研究課題/領域番号 |
23K04663
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 聡 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20456180)
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研究分担者 |
平岡 秀一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10322538)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 分子自己集合過程 / 化学反応速度論 / 化学マスター方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、分子自己集合反応における主要反応経路、律速段階、速度論トラップの決定に大きく影響を及ぼす因子が、どのように相関し大域的な反応の帰結を決定するかを明らかにする。最終生成物が単純な形状を持つ場合でも化学反応ネットワークが複雑になり、大きさや構造も系によって異なり規則性がない分子自己集合過程に通底する一般原理を、数理モデルの構築と数値計算を通して解明する。実験研究との協同により、反応条件の変更によるエネルギーランドスケープの変調から、反応経路をどのように制御するかを詳細に検討し、目的の生成物を効率的に手に入れるための新規実験デザインを進める。
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研究実績の概要 |
自然界や生命システムでは、多数の化学反応が複雑に絡み合い反応ネットワークを形成することで、高度な機能を発現する。このような化学反応ネットワークでは、構成する素反応単独の振る舞いからは想像できない現象が発現するが、その多くは不可逆な素反応によって制御される。一方で、分子自己集合におけるように、化学反応ネットワークが可逆な素反応のみから構成される化学反応系も存在する。可逆な化学反応ネットワークの最大の特徴は、各素反応の進行方向が変化し、素反応同士が互いに強く影響を及ぼし合い、素反応間の相互作用の効果がより強く現れることである。しかしこれまで、そのような反応ネットワークにおける反応経路選択の原理は未解明であった。 この問題に対して当該年度においては、我々が開発した、実験結果を数理モデルで解析する手法であるNASAP(Numerical Analysis of Self-Assembly System)を用いて、可逆反応ネットワーク系における経路選択の原理の解明について1つの原理を明らかにした。6つの金属イオン(M)と4つの有機配位子(L)から成るM6L4切頂四面体型錯体に対して、自己集合過程を追跡した実験結果を数理モデルに基づいて解析することで、ネットワーク内のある素反応が単独に存在する場合とは全く異なる振る舞いを示し、ネットワーク構造に由来する非線形現象の発現が経路選択の鍵を握ることを明らかにした。この結果は、可逆な反応ネットワークの解析を通した、より一般的な非線形現象の起源の解明へと応用できることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学反応ネットワークに基づく数理モデルの構築と、数値シミュレーションによる反応の時間発展の追跡によって、対応する実験データに基づいて反応の詳細を解析し、また実験のみでは明らかにできない素反応間の時間的な関係を明らかにする手法を既に確立している。当該年度においては特に、可逆な反応ネットワークにおける準不可逆性と経路選択の発現に着目し、単独の素反応のみからは予想できない非線形な経路選択の振る舞いを明らかにし、反応全体の制御や実験へのフィードバックへの端緒を開いた。この成果によって得られた知見を元に、例えば反応系に共存する物質によって駆動される加速効果の詳細の解明など、分子自己集合についてさらに多くの知見を得るための応用が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、数理モデルと数値解析に基づく反応経路の解明を、当初の予定どおりに実行する。特に、基質と目的生成物が同じ自己集合系において、溶媒やアニオンなどの共存する物質の違いによって、反応の加速や生成物収率の増大が起こる場合において、いかなるメカニズムによって加速効果が引き起こされるか、素反応間の相互作用の変化にまで掘り下げた解析を実行することで、詳細を明らかにしてゆく。得られた知見を統合することで、エネルギーランドスケープの変調による反応制御や、基質の単純な混合だけでは到達不可能であった準安定種の効率的生成のための、新規実験デザインを含む、自己集合反応についての指針を確立し、物質合成に変革をもたらすことを目指す。
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