研究課題/領域番号 |
23K04695
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
神崎 祐貴 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特任講師 (30464605)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 有機二次電池 / 電子スピン共鳴 / In-situ ESR / 電荷輸送 / 高速充放電 |
研究開始時の研究の概要 |
有機二次電池は,環境負荷が低く,高出力・高サイクル特性を有する次世代電池の一つであり,その充放電機構は非常に特異である.例えば,有機ラジカルポリマーを活物質に用いた場合,電解液で可塑化されたレドックスポリマー内での電解質イオンの拡散による電荷輸送モデルが報告されている.一方,この充放電機構を分子レベルで正確に調べる手法が十分では無く、これには電子スピン共鳴法(ESR)が有効である.高感度In-situ ESR測定用の電池を設計・作製し,充放電に伴う電荷輸送の過渡的応答や,電池劣化要因等を多様なESR技術により詳細に分析する新たな手法を開発し,有機電池開発に必要な重要な知見を得ていく.
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研究実績の概要 |
有機二次電池に特有の充放電機構として,非晶質の有機ラジカルポリマーを活物質に用いた場合に,電気化学測定の結果に基づいて報告されているレドックスポリマー内の電解質イオンの拡散による電荷輸送モデルを,分子レベルで詳細に調べるために各種in-situ ESR法を適用していく.非導電性のラジカルポリマーは,電極中に添加された最近接の導電性炭素を介して電子授受の後,電解液で可塑化されたポリマー内のラジカル(レドックス)席間の速やかな自己電子交換反応により,電荷を効率良くホッピング輸送し,最終的に電荷が貯蓄される.電荷輸送の駆動力は濃度勾配であり,ラジカルポリマー内に高い濃度で存在するレドックス席(席間距離1 nm以下)や,電解液,導電性炭素材料の種類・濃度等により変化する.電池の各電圧状態,任意の充放電サイクル後の状態において,電池へパルス電流印加後の電荷輸送に伴う過渡的描像をミクロに観測するとともに,マクロな視点(高い空間分解能のESR画像(電極外観変化)等)からも充放電に伴う電池容量劣化要因の特定を行うためのESR測定・解析手法を開発していく.これら新しい分析手法の確立は,有機電池の更なる性能改善や,特異な電池性能の発現メカニズムを理解するために非常に重要である.これらの開発を行う上で,測定対象としてラジカル濃度,レドックス席間距離を調整した各種TEMPOラジカルポリマーを有機合成し,電極(活物質/導電助剤/バインダー/電解液複合体)を作製・評価(電気化学測定,体積抵抗率測定等)した.また,高感度In-situ ESR測定用の電池を,誘電損失による感度低下を最小限に抑えるために,水系ESR測定用のフラットセルをモチーフに設計・試作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,有機二次電池の充放電機構を分子レベルで観測するために,(1)TEMPOラジカルポリマー(PTMA),架橋ポリマー,レドックス席に欠陥(席間距離を調整)を与えたポリマー等を有機合成し,電池電極を作製し,電気化学評価を行った.(2) 高感度In-situ ESR測定用の電池を,設計・試作した.これらはおおむね当初の計画どおりである.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の成果を基に,有機二次電池の特異な充放電機構や容量劣化の要因特定に向けて,有機二次電池の充放電過程や,パルス電流を印加した直後の状態を,各種in-situ ESR測定し,ミクロ(電荷輸送,局所環境調査等)とマクロ(外観調査等)の視点から観測していく.
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