研究課題/領域番号 |
23K04734
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
溝口 玄樹 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (90818519)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ボロン酸エステル / アート錯体 / 1,2-メタレート転位 / 炭素ー炭素結合形成 / 立体選択的合成 / 環縮小型転位 / 有機ホウ素化合物 / メタレート転位 / 立体選択的反応 / カップリング反応 |
研究開始時の研究の概要 |
有機ホウ素化合物は、その炭素-ホウ素結合が様々な結合へと立体特異的に変換できることから現代有機化学において重要な位置を占める。また、ボロン酸構造そのものが、分子認識やルイス酸性などの特異な性質を示すことから、抗がん剤ボルテゾミブなどのホウ素医薬品にも注目が集まる。本研究では、ホウ素アート錯体の特性を活かした炭素ー炭素結合形成反応を基盤とした構造多様なアルキルボロン酸誘導体の合成手法の開発を行う。本課題では、特に反応を行う際の立体選択性の制御に注目し、ホウ素上に可逆的に結合したアルコールの構造や、キラルな酸触媒を用いた手法を開発することで、キラルな有機ホウ素の合成法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、キラルな多置換ボロン酸誘導体を合理的に供給可能な戦略を提案することを目的として、ビニルボロン酸エステルアート錯体の1,2-メタレート転位反応の立体制御法の確立を中心的課題としたカップリング反応の開発を行なっている。これにより、生理活性分子や機能性分子への中間体として、またホウ素医薬品などの含ホウ素機能性分子として有用な分子群を効率的に生み出すことができると期待される。本年度は以下の課題について取り組んだ。 ・ケテンを求電子剤とするビニルボロン酸エステルとのカップリング:高い反応性を示すケテンを求電子剤とすることで、炭素ー炭素結合形成を伴いながらカップリング/メタレート転位を行いβーボリルケトンを与える多成分連結型反応について、基質の適用範囲の拡張と、重水素化ラベルを用いた反応機構解析を行った。重水素化ラベルした基質の反応から、本反応がカルボカチオンを中間体とする経路で進行するにもかかわらず、立体選択的に進行していることを明らかにした。これは、系中に含まれるリチウムイオンがケテン由来のエノラートとボロン酸エステル部位をキレートすることに由来すると推測される。 ・アルデヒドを求電子剤とするビニルボロン酸エステルとのカップリング:より反応性の低いアルデヒドを求電子剤とし、活性化剤によって反応性を向上させることでカップリングを進行させようと検討した。グリオキシラートを用いると、期待した反応が活性化剤を加えることなく進行することを見出し、その反応解析条件を決定した。現在、様々なキラル触媒や試薬を用いた立体制御について検討している。 ・環縮小型メタレート転位による炭素環の構築:まず、ジアステレオ選択的な環縮小型転位を開発することを目指し、三連続立体中心を持つインダンをシンプルな基質から合成する方法を検討し、高いジアステレオ選択性で目的のインダニルボロン酸が得られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケテンとのカップリング反応、アルデヒドとのカップリング反応、および環縮小型転位について、反応条件の最適化により実際に反応が進行し、炭素ー炭素結合を形成しながらβーボリルケトンや3-ヒドロキシボロン酸、インダニルボロン酸が良好な収率で得られることを見出した。また、第一段階として目指したジアステレオ選択的な反応については、ある程度の制御が可能であることがわかってきている。DFT計算を用いた反応機構の解析から、リチウムが立体制御に重要な役割を果たすことがわかってきており、今後触媒や添加剤によって反応制御を試みる上での方向性の一つを定めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、主に基質の構造やリチウムイオンの配位によってジアステレオ選択的な反応が可能であり、高度に置換された有機ホウ素化合物を合成できることがわかった。今後は、キラルな分子を作り出すことを目指し、ボロン酸エステル部位や基質の持つ配位性の置換基を利用した立体制御や、求電子剤を活性化するルイス酸・ブレンステッド酸・ルイス塩基といった触媒を用いた反応制御を目指す。この際、ボロン酸エステルアート錯体自体が、ルイス酸についてかなり弱いことがわかってきたため、アート錯体を許容しつつ、カルボニル基などの求電子部位を活性化できる化学種を探すのが課題である。
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