研究課題/領域番号 |
23K04635
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
小川 達彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (20632847)
|
研究分担者 |
安部 晋一郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (00727373)
松谷 悠佑 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (20826929)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2027年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 飛跡構造解析 / イオン / 計算コード / 原子反応 / 二次電子 / 照射効果 / イオン照射 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線は原子規模のエネルギー付与(飛跡構造)により物質に損傷等の影響を与える。その対象はこれまで水(生物)に限られ、半導体など他の物質での有効性は見落とされていた。 そこで、本研究では任意の物質中における任意放射線の飛跡構造を計算できるコードを開発し、宇宙線による半導体誤動作や先進放射線治療等を放射線の基礎的挙動から予測可能にすることを目的とする。 任意物質における陽子の飛跡構造解析計算コードは既に完成したので、そのコードがHe以上の重いイオンを扱えるよう拡張するのが本研究の主な内容である。それを半導体、生体などに応用して、様々な放射線影響の機構を解明する。
|
研究実績の概要 |
本研究の前段階となる飛跡構造解析コードITSARTを改良し、イオンの輸送の場合にも二次電子二重微分断面積、イオン飛程、線量動径分布、ミクロ線量(y分布)の実験値を再現できることを確認した。特にこれらに有用だったのは、以下の3点の開発項目である。1:二次電子の角度を独自の式で分散させること。これをしないと、二次電子二重微分断面積が特定角度のピーク以外で0になってしまう。2:1keV以下の二次電子はRuddらが考案した系統式からサンプリングし、1keV以上の二次電子は単純な二体衝突の式を使用する。Ruddの式だけでは運動学的に不可能な高エネルギーまで電子が生じてしまうためである。3:3.e-7 g/cm^2以内に二回以上電離が起こらないよう制限。これは分子と分子の間の空間から二次電子が出るという不可能な現象を阻止するものだが、確率現象を独立に扱うマルコフチェーンモンテカルロを単純に使うとそのような誤りが生じる。実際、1.e-4g/cm^2程度の厚みの標的を用いるy分布の計算では、この効果が顕著にみられた。この開発・計算内容を基に、2024年度には論文化を計画している。 また今年度は応用研究として照射欠陥指標(DPA:Displacement Per Atom)をITSARTによって計算することにも成功した。通常DPAは粒子の運動エネルギーに応じた欠陥生成断面積を掛けて巨視的に導出するが、ITSARTを使えば欠陥の原子スケールにおける分布を予測できることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コードの開発は、イオンへの適用、ラザフォード散乱の考慮、励起反応の考慮、材料損傷への応用研究迄が完了した。さらに、研究の途上でオージェ電子や特性X線を計算できることも発見し、それらの機能も実装した。この計算機能は軌道電子の損失さえ起これば、その原因に関係なくオージェ電子や特性X線を計算できるモデルであるから、同時期に開発していた原子核の脱励起モデルともつなげることで、原子核の脱励起から生じるX線や電子を再現可能にするという副次的成果も得られた。上記は2024-2026年に予定した内容を殆ど仕上げ、2027年の内容も一部手掛けたことに相当する。ただし、当初2023年度に予定していた電荷交換反応断面積は、電荷状態が断面積にほとんど影響しないことが分かったので、後に回した。これらの状況を総合すると、進捗は非常に順調と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は2023年度に完成させたITSART Ver.2の論文発表を最優先目標とする。また、ITSART Ver.2の諸特性を活かした応用研究にも取り組む。例えば材料分析で用いられる諸分析法を計算シミュレーションで再現できる可能性がある。また、加速器安全分野で重要な現象を再現できる可能性があり、解析を進めている。また、後回しとした電荷交換断面積については文献調査を進め、最終年度までの実装を目指す。
|