研究課題/領域番号 |
23K04692
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
上田 顕 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (20589585)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 中性ラジカル固体 / 置換基効果 / 結晶構造 / バンド構造 / 電気伝導性 / バンド充填率 / 新奇電子相 / 分子設計 |
研究開始時の研究の概要 |
物質の電子状態・物性は、その物質の電子バンドの詰まり具合、すなわち「バンド充填率」に強く依存する。本研究では、独自の発想に基づく分子設計により、バンド充填率が 1/2 ではない初めての中性ラジカル固体を開発し、超伝導など中性ラジカル固体の新たな電子相・物性を開拓する。さらに、バンド充填率を 1/2 から変調するための分子設計指針・方法論を探索・確立し、物質探索空間の飛躍的な拡張、分子性導体・分子性固体の新領域の創出につなげる。
|
研究実績の概要 |
「純有機中性ラジカル固体のバンド充填率の変調と新奇電子相の開拓」を目指して、本年度は、申請者が最近開発に成功した、部分酸化状態を有する双性イオン型純有機中性ラジカル [(PDT-TTF-Cat)2B] の末端置換基(PDT基)を変更した類縁体の合成に取り組んだ。種々の置換基を検討した結果、環状構造を有するPDT基を鎖状構造のMT基に置き換えた中性ラジカル [(BMT-TTF-Cat)2B] の合成、単結晶化に成功し、置換基の変更が結晶構造や電子構造、電気伝導性、磁気的性質に及ぼす効果について興味深い知見を得ることができた。 特筆すべきこととして、今回合成に成功した [(BMT-TTF-Cat)2B] は、母物質 [(PDT-TTF-Cat)2B] とは大きく異なる電荷分布・酸化状態を有しており、置換基の変更によって電子状態・バンド充填率の変調が可能であることが明らかとなった。具体的には、母物質では、分子内の2個のTTF骨格が等しく+0.5価に酸化されていたのに対し、今回開発した物質では、ほぼ+1価のTTF骨格とほぼ0価(中性)のTTF骨格が存在し、すなわち分子内で電荷が大きく不均化していることが分かった。さらに分子間では、ほぼ+1価の骨格同士、ほぼ中性の骨格同士でそれぞれface-to-face型に近接しており、結晶全体では、バンド絶縁体のような電子構造を有していることが示唆された。その一方で、その電気伝導性は従来のバンド絶縁体に比べ顕著に高く、この双性イオン型純有機中性ラジカルが従来の系とは本質的に異なる構造的・電子的特性を秘めている可能性が期待される。今後、第一原理的なバンド計算を行い、バンド充填率や電子構造の詳細な調査・考察を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規物質の開発に成功し、その結晶構造解析ならびに電気抵抗、磁化率測定により、本研究の目的である「純有機中性ラジカル固体のバンド充填率の変調と新奇電子相の開拓」についての重要な知見を得ることができたから。
|
今後の研究の推進方策 |
上述したように、本年度合成に成功した新規物質について、第一原理的なバンド計算を行い、バンド充填率や電子構造について詳細に調査・考察し、実験から得られた電気伝導性、磁気的性質との相関を明らかにする。これと並行して、新たな類縁体の設計・合成も行っていく予定である。
|