研究課題/領域番号 |
23K04682
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
浦島 周平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (30733224)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | 表面吸着水 / シリケートガラス / 振動分光法 / ガラス / 環境制御計測 |
研究開始時の研究の概要 |
空気中に置かれたガラスは湿度が増大すると割れやすくなることが知られているが、表面への水吸着がなぜ/どのように割れを促進するのかは未だ結論が出ていない。本研究では、非線形分光法によって種々の実用ガラスや任意量の金属イオンを添加したガラス材料に対して表面吸着水構造とその湿度依存性を解析する。湿度に応じて種々の吸着水構造成分がどのように増減するのかを定量化し、耐久性に直接影響を与える構造成分を特定する。さらにガラスに添加された金属イオンが吸着水の構造に与える影響を相図状に整理する。これによりガラスの耐久性に直接影響を与える吸着水構造を解明するとともに、より割れにくいガラス開発のための設計指針を得る。
|
研究実績の概要 |
本年度は、Alをドープしたシリカ(Al-doped SiO2)を対象に、湿潤大気下でその表面に吸着した水の構造解析を行った。なお、Al-doped SiO2はスパッタリングにより薄膜として準備することで、アモルファス状態を保ったまま任意濃度のAlドープを達成した。構造解析には、非接触かつ真空を必要とせずに計測が可能な、表面選択的振動分光法であるヘテロダイン検出振動和周波発生分光法を利用した。 Al濃度0, 6, 13, 25, 50, 75 atom%のAl-doped SiO2に対して、相対湿度5, 20, 50, 80%の条件で計測を行ったところ、Al濃度6-13 atom%において他のAl濃度では見られない特徴的な振動バンドが見出された。各スペクトルには多数の振動バンドが重畳しており、この特徴的な振動バンドの正確な形をつかむこと、またそれに基づく吸着水構造を提案することは困難であったが、計24のスペクトルに対して特異値分解解析を行ったところ、このバンドは3600から3000 cm-1以下の低端数領域までブロードに広がっていることが示唆された。このブロードなバンド形状は、水が単なる水素結合ではなく静電相互作用によって基板に吸着していることを示唆している。我々はこのバンドが低Al濃度でのみ現れることから、SiとAlのナノドメイン境界がSi4+→Al3+の交換によって局所的に負に帯電し、吸着水はこの負電荷周りに優先的に吸着するものと考察した。 以上の考察については他の手法により更なる検証が必要と思われる。しかし本結果は、カチオンがドープされたシリケートガラス表面における吸着水構造が、単に純物質極限(SiO2やAl2O3)におけるそれらの混合では説明できないことを明瞭に示しており、純粋なシリカだけでなく種々のシリケートガラスそのものを計測することの重要性を表す好例と考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、アモルファス状態を保ったまま任意組成のカチオンドープシリケートの製作、またそれを用いたヘテロダイン検出振動和周波発生分光測定に成功した。さらに、純粋なSiO2の振動スペクトルを頼りに、Alドープにより現れた未知のスペクトル成分形状を特異値分解によって推測する解析手順を確立した。このことは今後さらにカチオン成分数を増やしたシリケートへの応用において強みになると考えられる。 以上の理由につき、おおむね順調に進展しているものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はより実応用されたシリケートガラスに近づけるため、アルカリ金属などを含む他成分シリケートに研究を展開する。その際、もし他成分系でスペクトル解析が困難になった場合には、各カチオンのみを単独でドープした二成分系へ系を単純化し、Alの場合と同様に解析を行う。それを踏まえ、他成分系でのみ立ち現れる吸着構造の有無や、各吸着構造の多寡を解析する。 さらに、実用ガラスについても同様の計測を行うとともに、各ガラスの割れ耐性の湿度依存性と比較することで、特に割れを促進・抑制する吸着水構造を明らかにする。
|