研究課題/領域番号 |
23K04702
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石田 直哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (60712239)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | リチウムイオン電池 / 正極材料 / 結晶構造 / 劣化機構 / 結晶構造解析 / 化学酸化 |
研究開始時の研究の概要 |
イオン交換法による準安定Li(Mn,Ni,Ti)1-δO2は、優れたLIB正極材料である。欠損δによる高容量化とMnに対するNiとTiの共置換による高い電気化学特性は、更なる改質により実用化が促進される。しかし準安定由来の微結晶子により結晶構造解析が妨げられており、充放電に伴う劣化機構の解明は困難である。さらに、電極に含まれる添加剤も精密解析を妨げる一因である。本研究は、化学的Li脱挿入法を駆使して充放電過程の電極活物質の再現を試み、局所構造解析により劣化機構を明らかにすることを目的としており、劣化機構解析の新たな技術に位置付けられ、蓄電池の発展を促す基盤技術へと進展すると期待される。
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研究実績の概要 |
今年度は準安定LIB正極材料の合成条件を精査して、その電気化学特性を詳細に検討した。準安定Lix(Mn3/4Ni1/8Ti1/8)1-dO2は、市販のLIB正極材料を凌ぐ放電容量を示すが、充放電を繰り返す毎に容量および電圧が低下することが課題である。本研究はこの劣化機構を局所構造解析によって解明して、材料改質へフィードバックすることが目的である。これまで対象の正極材料の組成について十分に検討を行ってきたが、合成条件については再検討の余地があった。そこで、前駆体であるNa化合物の焼成条件から見直して、特性を改善する試みを行った。以前に類似の組成で検討した際は、500℃以上の焼成条件によって目的の前駆体とは異なる結晶構造のP2型が生成されることが明らかとなっている。しかし、Mn組成が3/4である研究対象では、500℃以上でもP2型に相転移しない可能性があるため、より高温の焼成条件を検討した。550℃から700℃の条件で焼成した結果、600℃までP2型に相転移しないことが明らかとなった。そこで、500℃、550℃、600℃で焼成したNa前駆体について、それぞれNa/Liイオン交換を実施して、目的の試料を合成した。充放電試験を実施した結果、前駆体を600℃で合成した試料で初回255 mAh/gと本系において、最も高い容量を示した。一方でサイクル劣化は大きく50サイクル後の容量は170 mAh/gと改善余地が大いにあることが判明した。高容量の起源を結晶構造解析から考察すると、前駆体の焼成温度は結晶子径の違いにのみ影響を及ぼしており、高温ほど結晶子径が大きくなり、各粒子は単結晶に近づくと考えられる。したがって、高温焼成によって粒子内のLiイオン伝導パスは最短経路に近づき、充放電容量の向上はLiイオン伝導度の違いによると考察される。劣化機構について次年度から検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は試料の合成条件を再検討して、十分な試料量を準備することに成功した。計画していたXRDとICP-AESについては予定通りに実施したが、量子ビーム施設を用いた試験については実施できなかった。本申請が採択された当初に予定していなかった弊所内の業務が新たに追加されたことで、当初予定よりも進捗が遅れている。次年度も同様の理由で当研究への取り組みが制限されてしまうことが想定されるため、目的を達成できるより効率的な実験業務へと変更していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には計画書に記載の通りに研究を推進していくが、効率的な代替手段についても検討していく。例えば、放射光X線の実験は実験室系のX線回折装置でも類似の測定が可能であり、測定条件によっては問題なく本研究の目的を達成できるため、SPring-8やJ-PARCを用いた回折実験については今年度も実施せず、必要に応じて最終年度に行う。XAFSや酸化還元滴定による価数の情報は、実験室系X線回折装置で取得した回折パターンへのリートベルト解析によって、Bond Valence Sumを計算することで代用する。必要に応じて最終年度に測定することで、効率的に業務を推進する方策である。
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