研究課題/領域番号 |
23K04684
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
松崎 維信 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70830165)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 量子もつれ光 / サブ・ショット・ノイズ吸収分光法 / 円二色性分光法 / 過渡吸収分光法 |
研究開始時の研究の概要 |
分光法は様々な分野で用いられる強力な分析手法である。分光測定では、望みの物理量が直接得られる場合以外に、2つのスペクトルの差として得られる場合が多々ある。差スペクトル測定によりそのような追加情報の取得が可能となる一方、差スペクトルには元の2つのスペクトルに含まれるノイズが合算されて観測されてしまうため、ノイズの影響を受けやすいという弱点がある。本研究では、量子もつれ光を光源として用いることでノイズを従来法の限界であるショット・ノイズ限界以下に抑制し、超高感度で差スペクトル測定を行う技術を確立する。具体例として、円二色性分光と過渡吸収分光にこの技術を適用する。
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研究実績の概要 |
初年度である本年度は、量子もつれ光を光源とした新しい超高感度円二色性分光法の開発を行なった。光源である量子もつれ光は、深紫外連続光レーザーを非線形結晶であるΒΒΟに照射することで、自発パラメトリック下方変換により発生させた。得られたもつれた光子対を光子1つずつに分割し、片方を試料測定、もう片方を参照測定に用いることで、ショット・ノイズ限界を超える感度で吸収分光測定を行うことができるのは既報の通りである。本研究では更に、1/4波長板を用いることで試料測定に用いる光子の偏光を左円偏光あるいは右円偏光とし、各々の偏光を用いた2種類の吸収スペクトルの取得を実現した。得られた2種類の吸収スペクトルの差スペクトルを評価することで、最終的に円二色性スペクトルを取得した。 開発した手法の実証実験を行うにあたり、試料としてはトリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯イオンを用いた。これは典型的なキラル化学種であり、配位子である3つのビピリジンがどのようにルテニウムイオンに配位するかにより、Λ体とΔ体という2種類の鏡像異性体が存在する。各々の異性体に対して開発した手法を用いて円二色性分光測定を行ったところ、Λ体では正、Δ体では負の符号を持つ信号が可視光領域において観測され、本手法により円二色性スペクトルが正しく取得できることが確認された。更に、得られたスペクトルに含まれるノイズはショット・ノイズ限界を30%も下回っており、量子もつれ光を光源とすることにより従来法の限界を超えた感度で円二色性測定が可能であることが実証された。この高感度化の結果、同様の測定条件のもとでは、本研究で開発した手法を用いることにより従来法と比べて2倍高速に円二色性分光測定が行えることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、量子もつれ光を光源とする新しい超高感度円二色性分光法の開発であった。研究実績の概要に記載した通り、これは計画通りに達成することができたので、研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、量子もつれ光を光源とすることで、超高感度円二色性分光法および超高感度過渡吸収分光法という2つの新しい分光手法を実現することを目標としている。1つ目の研究テーマである超高感度円二色性分光法の開発については既に目標を達成することができたので、今後は研究の総括を行う。それと同時に、2つ目の研究テーマである超高感度過渡吸収分光法の開発にこれから着手する予定である。
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