研究課題/領域番号 |
23K04658
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
木場 隆之 北見工業大学, 工学部, 准教授 (40567236)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | マイクロキャビティ / プラズモン / モード結合 / ピーク分裂 / 有機EL / 微小共振器 / 表面プラズモン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、金属/誘電体/金属(MDM)積層構造を有機発光ダイオード(OLED)の電極として組み込み、MDM積層構造中に生じる表面プラズモンと、OLEDデバイスの金属電極間で生じるマイクロキャビティモードとの間で生じる結合を積極的に活用し、発光波長制御、さらには光取り出し効率の改善を図る。MDM積層薄膜の材料選定および条件検討により、MDM中の表面プラズモンの共鳴波長の制御方法を確立した上で、OLED陽極として組み込み、RGB発光それぞれにおける色純度の向上を実証する。また、作製したMDM-OLEDに関する外部量子効率の評価により、本手法による光取り出し効率改善の有用性・汎用性を検証する。
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研究実績の概要 |
OLEDの電極として適したMDM積層薄膜の材料選定と積層構造の膜厚等条件の最適化を行った。金属としてAgを、誘電体材料として高屈折率のZnSを選択して作製したAg/ZnS/Ag積層薄膜を作製し、実験・計算の両面から透過・反射スペクトルについて、中間層ZnSの膜厚に応じた変化をしている事を確認した。また、緑色、青色それぞれに対応したOLEDへMDM構造を組み込むことを想定した誘電体・金属膜厚の最適化を行った。光学特性評価に加え、デバイスへの実装時に重要となるシート抵抗の測定、UPS測定からOLEDのしきい電圧へ影響を与える仕事関数の推測についても行い、構造設計を定めた。 設計したMDM積層薄膜をOLEDに実装し、MDM中のプラズモン共鳴波長とOLEDデバイス中のマイクロキャビティ共振波長とのエネルギー関係を制御することで、目的であったプラズモン-マイクロキャビティ間の結合の有無・強弱を変化させながら、ELスペクトルの形状や発光色へ与える影響を調査した。両者のエネルギーが一致=共鳴する時にはELピークは分裂し、非共鳴の場合であっても弱い結合によりELピークがシフトすることが、作製したデバイスのELスペクトル測定、およびFDTDシミュレーションの両面から実証することができた。MDM中のプラズモン共鳴波長は中間層の膜厚によって連続的に制御可能であり、またマイクロキャビティモードとの結合の強弱については特に上層の金属膜厚によって制御が可能であることが分かった。緑色、青色それぞれのOLEDについて色純度が向上するMDM構造の最適設計・デバイス作製を行い、各々において結合に基づくELスペクトル変化、およびそれに伴う色純度の向上を図ることができた。これらの成果については国際学会で修士学生により発表がなされ、FDTD計算による最適設計の探索に関する投稿論文を1報公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初に予定していた初年度の研究計画内容については、ほぼ予定通り順調に進展している。緑色OLEDにおける実験・計算結果をまとめた投稿論文は現在ACS Photonicsに投稿中であり、公表への準備が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度からは、本提案におけるもう一つの目的である「光取り出し効率の改善」が、MDM-OLEDにおいて実際にどの程度起こっているのかを検証する。一つはMDM-OLEDデバイスの外部量子効率の評価で、既存の測定系ではデバイス正面からの発光輝度測定から間接的に求める手法を使用している。ただマイクロキャビティ効果により発光には指向性があると考えられ、発光の角度依存性の評価も同時に行う必要がある。一方で、マイクロキャビティモードとMDM中のプラズモンとの結合により、輻射寿命自体が影響を受けている可能性もある。これを評価するためにMDM-OLED中の有機発光材料を光励起し、時間分解PL測定を行う事によりどの程度Purcell効果による輻射寿命の変化が現れるかについても調査を行う。これらの実験結果を総合し、本提案手法により光取り出しがどの程度効率化されたかを評価する。
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