研究課題/領域番号 |
23K04667
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
柳澤 将 琉球大学, 理学部, 准教授 (10403007)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | フォノン分散 / 有機半導体結晶 / 第一原理計算 / 有機半導体 / 有限温度下での電子状態 / キャリア輸送 / 電子ーフォノン相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
有機エレクトロニクスは、有機物の安価な製造工程と材料の柔軟性を長所とした次世代エレクトロニクスの候補として注目されているが、材料となる有機半導体結晶の中の電気伝導のしくみについて、まだ統一的理解が得られていない。 本研究計画では、量子力学などの基礎原理に基づく非経験的な理論計算シミュレーションを、有限温度下の電子の性質の予測・再現に向けて適用し、有機半導体中の電気伝導のしくみの理解に貢献することを目指す。具体的には、分子間の分散力を考慮して再現された分子結晶の構造下で、格子の集団振動や、それら振動と電子との間の相互作用を評価し、有限温度下での電子に由来する物性の予測を可能にする。
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研究実績の概要 |
本年度は、ルブレン単結晶の電子ーフォノン相互作用を考慮したエネルギーバンドの理論的再現に向け、ブリルワンゾーン内の任意の波数に対するフォノン分散の再現に傾注し、結果、任意の波数でのフォノンの再現に必要な、特定の波数qに対するフォノンの計算を終了させることができた。 しかしながら、任意の波数に対するフォノン振動数の外挿を行なったところ、一部のq点での虚の振動数の算出の影響により、外挿されたフォノン振動数も虚となってしまうものが見られた。一般に、ルブレンのような分子結晶では、分子間の相対変位に由来するフォノンモードの振動数が数値的に小さく、そのことに由来する数値計算上の問題であることを本研究課題に取り組む以前から認識しており、その解決策として、外挿に使うq点の数の増加や、数値計算の繰り返し手続きにおける数値的収束性を高める試みを進めてきた。結局、現時点でその問題自体は完全に解決されていないが、安定にすべてのq点に対するフォノンの計算が終了し、数値計算の収束性に進展が見られたことは、今後の取り組みの改善につながると言える。来年度は、よりq点数を増やした計算を実行して、任意に波数へのフォノンの外挿を安定に行うことを目指す。 有機半導体の電子物性に関連し、他の実験グループとの共同研究として、フラーレン結晶の超原子分子軌道(SAMO)由来のエネルギーバンドの特定を進めており、現在、計算結果を精査して成果をまとめようとしている段階である。グラファイト表面上のペンタセン単分子膜の電子状態の知見に関する実験グループとの共同研究成果については論文がまとめられ、プレプリントサーバへの投稿が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ルブレン単結晶の電子ーフォノン相互作用を考慮したエネルギーバンドの理論的再現の前段階として、ブリルワンゾーン内の任意の波数に対するフォノン分散の再現を本年度内に達成することを計画したが、任意の波数に対するフォノン振動数の外挿を行なったところ、外挿されたフォノン振動数も虚となってしまった。 虚のフォノン振動数が現れるのは、ルブレンのような分子結晶では分子間の相対変位に由来するフォノンモードの振動数が数値的に小さく、そのことに由来する数値計算上の問題であることを本研究課題に取り組む以前から認識していた。その解決策として外挿に使うq点の数の増加や、数値計算の繰り返し手続きにおける数値的収束性を高める試みを進めたが、現段階の数値的処置では、状況の改善には不十分であることが示唆された。 当初の計画よりも遅れる結果となったが、より数値的収束を高めることは可能であり、本年度の計算の進捗をもとに、来年度の進展を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、電子ーフォノン相互作用を考慮したバンド計算に向けた取り組みとして、今年度達成できなかった任意の波数に対するフォノン分散の計算を、より計算の収束性を高めて進める。具体的には、これまでよりも多くの波数qに対してフォノン振動数を計算し、任意の波数への外挿につなげる。波数qの数を増やしていくことは、これまでの経験から数値計算の収束性を高めるのに有効であることを確認している。また、数値計算の不安定性があらわれた際の処置についても本年度の計算での経験からノウハウを得ている。現状の見通しでは、2024年内にはまとまった結果が得られると予測している。 全ブリルワンゾーン内の任意の波数に対するフォノン分散の再現が完了した際には、引き続き、電子ーフォノン相互作用を考慮したバンド計算の達成に向けて進める。それに向けた簡易なテスト計算によるノウハウを収集する取り組みも、2024年の秋から徐々に始めていく。
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