研究課題/領域番号 |
23K04726
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
松元 深 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (50416301)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | アクティブラーニング / 静電ポテンシャル / 高屈折率材料 / 能動学習 / ガウス過程回帰 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代モバイル電子機器に向けた軽量な高屈折率ポリマー光学材料が求められている。こうした新材料を開発する手段として、計算機による理論計算と機械学習を用いた自動分子探索法が注目されている。本法では分子の化学構造式を基に、優れた物性を持つ可能性の高い分子を能動的に予測し、理論計算・学習を反復することで、未知の分子を発見する。しかし化学構造式を基にした予測の精度が低いことから、発見には膨大な時間を要する。そこで本研究では、従来の化学構造式に代わり、3次元構造と電子情報を併せ持つ静電ポテンシャルマップを用いることで予測精度を高め、従来材料の屈折率を超える分子を効率的に発見する。
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研究実績の概要 |
従来の限界を超える屈折率を示す有機材料を探索するため、本研究では分子の静電ポテンシャルマップを指標とした能動的機械学習による自動探索法の開発を行う。本年度はシミュレーションによる屈折率の計算精度の向上、静電ポテンシャルマップを用いた機械学習による屈折率の予測モデル作成を行った。屈折率は、量子化学計算による分子分極率と、分子動力学法による凝集体密度の予測値から計算した。文献から取得した48分子の分極率の実験値との偏差について、種々の計算条件により評価したところ、分極率が高い領域で過大評価される傾向があることが分かった。そのため、二次関数を用いた補正を行い、実験値と整合性の高い計算結果を得た。密度に関しては全体的に予測精度は高いものの、一部アルコール系分子などで偏差が大きい結果となった。これは実施したシミュレーションでは水素結合による寄与を考慮できていないためであり、更に予測精度を高めるためには力場の再検討が必要である。これらの最適化により、実験値に対し相関係数0.98の高精度な屈折率の計算が可能となった。 自動分子生成プログラムにより生成した分子構造に対し、簡易な屈折率計算を行い、600分子のデータを得た。この内200件を用いて機械学習を実施した。ESP-Sim(https://github.com/hesther/espsim)の計算アルゴリズムを基に、静電ポテンシャルマップの類似性を評価するカーネル関数を実装し、ガウス過程回帰による予測モデルを作成した。テストデータを用いた評価では、シミュレーションによる計算値と学習による予測値に相関が確認され、静電ポテンシャルの機械学習による物性予測が可能であることが示唆された。一方でその誤差は想定より大きく、予測精度の向上が今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分子の静電ポテンシャルマップの類似性を評価するカーネル関数を実装し、ガウス過程回帰による屈折率の予測モデル作成を達成したが、予測精度や計算速度に課題があることが分かった。このため、予測に基づく能動的分子選択法の構築にまでは至らなかった。一方で屈折率の理論計算法について詳細に検討を行い、補正による予測の精度向上に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、分子の静電ポテンシャルの類似性評価関数の実装を行い、機械学習による屈折率予測が可能であることを確認しているが、予測精度と計算効率に課題がある。予測精度の向上に関しては、類似性を比較する際の、分子の整列方法について検討することが必要である。現状での方法では、同じ二種の分子間の整列の場合でも、基準をどちらにするかによって結果が異なり、再現性のある類似性評価が行えていない可能性がある。この検討に加え、形状の類似性を評価に加えたカーネル関数を構築することも検討する。計算速度に関しては、GPUでの並列計算を想定した開発を行っているところであるが、現在外部ライブラリに依存している計算部分を行列計算に適したプログラムに再構築する必要がある。これらを本年度導入した計算機上で実装し、自動分子探索システムを構築していく予定である。
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