研究課題/領域番号 |
23K04720
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
小嵜 正敏 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10295678)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 電子ドナー / 電子アクセプター / 縮合多環化合物 / 芳香族化合物 / 吸収スペクトル / 蛍光スペクトル / ヘテロ原子 |
研究開始時の研究の概要 |
独自開発した合成法を応用してドナー-アクセプター型(D─A型)縮合多環化合物を創出する。申請者は電子豊富部と電子不足部の相互作用が抑制される稀有な縮環形態を発見した。縮環形態に起因する相互作用抑制の機構を解明し独自の分子設計指針を得ることでフロンティア軌道の分布やエネルギー準位を制御し、優れた半導体特性と光学特性をもつD─A型縮合多環化合物を創出する。また、特異な分極構造をもつD─A型縮合多環化合物を創出して新奇な性質を探求する。独自の合成法と相互作用制御法を発展させるとともに積極的な材料探索によって、優れた半導体特性と光学特性を有する複合機能材料を開発する。
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研究実績の概要 |
ドナー-アクセプター相互作用抑制型化合物:カルバゾール骨格とジアザピレン骨格を有するドナー-アクセプター型縮合多環化合物を合成した。電子供与性置換基を導入することによってカルバゾール部位の電子ドナー性を向上させた。その結果、ドナー-アクセプター型化合物としての特性を向上させることに成功した。合成した縮合多環化合物の性質を評価し、ドナー-アクセプター相互作用が抑制されていることを明らかにした。また、炭素原子架橋型トリフェニルアミン骨格を電子ドナー部として有するドナー-アクセプター型縮合多環化合物を合成するため、モデル化合物を用いて合成戦略を検討し重要な知見を得た。モデル化合物の性質を吸収・蛍光スペクトル測定および電気化学的測定により明らかにした。 強ドナー-アクセプター相互作用型化合物:7位に電子供与性アミノ基類をもつ一連の2-アザピレン誘導体を合成し、吸収・蛍光スペクトルを測定して光物理特性を評価した。その結果、アミノ基上の置換基の構造に依存して、蛍光発光特性が局所励起状態からの発光、分子内電荷移動励起状態からの発光、これら二つの状態からの発光と変化することを明らかにした。また、電子供与性置換基を有する5,13-ジアザペロピレン誘導体の簡便な合成法を開発した。電子供与性置換基から離れた位置に窒素原子を導入することでドナー-アクセプター型化合物に特徴的な特性の発現を目指した。吸収・蛍光スペクトルを測定して、得られた化合物の性質を解明した。高い蛍光量子収率をもつ化合物を得ることに成功した。 双性イオン型化合物:ピリジニウム-フェノラート型双性イオン構造を有するドナー-アクセプター型縮合多環化合物の合成を検討したが、前駆体の溶解度が低く合成を完結できなかった。合成前駆体の溶解度向上が期待できる置換基をもつ分子を新しく設計した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドナー-アクセプター相互作用抑制型化合物:当初計画していたカルバゾール骨格とジアザピレン骨格を有するドナー-アクセプター型縮合多環化合物の合成と性質評価を完結することができた。電子供与性を有する置換基を導入することで、ドナー-アクセプター型化合物としての特性を向上させた。さらに、縮合多環化合物におけるドナー部位とアクセプター部位の縮合形態の違いが、化合物の特性に与える影響を評価できた。また、次年度に取り組む計画である炭素原子架橋型トリフェニルアミン骨格を電子ドナー部として有するドナー-アクセプター型縮合多環化合物の合成に対して、モデル化合物の合成によって合成経路に関する重要な知見を得ることができた。 強ドナー-アクセプター相互作用型化合物:7位に電子供与性アミノ基類をもつ一連の2-アザピレン誘導体の合成と性質評価を終了することができた。これらの化合物が興味深い光物理特性を発現することを見出し、次年度以降の研究遂行に対する重要な知見を得ることができた。また、電子供与性置換基を有する5,13-ジアザペロピレン誘導体の簡便な合成法を開発することができた。この合成法は汎用性が高く効率的であるため、さらに多くの誘導体の合成へと適用できる。そのため、次年度以降に類似化合物の合成を順調に行うことができる。 双性イオン型化合物:当初計画したピリジニウム-フェノラート型双性イオン構造を有するドナー-アクセプター型縮合多環化合物の合成には至っていない。しかし、目的化合物を得るためには前駆体の溶解度向上が重要な課題であることが明らかになった。この知見をもとに、分子設計を再検討して研究を進めることにしている。
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今後の研究の推進方策 |
ドナー-アクセプター相互作用抑制型化合物:前年度に実施したモデル化合物の合成によって得られた知見を参考として、炭素原子架橋型トリフェニルアミン骨格を電子ドナー部として有するドナー-アクセプター型縮合多環化合物を合成する。電子供与性を有する置換基を導入することによってトリフェニルアミン部位の電子ドナー性を向上させ、ドナー-アクセプター型化合物に特徴的な特性を向上させる。合成した化合物の構造をX線構造解析により明らかにする。吸収・蛍光スペクトルおよび電気化学的測定によって、ドナー-アクセプター相互作用の程度を解明する。実験結果を理論化学の手法を用いて深く考察することで、分子の電子状態を解明する。 強ドナー-アクセプター相互作用型化合物:7位に電子ドナー性アミノ基類をもつ一連の1-アザピレン誘導体を合成し、吸収・蛍光スペクトルを測定して光物理特性を評価する。前年度に研究した2-アザピレンでは、窒素原子はフロンティア軌道の節の上に位置している。これに対して、1-アザピレンの窒素原子はフロンティア軌道の係数の大きな位置にある。これらの違いが分子の光物理特性に与える影響を解明する。また、前年度開発したジアザペロピレン誘導体の簡便な合成法を応用して、ドナー-アクセプター特性の向上が期待できる誘導体を合成する。具体的には、縮合多環骨格に導入する窒素原子の数を増やして、電子アクセプター性を向上させる。X線構造解析、各種スペクトル測定を実施し、化合物の性質を解明する。理論化学の手法を用いた考察も実施する。 双性イオン型化合物:前年度に設計したピリジニウム-フェノラート型双性イオン構造を有するドナー-アクセプター型縮合多環化合物を合成する。合成した化合物の構造と性質を解明する。特に溶媒極性変化や温度変化など外部刺激に対して特性がどのように応答するか明らかにする。
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