研究課題/領域番号 |
23K04704
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
山田 道夫 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00583098)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 開口フラーレン / リモート化学修飾 / 位置選択性 / ナノカーボン / 位置選択的反応 / ホスト-ゲスト化学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では,応募者が独自に開発しているフラーレンのドミノ型開口反応を足がかりに,新たに開発するテザー型反応試剤を用いてフラーレンの位置選択的多重開口反応を行なうことで二重開口フラーレンを合成する。さらに,開口部の環拡大反応を行なうことにより,従来法では合成困難な筒状ナノカーボン分子を創製する。筒状ナノカーボン分子のもつナノサイズの内部空間における小分子やイオンの内包挙動を明らかにすることで,筒状ナノカーボンのホスト-ゲスト化学を追究する。
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研究実績の概要 |
本年度は、プロパルギル炭酸エステルユニット2つを種々のテザー構造で連結した反応試剤の設計・合成を行った。設計にあたり、半経験的分子軌道法(PM6)を用いた理論計算に基づく検討を行った。計算結果を踏まえ、具体的には、テザー構造として剛直なフェニレンを含むジ炭酸エステルと、柔軟なエーテル鎖を含むジ炭酸エステルの、2種類の反応試剤の設計および合成を行い、その合成に成功した。これらのジ炭酸エステル化合物はどちらも市販されている試薬から3段階でそれぞれ合成することが可能である。得られた反応試剤に対して銀触媒とフラーレンC60を加え加熱することにより反応を行い、リモート化学修飾に基づく位置選択的な二重開口フラーレンの合成を検討した。反応にあたり、各試薬の当量比、加熱温度、加熱時間を変化させて検討し、二重開口フラーレンの合成に最適な反応条件を探索した。また、加熱反応後にエーテルの切断反応、およびエステル化反応を行うことで、二重開口フラーレンに溶解性を高めるための分枝型アルキル置換基の導入を行った。その結果、エーテル鎖を含むジ炭酸エステルを用いた反応系において、加熱温度を段階的に制御する反応条件下、エーテル切断とエステル化を経て最終的に3種類の二重開口フラーレンが選択的に得られることを見出した。さらに、分取HPLCによりこれら目的生成物の単離に成功した。ただし単離については現時点においてHPLC分析に基づく判断となっている。得られた生成物の質量分析および吸収スペクトルから得られたデータは、いずれも二重開口フラーレンの構造を支持する。現在NMR測定による詳細構造解析を進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二重開口フラーレンは、幾何学的に考えれば62種類の異性体が存在するのに対して、本研究で実施した反応では、たった3種類の異性体が生成していると考えられることから、本研究における分子設計の優位性が示されたと見なしている。現状で収率は高くないものの、吸収スペクトルやNMRスペクトルを測定することはできており、今後大量合成によって、単結晶作成やそのほかの解析・評価に充分量の二重開口フラーレンを得ることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
計算化学においては、理論計算による中間体および最終生成物の自由エネルギー評価を進める。実験化学においては、エーテル型ジ炭酸エステルを大量合成し、C60との反応に用いることで、二重開口フラーレンの大量合成を行い、2D NMR解析ならびに単結晶作成およびX線結晶構造解析を行って二重開口構造の詳細な解明に挑む。また、テザー型反応試剤については、現状の構造よりも短いテザーをもつジ炭酸エステルの設計・合成を行い、同様にC60との反応に用いてさらなる位置選択性の向上についても検討する。
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