自由落下で溶液を供給し、サイフォンの原理で通液速度を保持するものである。本装置を用いて、提案者が知見を有する既存の吸着材を充填し吸着・溶離試験を実施した。その結果、操作条件を適正化することにより、ポンプ駆動のカラム装置と同等の吸着・溶離性能を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、提案書に基づいて概ね順調に進捗している。SIDARの合成方法が確立でき、その基礎的な吸着特性が明らかとなった。また、新たなキレート吸着材の可能性についても研究することができ、核種に対応した吸着材選定のためのデータベース化も進めることができた。重力駆動流クロマトグラフィー装置のプロトタイプも施策することができ、通液試験だけでなく既存の吸着材を用いた吸着・溶離試験までも試験することができた。また、重力駆動流クロマトグラフィーを適正に操作するための因子項目も明らかとなり、今後の研究の進め方も明らかとなった。これらのことからも当初の研究計画通り、順調に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、SIDARの官能基のイミノ二酢酸以外にも複数の市販のキレート吸着材を用いて模擬核種の基礎的な吸着試験を実施し、それぞれの特徴を把握した。チオール系、1級アミン系、ビスピコリルアミン系について検討を行った。チオール系キレート吸着材、1級アミン系キレート吸着材は、Pd(II)に対して高い選択性を示すことが明らかとなった。ビスピコリルアミン系キレート吸着材は、Pd(II)、Zr(IV)、Mo(VI)に対して高い選択性を有することが明らかとなった。今後、これらの試験結果を基に核種に応じた官能基の選定し、イミノ二酢酸以外の複合型キレート樹脂の合成についても検討を進める予定である。また、試作した重力駆動流クロマトグラフィー装置は、市販のガラスカラムを改造し、上部から自由落下で溶液を供給し、サイフォンの原理で通液速度を保持するものである。本装置を用いて、提案者が知見を有する既存の吸着材を充填し吸着・溶離試験を実施し、ポンプ駆動のカラム装置と同等の吸着・溶離性能を得た。本試験結果から、技術的には吸着材充填層の下部に設置するフィルターと吸着材粒径が極めて重要であることが示された。そのため、本装置に適したフィルター材質や細孔等について検討を行う。また、吸着材粒径と重力駆動流の関係の検討が必須であり、SIDARの大粒径化に向けた検討を始める。また、プロトタイプの重力駆動流クロマトグラフィー装置への溶液の供給法等を改良し、通液特性並びに連続運転性の向上を図る予定である。
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