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RhポルフィリンによるアルケンのC-Hボリル化:β-ヒドリド/還元的脱離の選択性制御

研究課題

研究課題/領域番号 23K04731
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分33020:有機合成化学関連
研究機関東北大学

研究代表者

服部 徹太郎  東北大学, 工学研究科, 教授 (70241536)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
キーワードボリル化 / アルケンC-H官能基化 / 触媒反応 / β-ヒドリド脱離 / 還元的脱離 / ポルフィリン / ロジウム / アルケン官能基化 / シリル化 / 遷移金属錯体触媒
研究開始時の研究の概要

近年,環境負荷の低減やアトムエコノミーの観点から,芳香族化合物をハロゲン化物や有機金属化合物に変換することなく,直接C-H結合を切断して官能基化する方法が盛んに研究されている。しかし,これらの方法をアルケン類に適用すると,望むC-H官能基化に加えて,C=C結合への反応剤の付加が並発するという問題が生じる。本研究では,医薬品や電子材料などの重要な中間体であるアルケニルボロン酸の合成を例にとり,付加反応に対してC-H官能基化を選択的に進行させる方法論の開発に取り組む。具体的には,配位場の特徴と反応次数の違いから,C-H官能基化が有利となるロジウムポルフィリン錯体を触媒とする反応系を開発する。

研究実績の概要

触媒反応の素反応である還元的脱離とβ-ヒドリド脱離の制御は,C-H官能基化およびヒドロ官能基化生成物を選択的に得るために重要である。本研究では,配位場の制約と反応次数の制御に着目し,金属ポルフィリンを触媒に用いたアルケン類のC-Hボリル化などの官能基化反応を検討する。本年度は,主に以下の成果を得た。
1)アルケン類の触媒的C-Hボリル化反応の開発:テトラフェニルポルフィリン(TPPH2)を配位子とする三価のRh錯体(TPPRh(III)Cl)を触媒,ビスピナコラートジボロンをホウ素化試薬に用い,4-tert-ブチルスチレンを基質として反応条件の最適化を検討した。その結果,目的のC-Hボリル反応と共にロジウムヒドリド錯体(TPPRh(III)H)による基質の還元やヒドロホウ素化が進行した。そこで,種々の水素アクセプターを検討したところ,シクロへプタトリエンを用いることで,目的のボリル化体をE-体選択的に87%の高収率で得ることができた。基質適用性を検討したところ,電子求引基や供与基を置換したスチレン誘導体についてC-Hボリル化が進行し,シアノ基やニトロ基を置換した基質であっても70%以上の良好な収率で目的物が得られた。本成果は,β-ヒドリド脱離が優先するボリル化反応として,配位場の制約と反応次数の制御が有効なことを明確に示す結果のみならず,官能基許容性の高いボリル化反応として重要といえる。
2)化学量論量の水素アクセプターが不要な触媒的C-H官能基化反応への展開:水素アクセプター非存在下,4-tert-ブチルスチレンを基質とし,種々の無機塩基の添加を検討したところ,ヒドロホウ素化体の生成をほぼ完全に抑制(≦1%)できることを見出した.この成果は,本反応系において二分子反応で進行する還元的脱離のうち,ヒドロホウ素化反応のコントロールに成功したことを意味することから,系中で生じるTPPRh(III)Hの反応性の制御に向けた重要な成果だと考えている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では,研究計画として,テトラアリールポルフィリン(TArPH2)を配位子とする金属ポルフィリン錯体(TArPM)を用いることで,1)アルケン類の触媒的C-Hボリル化反応の開発,2)アルケン類の触媒的C-H官能基化反応への展開,3)化学量論量の水素アクセプターが不要な触媒的C-H官能基化反応への展開を挙げている。本年度の研究で,1)について,本触媒系がC-Hボリル化反応において,スチレン誘導体に対する良好な反応選択性と官能基許容性を示すことを明らかにした。スチレン以外の脂肪族ビニル化合物に対する検討を進めることで,更なる発展が期待できる。また,3)については,系中で生じるロジウムヒドリド錯体(TArPRh(III)H)による分子間の還元的脱離反応がもたらす基質の水素化やヒドロホウ素化(いずれも二分子反応)のうち,ヒドロホウ素化をほぼ完全に抑制することに成功した。一方で,2)については,1)の検討が当初の予定よりも時間を要しているため,ボリル化以外の官能基化反応については進捗が遅れている。

今後の研究の推進方策

次年度は,当初の研究計画に従い,また本年度得られた知見を基に,テトラアリールポルフィリン(TArPH2)を配位子とする金属ポルフィリン錯体(TArPM)を触媒に用いて以下の検討を行う。
1)アルケン類の触媒的C-Hボリル化反応の開発:本触媒系の有用性を評価するために,脂肪族アルケン類に対しても適用可能かについて検討する。
2)アルケン類の触媒的C-H官能基化反応への展開:1)のボリル化で得た知見を基に,シリル化やスルファニル化などの直接C-H官能基化について検討する.本検討により,ボリル化と同様に単分子反応(β-ヒドリド脱離)が高選択的に進行する官能基化だけでなく,ヒドロホウ素化のように二分子間の還元的脱離(すなわちヒドロ官能基化)が高選択的に進行する官能基化も見出される可能性が考えられる。後者の場合についても,本触媒の「配位場の制約と反応次数の制御」によってもたらされた選択的反応であることから,その要因について精査する。
3)化学量論量の水素アクセプターが不要な触媒的C-H官能基化反応への展開:本年度の検討により,基質のヒドロホウ素化をほぼ完全に抑制できたが,基質の水素化の抑制には至っていない。これは,ロジウムヒドリド錯体(TArPRh(III)H)へのアルケンの挿入反応によりアルキル錯体(TArPRh(III)R:Rは基質アルケン由来)が生じ,さらにこれがTArPRh(III)Hとの分子間の還元的脱離反応を起こすことを抑制できていないことを意味する。そこで,TArPRh(III)Hのアルケンに対する反応性を大きく変えるべく,一電子還元や光励起による中心ロジウムの価数変化(三価→二価)などを検討し,分子間の還元的脱離反応を制御する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] ロジウムポルフィリン錯体によるアルケンの触媒的C-Hボリル化:配位場の制約による分子内還元的脱離の抑制2023

    • 著者名/発表者名
      水澤雄我,小山拓武,北本雄一,田中信也,服部徹太郎
    • 学会等名
      第34回万有仙台シンポジウム-有機合成化学の役割-
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Borylation of alkenes catalyzed by rhodium(III) tetraphenylporphyrin (TPP): Controlling the competition between β-hydride elimination and reductive elimination2023

    • 著者名/発表者名
      Yuga Mizusawa, Takumu Koyama, Yuichi Kitamoto, Shinya Tanaka, Tetsutaro Hattori
    • 学会等名
      International Symposium for the 80th Anniversary of the Tohoku Branch of the Chemical Society of Japan (2023 Joint Meeting of the Tohoku Area Chemistry Societies)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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