研究課題/領域番号 |
23K04736
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
石原 淳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (80250413)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 有機合成化学 / 天然物化学 / タンデム反応 / 天然物合成 / Diels-Alder反応 / ラジカル反応 |
研究開始時の研究の概要 |
複雑な構造を有する創薬リード天然物の場合、顕著な生物活性があっても、化学合成に多くの工程数を要し、その量的供給や構造類縁体の合成が困難で、創薬研究が容易に進められないことも多い。本申請研究では、多くの官能基や環状構造を有し、全合成が未達成の天然物の合成を研究する。その高効率的な合成法を確立するために、ラジカル反応やDiels-Alder 反応等を基軸とする種々の革新的タンデム反応の開発を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、感染症治療薬の創薬リードとして有望視されるものの、構造が複雑で全合成が未達成の多官能基化天然物の革新的合成法を見出し、創薬研究への展開の合成基盤を築くことを目的とする。この目的のため、以下の3つの点に焦点を当て、研究を開始した。 ① タンデム分子内Diels-Alder(IMDA)反応に基づく感染症治療薬の候補天然物ピロインドマイシンAの合成;ピロインドマイシンA は薬剤耐性菌MRSAやVREFに対して強力な抗菌活性を有し、感染症治療薬のリード化合物として期待されている中分子天然物である。本天然物の5環性部位をタンデムIMDAにより一挙に構築する合成経路を立案した。本年度はタンデムIMDAを行うべく、その基質合成と1つ目のIMDA反応の精査を行った。その結果、望むデカリン化合物を高立体選択的に得ることに成功した。 ② タンデムラジカル反応による熱帯症治療薬候補の天然物グラジオビアノールの合成;グラジオビアノールは顧みられない熱帯病リーシュマニア症に対する効果が期待されるコーディアクロム類天然物である。本天然物の4環性骨格をタンデムラジカル反応により一挙に構築する経路を立案した。本年度は、1,5-水素移動、2回の環化反応を経てタンデムラジカル反応が進行することを期待し、基質の合成とタンデム反応の検討を行った。その結果、1,5-水素移動と1回目の環化反応が起きた生成物を得ることに成功した。 ③ 対称性基質のタンデム環化反応による多置換テトラピラン環の高効率的構築の開発;生物活性天然物によく見られるテトラピラン(THP)環セグメントを簡便に構築することができれば、生物活性天然物ネオペルトリド、クラボソリドD、レウカスカンドロリドなど多くの創薬リード化合物の合成に展開可能である。そこで、入手容易な化合物のタンデム環化反応の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由から、概ね順調に進展していると言える。 ① ピロインドマイシンAの合成;タンデムIMDAの前駆体となる基質の合成方法を確立することができた。また、1つ目のIMDA反応ので望むデカリン化合物を立体選択的に得ることに成功した。さらに、この遷移状態に関してDFT計算を行い、解析を行った結果、本研究の遂行上、重要となる知見を得た点で、大きな成果である。 ② グラジオビアノールの合成;タンデムラジカル反応の前駆体となる基質の合成方法を確立することができた。また、タンデムラジカル反応の検討を行い、環化生成物が得られることを見出した。立体選択性や収率に関しては、まだ検討の余地が残されているが、コーディアクロム類天然物を合成経路を見出した点で、大きな成果である。 ③ 多置換テトラヒドロピラン環の高効率的構築の開発;対称性トリオール化合物に対し、Krische アリル化、パラジウム触媒環化反応を検討した。当初、計画したテトラヒドロピラン環の構築には至っていないが、興味深い6員環化合物が生成した。本生成物は5位のヒドロキシ基が1位のアルデヒドと分子内アセタール化するために生成することを見出した。 いずれの研究も、本研究の遂行上、重要となる知見を得た点で、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、それぞれの研究の完成を目指し、以下の推進を行う。 ① ピロインドマイシンAの合成;課題は、IMDAの基質の合成法の確立と2つ目のIMDAの立体選択性である。今年度得られた知見に基づき、タンデムIMDA反応の基質合成を完成し、実際のタンデムIMDA 反応を行う。合わせて、IMDA 1と2の両遷移状態をDFT計算にて解析する。この結果に基づき、ピロインドマイシンの5環性部位を一挙に構築することを目指す。 ② グラジオビアノールの合成;タンデムラジカル反応によるグラジオビアノール骨格の構築を行う。目下の課題は、最終段階である4つ目の環状骨格の形成である。この炭素-炭素結合の形成において、軸不斉が生じる可能性がある。種々の反応条件を精査するとともに、DFT計算にて解析する。 ③ 多置換テトラピラン環の高効率的構築の開発;今年度、見出した分子内アセタール副生成物は1,5-ジオールを基質とするために生じたと考えられる。そこで、1,5-ジアルデヒドを基質とすれば、望む化合物が得られると予想される。基質の精査を中心に検討を行う。
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